【NNAコラム】各国記者がつづるアジアの“今”
テイクオフ ─食いしん坊編─
麺類などアジア料理の旨さは格別だ(写真は中国の刀削麺)
台湾
上名古屋名物「台湾ラーメン」の元祖「味仙」の台湾ラーメンが、豚のそぼろ肉やエビがトッピングされた台湾を代表する麺料理「担仔麺」をアレンジしたものだと遅まきながら知った。味仙の台湾ラーメンは、唐辛子を効かせた肉そぼろが売りだが、担仔麺は唐辛子を使用しないため別物だと感じる。
台湾に来て、塩分控えめの味付けには慣れたが辛い料理が少ないのには未だ慣れない。先に訪れた麻辣火鍋チェーンも台湾では辛さが抑え気味。台湾人が「辛い!」と言いながら食べる台湾の有名タイ料理店でさえ本場と比較したらどうだろう。「日本人って辛いもの食べるんだっけ」。目を丸くしてこう聞かれることも多い。
名古屋の台湾ラーメンを逆輸入してくれないだろうか。もしくは日本みたいに激辛ブームが来たら個人的にはありがたい。帰国までしばらくはマイ唐辛子の持参が続く。(晶)
マレーシア
当地に来てから仲良くしていた友人が帰国する。お別れ会に参加すると、話題に上がったのは「一番おいしかったご飯は何か」だった。
マレー料理に限らず、イタリアンや中華、インド料理のレストランも非常に多いマレーシア。お別れ会でも、みんなで食べたのはマレーシア中華のサンハーミー(エビあんかけ麺)だった。思えば友人とご飯に行く時、日本食のお店を選んだことは一度もない。帰国する友人は何が一番おいしかったかは「決められない」とした上で、「日本に帰ると、食べられなくなるものがたくさんある」と残念がっていた。
確かに職場の周辺にあるフードトラックの食べ物は、名前も分からないがおいしいものばかり。コロナ禍で日本に帰国できない今、日本食が恋しくなるのも事実だが、国内旅行すら自由にできない状況下だからこそ、身近にある食べ物でマレーシアを楽しみたい。(望)
韓国
センテタン。生のスケソウダラを使ったピリ辛鍋は、韓国の厳しい冬にぴったりの一品。その冬の味覚が、春のこの時期にブームとなっている。
きっかけはソウル市長選。選挙期間中に候補者間でネガティブキャンペーンが繰り広げられる中、再出馬した呉世勲氏がソウル市長時代に、妻の土地を宅地開発地区に含めるため事業に介入していた疑いが浮上した。その地域にあるセンテタン専門店の店主側が、当時、呉市長が店に訪れたことを証言して「センテタン」という言葉が連日報道されるようになった。
呉氏は「疑惑は事実無根」として、市長選で勝利し再任を果たす。ただ、選挙後も「センテタン」という言葉は一人歩きを続け、市内の食堂には冬の味覚を求めて客足が絶えないという。
センテタン、センテタン……。食べたくて仕方がない。選挙での本当の勝者はセンテタンか。(公)
シンガポール
さっぱりした果物を食べたいと思い、スーパーで小ぶりなスイカを1玉購入した。自宅に戻り、さっそく食べようと包丁で切ってみて仰天した。中身が真っ白だったからだ。
真相は、自身の購入時のミスだった。商品のシールを確認すると、スイカ(water melon)ではなく、トウガン(winter melon)と記載されていた。その日は疲れていたこともあり、一文字うっかり見間違えてしまったようだ。確かに形はやや細長く、大きさも小さかったが「東南アジアのスイカは、日本でよく見るものとは違うのか」くらいにしか思わなかった。
とんだ間違いで驚いたが、当地でトウガンを食べるのは、今回が初めてだった。普段あまり購入しない野菜を食べて、不足していた栄養素を補給できたと思うことにしよう。今夜は、半分残っているトウガンを煮物にする予定だ。デザート用に今度こそ、スイカを買って帰ろう。(真)
タイ
タイ人の日本食好きは現在に始まったことではない。ジェトロが2013年に行ったアンケート調査で、一番好きな外国料理を尋ねた質問では、日本食が66%を占め、2位の中華料理12.8%、3位の韓国料理6.8%に大きく水をあけていた。
そうしたホームグラウンドのような市場に満を持して回転ずし最大手「スシロー」が進出した。むしろ、これだけ日本料理店があふれるタイにこれまでスシローがなかったことが意外に思えるほどだ。タイ人の日本食びいきに加え、回転ずしが持つ独特のエンターテインメント性などを考えれば、「タイでの成功は約束されたようなもの」にも思えるが、そう簡単な話でもないのだろう。
すしはもちろん、ラーメン、カレー、すき焼きなど日本の味を提供する店がひしめくバンコク。し烈な競争の中でスシローがどんな戦略で存在感を高めていくのか注目したい。(須)