【アジア・ユニークビジネス列伝】
「世界初、隔離型の宿泊所」
「ゴルフ場やヨットで快適検疫」
それを売るのか、そんなサービスがあってもいいのか。アジアは日本では思いもよらない商品やサービスに出会う。斬新で、ニッチで、予想外。「その手があったか!」と思わずうなってしまう、現地ならではのユニークなビジネスを紹介する。
【シンガポール】
世界初、隔離型の宿泊所
入国後すぐ“ご対面”可能
報道陣に公開された客室。窓の外に見えるのはエキスポ展示会場の内部に作られた中庭部分=2月18日、シンガポール東部(NNA撮影)
世界初となる隔離型の宿泊・会議施設「コネクト@チャンギ」が2月、シンガポールで開業した。ターゲットは海外からのビジネス旅行者。国内居住者と海外からの出張者が利用する空間を完全に分離することで、新型コロナウイルスの感染リスクを低減しながら双方が対面で交流を図れるようにする。
場所はチャンギ国際空港から5分ほどの場所にある大型展示場シンガポール・エキスポの内部。開業したのは施設の一部で客室は150室、会議室は40室。年内にはフル稼働の予定で、一度に約1,300人の出張者が受け入れ可能となる。施設内にはPCR検査などを行う検査エリアが設けられ、宿泊者は定期的な新型コロナ検査が義務となっている。
出張者はコネクト@チャンギに隔離され、施設内から外に出ることはできないが、代わりに14日間の待機措置(SHN)なしでシンガポール在住者らと交流できるのが利点だ。宿泊料金は1泊384Sドル(約3万円)から。3食の食事代や空港送迎、滞在中のコロナ検査費用なども含まれる。
施設の開発を手掛けた政府系投資会社テマセク・インターナショナルのアラン・トンプソン戦略的開発部共同部門長は会見で「対面での会議が求められる契約の最終締結や法的な交渉事など、さまざまなビジネスミーティングに利用してもらうことを想定している」と期待を見せた。
8人用会議室。ガラスで完全に仕切られており、会議の際はマイクとスピーカーを利用。空調システムも出張者用と居住者用の空間で分離=2月18日、シンガポール東部(NNA撮影)
書類受け渡し窓口。消毒のため内部は紫外線が照射。扉が開いている間は、もう一方の扉は開けられない構造になっている=2月18日、シンガポール東部(NNA撮影)
【タイ】
ゴルフ場やヨットで快適検疫
観光客呼び戻しに新プラン
「ゴルフ場検疫パッケージ」を利用しプレーを楽しむ韓国人らの観光客。コース上でも2メートル間隔のソーシャルディスタンス(社会的距離)の確保が義務(タイ国政府観光庁ホームページより)
観光大国のタイで、外国人旅行客の呼び戻し計画が次々と進められている。現在、タイ入国者には政府指定のホテルで14日間の隔離が義務付けられているが(4月から10日に短縮)、閉塞感が伴う客室ではなく“解放感”を味わいながら隔離期間を過ごせるプランが登場。2月からスタートしたのは、政府指定のゴルフ場で代替隔離を受けられる「ゴルフ場検疫パッケージ」。客室での3日間の隔離後に実施されるPCR検査で陰性が確認されれば、その後コース上でのプレーが可能となる。
タイ国政府観光庁(TAT)日本事務所によると、現在指定されているゴルフ場は5カ所。代理店を通しての予約が必要で、コース使用料などを含んだ滞在費は15泊16日で1人39万円から。隔離期間中は3度のPCR検査があり、ゴルフ場施設内から外に出ることは禁じられているが、ゴルフざんまいの日々が楽しめそうだ。
TATは3月10日に南部プーケットで行う「デジタルヨット検疫」のプランも発表。隔離生活を海上の小型クルーザーやヨット上で送れるというのが特徴だ。
利用者は体調に関するデータを記録するリストバンド型のデジタル装置の常時装着が必須。ヨットは海岸から10キロ以内にいることが条件となっている。類似プランは昨年10月から開始されており、TATは今年中に300~500人程度の利用者を見込んでいる。