ビジネス書から語学本まで
アジア本NOW
ビジネスパーソンにおすすめのアジア関連書籍を、新刊を中心に紹介する新コーナー。NNA編集スタッフが選んだ今号の本は、『安いニッポン 「価格」が示す停滞』(中藤玲著、日経BP)。
日本 経済
安いニッポン 「価格」が示す停滞
中藤玲 著
向き合うべき“モノも人材も安い国”の現実
日本で100円均一のダイソーは、タイでは60バーツ(約210円)。ディズニーランドの1日チケット(大人)は日本が最高8,700円に対し、上海は599元(約1万220円)――。
長期のデフレにより、気付けば先進国はむろん、一部の新興国と比べても“安い国”になってしまった日本。約30年間、賃金も伸び悩み、それら負のループが生むさまざまな弊害と、その解決策を探った新書。
著者は1987年生まれの中堅記者。日本経済新聞で2019年12月に掲載された同名の連載企画をベースに新たな取材を重ね、新型コロナウイルス感染症による影響などを大幅加筆。物価、給与、地価など、さまざまな“安いニッポン”に迫る。
印象的だったのが「『買われる』ニッポン」と題した章。中国や台湾の企業が、高い技術を持ちながらも経営不振にあえぐ日本の中小企業を買収し、成長につなげている実情を取り上げる。住民の約3割が中国人であることから“チャイナ団地”と呼ばれる埼玉県川口市の団地に住む中国人男性の、「日本企業はグローバルでの存在感が落ちている。子どもは中国で働いて稼いでほしい」という声が端的に現状を表している。
ちょっとした優越感を忍ばせた“高いニッポン、安いアジア”の感覚は、完全に時代遅れであると痛感。本書を通じて、日本という国の現在の立ち位置を再認識できるはずだ。
『安いニッポン 「価格」が示す停滞』(日経プレミアシリーズ)
- 中藤玲 著 日経BP
- 2021年3月8日発行 税込み935円
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※書籍の紹介文は各出版社の宣伝文から引用(原文ママ)。価格は全て消費税込み
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