いざ、ワクチン接種開始
“ワクチン外交”と各国の思惑
欧米に続き、アジア各国でも急ピッチで進められている新型コロナウイルスのワクチン接種。安全かついち早い投入を目指すべく、企業が物流の整備や強化に乗り出す一方、外交面では中国が自国製ワクチンを途上国に優先供給する“ワクチン外交”を展開。有効性を疑問視する声がある中、果たして事態収束への一手となるのか――。NNA POWER ASIAから関連記事をセレクト。
新型コロナワクチンの安全性を示すため、インドネシアでの接種第1号となるジョコ大統領(中央)=1月13日、インドネシア・ジャカルタ(インドネシア内閣官房提供)
インドネシア
中国製ワクチン接種を開始
大統領が第1号、国民7割へNNA POWER ASIA 2021年1月14日付
インドネシアで1月13日、新型コロナのワクチン接種が始まった。中国の製薬大手、科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)が開発したワクチンを国民向けに接種する。ジョコ・ウィドド大統領が最初に接種を受け、国民に安全性を強調した。政府は国民の7割にワクチンを投与し、免疫を持った人が増えて感染拡大を抑える「集団免疫」を獲得したい考えだ。
フィリピン
ワクチン接種、2月にも開始
1カ月前倒しで中国製からNNA POWER ASIA 2021年1月12日付
フィリピン政府は1月11日、新型コロナのワクチン接種を2月にも開始できるとの見通しを示した。中国のシノバック・バイオテックからまず5万回分を調達する。当初は3月からの接種開始を見込んでいたが、1カ月前倒しとなる。米ファイザーなどとも協議中で十分な量のワクチン確保を急ぎ、集団免疫を獲得して早期に経済の正常化を図りたい考えだ。
タイ
中国製ワクチン
有効性に疑問の声も計画維持NNA POWER ASIA 2021年1月15日付
タイ保健省食品医薬品委員会(FDA)は、新型コロナのワクチンで2~4月に到着する予定の200万回分(100万人分相当)を供給する中国の製薬大手、シノバック・バイオテックに対し、今月中に全ての情報を提出するよう求めたと明らかにした。同ワクチンの有効性について疑問の声が上がっているが、現時点での接種計画の変更は否定した。
インド
ワクチン2種の接種開始
初日に約19万人、医療従事者らNNA POWER ASIA 2021年1月18日付
13億超の人口を抱えるインドで新型コロナのワクチン接種が1月16日に始まった。使用するのは地場企業が開発した純国産のワクチンと英製薬大手アストラゼネカなどが開発したワクチンの2種類。初日は医療従事者らを中心に全国で19万人超が接種した。モディ首相は同日の演説で、ワクチン開発の成果を強調するとともに「(2回接種する必要があるため)2回目を逃さないように」と注意を呼び掛けた。
韓国
システム開発サムスンSDS
ワクチン物流事業に進出へNNA POWER ASIA 2021年1月7日付
韓国システム開発大手のサムスンSDSが、新型コロナワクチンの物流事業に参入する。ITを活用した位置追跡や定温保管など、ワクチン流通の全過程を管理して安全性を高める狙いがある。サムスンSDSはこのほど、医薬品専門の運送業者であるヨンマロジスや、低温冷凍施設を保有する韓国超低温などと、ワクチン流通に向けた試験を開始した。
香港
キャセイの貨物部門
ワクチン輸送で新追跡システムNNA POWER ASIA 2021年1月14日付
香港の航空最大手、キャセイパシフィック航空(国泰航空)の貨物部門キャセイパシフィック・カーゴ(国泰貨運)は1月12日、同社が採用した新追跡システム「ウルトラ・トラック」により、運送業者はほぼリアルタイムで新型コロナのワクチン輸送状況を監視できるようになると発表した。キャセイによると、ウルトラ・トラックは、消費電力が少ないブルートゥースデバイスを使って、温度や位置、湿度などの情報を監視する。
マレーシア
新型コロナワクチン接種
国民67%が肯定的NNA POWER ASIA 2021年1月11日付
マレーシア保健省が実施した調査で、マレーシア人の67%が新型コロナのワクチン接種に肯定的であることが分かった。専門家は、ワクチン接種プログラム開始前としては高い水準だが、集団免疫達成には人口の8割以上への接種が必要との見方を示している。政府は、有効性にばらつきのある複数のワクチンを調達する計画で、国民をどう説得していくのかが課題だ。