【アジア・ユニークビジネス列伝】
「遊覧飛行で旅行気分」
「トウモロコシから新素材」
それを売るのか、そんなサービスがあってもいいのか。アジアは日本では思いもよらない商品やサービスに出会う。斬新で、ニッチで、予想外。「その手があったか!」と思わずうなってしまう、現地ならではのユニークなビジネスを紹介する。
【香港】
遊覧飛行で旅行気分
観光再生へ機運上昇
遊覧飛行の体験会で使用したエアバスA320neo=中国・香港、10月15日(NNA撮影)
新型コロナウイルス感染症の影響で旅行が困難な中、格安航空会社の香港エクスプレス(香港快運航空)は客を乗せて香港を上空から眺める遊覧飛行を実施した。空の旅の楽しさや防疫措置を知ってもらい、コロナ収束後の観光再生と集客につなげたい考えだ。
同社は香港の航空最大手、キャセイパシフィック航空(国泰航空)の傘下。実施は11月1、7、8日の3日間。それに先立つ10月にも観光業界やメディア関係者向けの体験会として行った。
遊覧飛行中に見えた香港島の高層ビル群=同
遊覧飛行は1時間半。搭乗者の間隔を1席ずつ空け、マスク着用を義務化。機内は消毒を強化し、空気浄化フィルターも導入するなどの感染防止策を講じた。
体験会では、約100人を乗せたエアバスA320neoが香港国際空港の滑走路から飛び立つと機内から歓声が沸き起こった。
一定の高度に上昇すると、ビンゴ大会がスタート。同社の就航都市をテーマにしたクイズを出題し、回答してビンゴになった人にホテル宿泊券や同社のサービス券などが贈られた。
参加者からは、新型コロナで痛手を受けた観光業に再生の機運が盛り上がると歓迎する声が上がった。
会員制交流サイト(SNS)などで旅行関連情報を発信する男性は「年初から飛行機に乗っておらず、この日を待ちわびていた」と興奮した様子で話した。
日本政府観光局(JNTO)香港事務所の薬丸裕所長も「旅行気分を味わえる魅力ある取り組みだ」と評価する。
香港エクスプレスの広報担当者は「遊覧飛行を通じて航空会社の防疫措置を知ってもらい、海外旅行ができるようになった時に安心して飛行機に乗ってもらえることが大事だ」と強調する。
市民の関心も高い。11月の遊覧券(388HKドル、約5230円から)を10月に発売したところ、同社の取り扱い分は2時間で売り切れた。
遊覧飛行を商機につなげようという動きも出ている。地場大手旅行会社の東瀛遊控股(EGLホールディングス)は11月21日に香港エクスプレスと提携し、宮崎県と鹿児島県をテーマにした遊覧飛行を実施。機内では旅行券やホテル宿泊券、両県の地元産品などの景品が当たるゲームを開催した。
地元紙によると、EGLは11月下旬から12月にかけ、台湾や韓国、タイ、マレーシアなどをテーマにした遊覧飛行も相次ぎ計画している。計21便を運航し、3,000人の集客を見込むという。【安田祐二、イレイン・リー】
【韓国】
トウモロコシから新素材
バイオ原料で環境を守る
LG化学が開発した100%の生分解性を持つ新素材(同社提供)
プラスチックやビニールによる環境汚染への懸念が広がる中、LG化学は10月19日、ビニール袋の原料であるポリプロピレンなどの合成樹脂と同じような柔軟性を持ちながらも、微生物の働きによって最終的に水と二酸化炭素にまで100%分解される生分解性の新素材を業界で初めて開発したと発表した。原料はトウモロコシなどのバイオ原料だという。
廃棄物による環境汚染の懸念から世界各地でビニールやプラスチック製品の使用規制が強化される中、レジ袋、包装材、使い捨てカップ、マスクの不織布など、さまざまな製品への適用が期待できる。
新素材はトウモロコシ由来のブドウ糖と、バイオディーゼル燃料の副生物である廃グリセロールを活用。他の素材や添加剤なしでも合成樹脂と同等の性質を備える一方、120日以内に90%以上が生分解されるという。
既存の生分解性素材は、熱や物理的な力などに耐える物性と柔軟性を強化するために他のプラスチック素材や添加剤を混合する必要があった。メーカーごとに素材の物性と価格が異なることも問題だった。
同社の魯基洙(ノ・ギス)最高技術責任者は「100%のバイオ原料を活用した独自技術で生分解性素材を開発できた意味は大きい」とコメント。2025年の量産開始を目指す。