ビジネス書から語学本まで
アジア本NOW
ビジネスパーソンにおすすめのアジア関連書籍を、新刊を中心に紹介する新コーナー。NNA編集スタッフが選んだ今号の本は『チャイナ・アセアンの衝撃 日本人だけが知らない巨大経済圏の真実』(邉見伸弘著、日経BP)と、『黒魔術がひそむ国 ミャンマー政治の舞台裏』(春日孝之著、河出書房新社)。
中国 東南アジア 経済
チャイナ・アセアンの衝撃
日本人だけが知らない巨大経済圏の真実
邉見伸弘 著
アジアで働く人が直視すべき現実を説く
新型コロナウイルスをいち早く抑え込み、経済の回復傾向が続く中国。日本がいまだに感染拡大による経済低迷にあえぐ中、中国が着々と結び付きを強めているのが東南アジア諸国連合(ASEAN)との経済関係だ。著者はこれを「チャイナ・アセアン経済圏」と呼び、この動向について“知らないことを知らない”日本の企業関係者を危惧。来るべきポストコロナ時代に向けて、直視すべき現実が書かれたのが本書だ。
著者は国際協力銀行(JBIC)出身で、現在はデロイトトーマツコンサルティングでチーフステラジストを務める邉見伸弘氏。7章に分けてチャイナ・アセアン経済圏が誕生した背景や、国単位ではなく「都市群」の視点で捉えることの重要性、華僑企業の戦略などを解説。チャイナ・アセアン経済圏の現状を最も表しているという越境EC(電子商取引)については、ライブ配信型インターネット通販「ライブコマース」の最先端のリアルな現場を伝える。また、鋭いデータ分析や豊富な事例の紹介のみならず、情報収集のコツなど具体的なアプローチ方法も要所に書かれており、実践したくなること必至だ。
チャイナ・アセアン経済圏を正しく知るために、新興国イコール遅れた国という固定観念や、“ASEANは日本の友好地域”といった楽観的な思い込みは捨てなければならないと説く著者。理路整然とした文体ながら、アジアで働くビジネスパーソンに熱く“活”を入れてくれる一冊だ。
『チャイナ・アセアンの衝撃 日本人だけが知らない巨大経済圏の真実』
- 邉見伸弘 著 日経BP
- 2021年2月22日発行 税込み2,640円
黒魔術がひそむ国 ミャンマー政治の舞台裏
春日孝之 著
政治とスピリチュアル世界の関係性に迫る
東南アジアに在住経験がある人なら、精霊や幽霊、呪術といった超自然現象が現地の人々の間でごく当たり前に信じられている光景を目にしたことがあるだろう。日本では“オカルト”の一言で一蹴されてしまうそれらも、さもありなんと思わせてくれるのが東南アジアの奥深さ。本書は、占星術や呪術を政治の世界にまで取り入れているミャンマーの深淵(しんえん)に迫ったノンフィクションだ。
著者はヤンゴン支局長としてミャンマーに駐在した経験を持つ毎日新聞社の元記者。2011年の民政移管後、初の大統領となったテイン・セイン氏の生年月日が国家機密であった理由が“黒魔術を避けるため”という逸話に驚愕(きょうがく)し、真偽を確かめるべく取材に奔走する。
この他にも、アウン・サン・スー・チー氏と占星術師との関係や、占星術が関与したネピドー遷都の裏側、02年のクーデター未遂事件に使われたとされる「呪いの人形」の真相を丹念な取材であぶり出す。ミステリー小説さながらのスリリングな展開の連続で、ミャンマーの現代政治とスピリチュアル世界の不思議な関係性に自然と引き込まれていく。
本書は今年2月の軍事クーデター発生前に発行されたものだが、読めば今のミャンマーの混沌ぶりがグッとリアルに迫るはずだ。
『黒魔術がひそむ国 ミャンマー政治の舞台裏』
- 春日孝之 著 河出書房新社
- 2020年10月30日発行 税込み2,200円
その他のBOOK LIST
※書籍の紹介文は各出版社の宣伝文から引用(原文ママ)。価格は全て消費税込み
東アジア 地政学
『日本人が知るべき東アジアの地政学 』
(PHP文庫)
香港 法律
『香港 国家安全維持法のインパクト
一国二制度における自由・民主主義・経済活動はどう変わるか』
東南アジア インド 法律
『最新 東南アジア・インドの労働法務』
食文化 イスラム教
『おいしいダイバーシティ
美食ニッポンを開国せよ』
※著者のコラム「食とインバウンド」をNNAで連載中
中国 ノンフィクション
『私たちはこうしてゼロから挑戦した
在日中国人14の成功物語』
中国 語学参考書