NNAカンパサール

アジア経済を視る March, 2021, No.74

【インフルエンサーinアジア】

“ありのまま”のインドを
OL目線で現地から発信
YURIさん(日本)

SNSで多数のフォロワーを持ち、強い影響力を持つインフルエンサーが注目を集める昨今。そんな彼・彼女たちの中から、日本とアジアをつなぐインフルエンサーをご紹介。(取材=NNA東京編集部 古林由香)

北九州市立大学卒業後、コンテンツ事業会社のザッパラスに入社。人材紹介会社ビースタイルを経て、18年1月インドに移住。現在、首都ニューデリーからほど近いハリヤナ州グルガオン在住。現地の人材エージェント「Miraist(ミライスト)」でジャパンデスクマネジャーとして法人営業とコンサルタント業務を担当。20年2月からユーチューバーとして活動をスタート。「カレーハウスCoCo壱番屋」インド1号店の前でポーズ(YURIさん提供)

北九州市立大学卒業後、コンテンツ事業会社のザッパラスに入社。人材紹介会社ビースタイルを経て、18年1月インドに移住。現在、首都ニューデリーからほど近いハリヤナ州グルガオン在住。現地の人材エージェント「Miraist(ミライスト)」でジャパンデスクマネジャーとして法人営業とコンサルタント業務を担当。20年2月からユーチューバーとして活動をスタート。「カレーハウスCoCo壱番屋」インド1号店の前でポーズ(YURIさん提供)

YouTube:YURI-India【インドOL系youtuber】 4,460人(登録者数。以下同)
Instagram:yuri_adachi_i 772人
Twitter : yuri_nkmra 2,712人
Blog:インドで働くという選択 
※登録者(フォロワー)数は21年2月14日現在

肩書は「インドOL系YouTuber」。日系企業の進出状況から、新型コロナウイルス対策の最新情報まで、インド現地の様子をユーチューブで発信しているYURIこと中村ゆりさん。ビジネスの視点を盛り込んだ精度の高い情報が特徴で、その発信力に日本のテレビ局も注目。最近は番組リポーターとしても活躍している。インドで起業した日本人男性との結婚を機に東京から移住したが、「初めはインドが嫌いでした」と彼女。それが今や「インドのイメージを変えるきっかけになりたい」と、カメラ代わりのアイフォーン片手に街を東奔西走。朗らかな語り口調で、ユーチューバーとなるまでの経緯を語ってくれた。

――「インドOL系YouTuber」は印象に残るネーミングですね。

YURI 実際に私が企業で働くOLというのと、観光というよりビジネス目的でインドに興味を持つ方に情報を届けたいと思いこの名前にしました。ありのまま、という感じですね(笑)。

――YURIさんは2018年に『インドで働くという選択』というブログを開設し、現地での就職や生活事情を発信していますが、ユーチューバーとなったきっかけは?

YURI 「向いていると思う」という夫の言葉がきっかけです。カメラの前で話すのはそれほど得意ではなかったのですが、ユーチューブならより多くの人に情報を届けられると思い、昨年2月から始めました。

――インドに渡ったのは、その旦那さまとの結婚がきっかけだったとか。

YURI そうなんです。夫とは学生時代からの付き合いで、18年に入籍しました。夫は17年に単身インドに渡り、起業して「blufit(ブルーフィット)」というインド人向けの低糖質食のデリバリー事業をスタート。一方私は当時、東京で働いていたので1年ほど遠距離恋愛でした。でも実は私、もともとはインドのことが嫌いで、彼のインドでの起業にも大反対だったんです。

――嫌いだったとは(笑)。その理由は?

YURI 14年に当時は交際相手だった夫と初めてインドを訪れたんですが、大気汚染がひどいし、ホテルのお風呂場からは茶色い水が出てくるし(笑)。いろいろと大変な思いをしました。ニュースなどで見聞きしたネガティブな情報で、インドに対して良くないフィルターが掛かっている状態だったこともあり、当時は「二度とインドに来るもんか!」と誓うほどでした(苦笑)。

でも、インドで働く彼が生き生きと変わっていく姿を見て、どんな国なんだろうと次第に興味が湧き、私もいつしかインドでの転職を考えるように。その後、ご縁あって転職先が見つかり、それを機に彼と入籍してインドに渡りました。

出勤から退社までカメラを回し、オフィスでの新型コロナ対策やインド人の同僚とのランチの模様などを紹介。流ちょうな英語を操るYURIさんだが、もともとは全く海外志向ではなかったとか。「インドに来る前のTOEIC(国際コミュニケーション英語能力テスト)の点数は400点あるかないかの残念な感じ(笑)。でも、インド人は寛容なので私のブロークンイングリッシュにも耳を傾けてくれてありがたかったです」

企画から編集までワンオペ
日系カレーの実食動画がヒット

――会社員生活と並行してユーチューバー活動はどのように?

YURI インドでは月~土曜までの週6勤務が一般的で、うちの会社も同様なので、撮影は主に日曜日に。平日は夕食後に毎日1時間程度、編集作業を主にやっています。新作をアップする頻度は週に1本程度。1本あたりの作業時間は、大変なものでも撮影を含めて10時間くらいですかね。有名ユーチューバーの方の動画と比べると、自分の編集は正直まだ恥ずかしいレベル。アップする前はいつも不安で、公開ボタンを押す30分前から緊張しています(笑)。

――チャンネルの主な登録者は?

YURI 性別は男女半々くらいで、国籍別では9割が日本の方です。居住地は日本が7割、インドが2割。その他の1割は、アメリカやカナダなど各地の方です。

――視聴者からのコメントに全て返信していますね。

YURI はい、うれしくて(笑)。たくさんのチャンネルがユーチューブにある中で、私の動画を見てくださっていることにいつも感動しています。

――動画の制作方法は?

YURI 企画や撮影、編集は基本1人で全て実施。夫がカメラマンとして協力してくれることも時々あります。テーマはユーチューブのコメント欄やSNSにいただくリクエストが中心。自分では思いつかなかった案を頂けるのでとても参考になります。

――ユニクロ、無印良品の他、カレーハウスCoCo壱番屋、すき家といった日系企業のインド出店について現場リポートしていますが、企業側からの依頼ですか?

YURI いえ、許可を頂いた上で個人で実施しています。商品やお店を紹介してほしいといった依頼は、インドの企業関係者の方からは多く頂いてますね。でも、紹介するのは自分が実際に使っていていいと思うものや、信頼性の高いものに限定したいので、実現に至ったものはまだありません。その点、日系企業だとクオリティーの高さは分かっていますし、私も日本人としてインドでの日系企業の奮闘をお届けしたいという気持ちがあって紹介しています。

――最近はバラエティー番組『世界くらべてみたら』(TBS系)などでリポーターのお仕事も。的確な食レポは千原ジュニアさんら出演者から称賛を受けていましたね。

YURI ユーチューブがきっかけで関係者の方から連絡を頂き、出演させてもらいました。実は大学生の頃、番組リポーターやアナウンサーを夢見ていた時期があって。10年越しにまさかという感じで夢が叶いました。本当にありがたいです!

20年8月にグルガオンの商業施設にインド1号店を構えた「カレーハウスCoCo壱番屋」。インドのビジネスパーソンにカレーを実食してもらい、味やサービスの判定をしてもらう動画は再生回数8.5万回のヒットに。

報じられるのはネガティブ一遍
正しいインドの情報を伝えたい

――ユーチューバーとして心掛けていることは?

YURI 会社の理解と応援があってこそできているので、迷惑にならないようにということと、多くのクライアントさまにもご覧いただいているので、恥ずかしくないような内容を…! と心掛けています。情報収集の際に大切にしているのは、偏りがないことと正確性。伝えるときも脚色せずに、できる限り“ありのまま”、分かりやすくお伝えできるように努めています。

――やりがいを感じるときは?

YURI 視聴者さんからの温かいコメントが何よりの喜びです! 「インドのイメージが変わった」「インドに行ってみたいと思った」「役に立った」といったコメントや、インドに渡航前の方から「不安が楽しみに変わった」という感想を頂くと本当にうれしくなります。

私がインドの情報発信を始めたのも、もともと自分がインド嫌いだった過去があるから。日本のメディアで報じられるインドの情報は、多くが「危ない」「汚い」「貧困」といったネガティブなもの。でも実際に住んでみると、伝えられる情報に偏りがあると実感したんです。

インドではきれいな高級スーパーの裏にはスラム街が広がっていたりして、さまざまなものが共存している国。だから、どこに行くのか、何を見るのかで全く異なる印象に。私がきちんとしたインドの情報を発信することで、皆さん個人個人で判断してもらえる状況になれば…というのが個人的な願いです。

――逆に苦労を感じるときは?

YURI こだわった動画ほど再生数が伸びない時です(笑)。切なくなりますね…。

――ユーチューバー活動について周りの反応は?

YURI 夫は誰よりも応援してくれています。ダメ出しもされるんですが、的確なのでありがたいです。動画にも出てほしいんですが、シャイなので断られています(笑)。日本の家族や友人も、動画を通じてインドのことや私が元気でいることを知れて、ほっとしてくれているようです。夫のインド行きを反対していた義母も、私の動画を見て「インドに行ってみたい」と言ってくれるようになり感涙です。

インド人の同僚も応援してくれています。インドの方は、自国が日本でどんなイメージを持たれているのか知っています。私はそれを変えたいと常に口にしているので、「インドのことを伝えてくれてありがとう」と言ってくれています。

インドでの新型コロナ対策についても細やかに伝えているYURIさん。これは、昨年3月にインド全土で行われた都市封鎖(ロックダウン)を伝えた動画。1週間ぶりに買い出しに出掛け、一変した街の様子をリポート。「新型コロナの流行でインドでもマスクをするのが当たり前に。どんなに大気汚染がひどくても、付け心地が悪いとマスクをしている人は皆無だったので、いい変化だなと思いました」

今後の目標はインドで起業
謙虚さを忘れず暮らしたい

――グルガオンでの生活はいかがですか?

YURI 衣食住、どれもバランス良くあり、ほどよく都会。インドの中では日本人が一番暮らしやすい地域だと思います。インドに移住し良かったと思うのが、通勤手段がタクシーになり、満員電車のストレスから解放されたこと。あと住まいはインド人のオーナーさんが所有する一軒家の一部を借りて住んでいるんですが、メイドさんがお掃除に来てくださるので家事の負担が減りました。

逆に不便さを感じるのがインフラ面。停電が日常茶飯事で、特に真夏はひどいです。インドは電気自動車(EV)を推進していますが、脆弱(ぜいじゃく)なインフラを考えるとちょっと不安になります。

――インドでは新型コロナの感染爆発がありましたが、現在の街の状況などは?

YURI いまだに世界第2位の感染大国ですが、新規感染者数は右肩下がり。グルガオンでも、ピークだった時の緊張感と比べるとゆるりとした雰囲気です。こちらの感染対策はかなり徹底しています。メトロ(地下鉄)の乗車時には荷物を除菌したり、スーパーでも入り口で検温したり。ワクチン接種はスピーディーに進行中ですし、国内開発したワクチンは他国に無償提供もしていて、「さすが、世界の薬局インド」という誇りを人々から感じます。

――ユーチューブを始めたいと思っている海外在住の日本人にアドバイスするなら?

YURI 「やらない後悔よりもやった後悔! 思っているならまずはやってみましょう!」とお伝えしたいです。今はスマートフォンがあれば動画が簡単に作れる時代。私も撮影や編集の経験ゼロの状態で始めました。自分の顔を映しながら話すのはハードルが高いかもしれませんが慣れます(笑)。最初は見てもらえないのが普通なので、そこは気にせずジャンジャンやったほうがいいと思います。

――今後の夢や目標は?

YURI 本業があるというのと、将来的に起業を考えているため、ユーチューバーとしては正直なところ金銭的にも数値的にも特に目標はありません。届くべき方に必要な情報を届け続けていくことが目標です。そしてコロナが収まったら、インド各地を巡ってより幅広い情報をお伝えしたいですね。

この先もずっとインドで暮らしていく予定です。日本人がここで生きて働けているのは、インド人のおかげという謙虚な気持ちを忘れずにやっていきたいです。

YURIさんからNNAカンパサール読者へメッセージ


バックナンバー

総フォロワー数125万人! マルチな日泰交流のアイコン びーむ先生(タイ)
中国文化を楽しく解説 美人姉妹が結ぶ日中友好 李姉妹(中国)
アイドルJKT48出身 “いい日本”を伝えたい エリカ・エビサワ・クスワンさん(インドネシア/日本)

出版物

各種ログイン