【NNAコラム】各国記者がつづるアジアの“今”
テイクオフ ─コロナ下で迎える夏編─
6月に入り35度前後の猛暑日となっている中国・北京市=6月8日、北京市海淀区(新華社)
中国
子どものころは夏になると、川辺でザリガニ釣りをして遊んでいた。木の枝にたこ糸を巻き付けて作った釣りざおで、バケツいっぱいに釣り上げるのが楽しかった。
大人になった今、中国のレストランで皿いっぱいに盛られたザリガニを目の当たりにして、遅ればせながら食べられることを知った。加えて夏が旬だという。ピリ辛に炒められたザリガニを初めて注文した時は、食べるのにちゅうちょしたが、いざ口にしてみるとエビに似た味で意外においしかった。
中国ではここ数年、ザリガニ料理の一大ブームが続いている。最新の報告では、2018年のザリガニの市場規模は前年比38%増の3,690億元(約5兆5,700億円)に上り、養殖業の生産量は45%増の164万トンで過去最高になったという。
子どものころ、夏の風物詩のひとつと言えばザリガニ釣りだったが、中国にいる間はザリガニ料理が夏の風物詩となりそうだ。(東)
シンガポール
エアコンは室外機と1台ずつ対になっている──。そんな常識がここシンガポールでの生活で覆された。常夏の国であるため、各家庭にエアコンを複数台設置するのが一般的。家電量販店のエアコンコーナーに行くと、室外機1台に対し、3~4台のエアコンがセットで売られている。
コンドミニアムや公営住宅(HDBフラット)の外に並ぶエアコン室外機が、やたら整然と並んでいるのは、「各家庭の室外機は1台」という共通認識があり、建物の設計段階から1台分のスペースがきちんと設けられているからだったのだ。さすが合理性と効率性の国、シンガポールである。
さて、目下の課題は目の前で水漏れを起こしている古いエアコン。買い替えるとなると、家中のエアコンを総入れ替えしなければならないことになる。「エアコン4台セット売り」は、懐に深い傷を残しそうだ。(薩)
フィリピン
水道の蛇口をひねると温かい水が出てくる。シャワーの温度も心なしかいつもより熱く感じる。夏到来。マニラ首都圏では40度前後まで気温が上昇している。外出・移動制限措置で「家でおとなしくしていろ」と言われるまでもなく、不要不急の外出をする気にならない。
家にいる時間が増えたおかげで、季節感がなくなった。クーラーの効いた部屋の窓から外を眺めても「よく晴れているな」と人ごとだったが、食品を買いに外に出るとその暑さは現実に。体から汗を噴き出しながら、食品を入れた布袋を持ち帰る。
日用品や料理の宅配は可能だが、運転手は長袖長ズボンにマスクという、夏とは思えない服装をしている。このところの暑さの中で配達姿を見る度、つらそうに見えてしまうが余計なお世話か。外出制限下でも猛暑でも、今が稼ぎ時なのだから。(内)
香港
香港はもう夏だ。時差通勤をしているため、自宅を出る時には気温が上がっていることもしばしば。暑いし、今日の仕事は忙しいし、早く会社に行こう、と思いながら手を上げてタクシーに乗り込んだ。
「この道、以前はよく渋滞していたけど、最近は空いてるね」。運転手があきらめ顔でつぶやいた。観光客が全くいない上、一般市民も外出を自粛している現状では、タクシーの商売はやはり厳しいようだ。さらに、通勤時間が一般の社会人よりも早い教師を乗せようと毎日午前5時から仕事をしてきたというが、1月末から臨時休校となったことで「お得意様」を失ってしまった。
「政府の対応が遅いのは想定の範囲内。重症急性呼吸器症候群(SARS)の経験があるから自分たちを守ることができた」と語る運転手。お互い辛抱し、このコロナ禍を乗り越えられますように。(伊)