【アジアエクスプレス】
韓国水道で幼虫パニック
フィルターに需要殺到
韓国各地の水道水から蚊やハエの幼虫などが相次ぎ発見されたことを受け、水に対する不安が高まっている。最も多く幼虫が発見された仁川市では、浄水場での繁殖も指摘されている。水への懸念は社会問題となり、シャワーフィルターやミネラルウオーターの販売が急増した。(取材=NNA韓国 中村公)
水道水の蛇口に浄水フィルターを設置する家庭が増えた=ソウル(NNA撮影)
幼虫は仁川市で最初に見つかった。発見された幼虫はユスリカの一種と分かっており、市内にある浄水場内から水道管を伝って一般家庭に流れ込んだようだ。市によると、幼虫が出た水道水は生活用水として使えるが、飲用は控えた方がいいという。
排水溝から侵入した虫など水道水とは無関係の届けも多いようだが、仁川市では7月21日時点で水道水に関する届出件数が計211件に到達。韓国全体では同時点で700件を超えた。
京畿道でも同日時点で届出件数が計188件に上った。特に21日は1日で94件もの申告があった。このうち幼虫の疑いがある16件を検査した結果、ユスリカの幼虫こそ見つからなかったが、チョウバエの幼虫13件、異物2件、ミミズ1件、陸上昆虫1件が見つかった。これらはマンションの貯水槽や排水溝などから入り込んだ可能性が高いとみられている。
この状況を受けて韓国環境省は、同じ設備を備える全国49カ所の浄水場を検査した。その結果、市内にある公村浄水場と富平の2カ所を水源とする水道水でユスリカの幼虫が確認された。
浄水場の不純物を取り除く活性炭ろ過池で幼虫が増殖した可能性があるといい、本来は水をきれいにするはずの浄水場から受水地や配水池にこれらの幼虫が流れ込んだことが問題視されている。
シャワーフィルター
問い合わせが殺到
水道水への不安が高まる中、関連企業には特需が生まれている。
韓国経済新聞によると、バスルーム用品を手掛ける大林バスのシャワーフィルターへの問い合わせが殺到し、ほとんどのモデルが品切れになった。京畿道富川市にある浄水フィルター会社も、7月1~21日までのシャワーフィルターの販売が前月に比べ倍増した。
水道水から確認された幼虫(写真は韓国のテレビ局YTNの動画放送よりキャプチャー)
ミネラルウオーターの売り上げも伸びている。水道水への懸念から食器洗いにもミネラルウオーターを使用する家庭が急増した。コンビニエンスストアのGS25では、仁川市の主要50店舗のミネラルウオーターの売上高(7月15~19日)が、前週同期比で約3倍に伸びたという。
当局は水道水に関して、今のところ家庭での使用には大きな問題がないとの考えだ。ソウルや釜山など各地から幼虫混入の申告があったものの、ほとんどのケースでは浄水場など水道水の供給過程に問題がなかったためだ。
環境省が浄水場を全数調査
「幼虫は見つからなかった」
環境省は7月17日~26日まで、全国の一般浄水場435カ所を対象に全数調査を実施。その結果、浄水場の配水池と家庭から出る水道水から幼虫は見つからなかったと発表した。
慶尚南道陜川郡、江原道江陵市、全羅北道茂朱郡の3カ所の浄水場では、不純物を取り除くろ過池で幼虫が発見されたが、配水池などでは見つからなかった。3カ所の浄水場については、ろ過池のメンテナンスを同31日までに完了した。
ユスリカの幼虫が相次ぎ発見された仁川市でも、浄水場の配水池や水道管路上の観測地点266カ所で検査を行ったが、幼虫は見つからなかった。建物内の出入口に二重扉や高機能防虫網を設置するなど、各浄水場で実施された改善措置の効果があったようだ。
浄水場の衛生管理上の問題から起きたとみられる「幼虫パニック」。人々の暮らしを支える水道水への懸念は、社会的にも大きな影響を与えた。韓国政府は、各浄水場に対して管理の徹底を促すなど再発防止を求めて、水の安全性を高める考えだ。