【アジア取材ノート】
タイのコインランドリー市場に勢い
日本企業も参入、都市で需要狙う
地場企業K―nexが展開する24時間営業のコインランドリー「オッテーリ・ウォッシュ&ドライ」。待ちスペースが設けられ、Wi―Fi(ワイファイ)が無料で提供されている=バンコク(NNA撮影)
近代化に伴い生活様式が変わりつつあるタイで、国内外の企業が相次いでコインランドリー市場に参入している。日本企業では、遠隔管理型コインランドリー店舗の企画・開発・運営を手掛けるWASHハウス(宮崎市)が6月、同社初の海外拠点となる合弁会社をタイに設立。既存の企業に加え、新たに参入する各社が、核家族や1人暮らしの若年層が多い都市部で需要の取り込みを狙っており、競争激化が見込まれる。(文・写真=NNAタイ 本田香織)
「事業は好調で、月間売上高は平均して20%の伸びを維持している」─。こう話すのは、タイ全国に24時間営業のコインランドリー「オッテーリ・ウォッシュ&ドライ(Otteri Wash & Dry)」を展開する地場企業K―nexのキッサダワン・ゼネラルマネジャー(オッテーリ事業担当)だ。
業務用洗濯機や洗濯用品などの製造・販売を手掛ける同社は、2016年にコインランドリー市場に参入。フランチャイズ(FC)展開を通じて店舗網を158店まで拡大し、業界では一大プレーヤーの地位を確立している。
首都バンコクで寮やコンドミニアム(分譲マンション)に暮らす学生および会社員(18~45歳)をメインターゲットとしている。会社員の月収レンジは、1万5,000~5万バーツ(約5万~17万円)と想定。店舗数を年内に260店まで増やし、22年に500店舗体制を目指す。当面は収益性の高いバンコクに集中的に出店していく計画で、店舗数の割合はバンコクが7割、地方が3割になる見通しという。
キッサダワン氏は、オッテーリの特徴として「使い勝手の良さ」と「快適さ」を挙げる。店内には、料金体系や洗濯機・乾燥機の使い方がタイ語と英語で掲示されている。料金は10~17キログラムで水温により40~80バーツ。コインランドリーでは仕上がりまでに通常1時間程度かかるが、30~40分で仕上がる洗濯機を導入し、店内ではWi―Fi(ワイファイ)を無料で提供している。
18年第3四半期(7~9月)に参入した地場企業ランドリー・ユーは、バンコクや東部チョンブリ県などにコインランドリー「ウォッシュエクスプレス(WashXpress)」を27店展開している。カウィン社長によると、各店舗の1日当たりの平均利用者数は500~1,000人に上るという。
同社も前出のK―nexと同じくバンコクの住宅地やオフィス街、大学が集まる地域を主な出店先としている。向こう2年はバンコクに集中的に出店する計画。その後、出店地域を北部や南部、東北部に拡大し、3年以内に400店舗体制を目指す。このうち半数がバンコクの店舗になる見込みだ。
カウィン社長は「タイのコインランドリー市場は未成熟で、伸びしろが大きい」との見方を示す。「居住者が1万人のエリアに出店した場合、1日当たり1,000~1,500人の集客が見込める」という。店舗管理を徹底するためFC店舗を制限し、駐車場を備えた大型店舗を展開することで他社と差別化を図る。
外資系企業も続々と
タイのコインランドリー市場で商機を狙う外資系企業も少なくない。日本企業では、WASHハウスが6月、同社初の海外拠点となる合弁会社WASHハウス(タイランド)をバンコク西郊ナコンパトム県に設立した。バンコクを中心にまずは直営店を運営して知見を得た後に、FC展開に乗り出す計画。WASHハウスの担当者によると、現在、店舗展開に向けて調査を進めているという。
このほか、中国の家電最大手、海爾(ハイアール)傘下のハイアール・エレクトリカル・アプライアンス(タイランド)は7月に入り、バンコク東部ラムカムヘン地区にコインランドリー「スマート・プラス・バイ・ハイアール」の1号店を開業。年内に直営店10店を出店し、将来的にはFC展開にも乗り出す計画を明らかにした。
台湾で日米の家電製品などを代理販売する上洋産業(アップヤング)も同月12日、タイの家電大手カンヨンと組んで、コインランドリー「MARUランドリー」を展開していくと発表。2年以内にトップシェアを目指すとしている。
洗濯機の普及率67%
タイ国家統計局(NSO)によると、タイの世帯における洗濯機の普及率は17年時点では66.7%。13年から徐々に上昇しているものの、上昇ペースは緩やかだ。バンコク首都圏(ノンタブリ県、パトゥムタニ県、サムットプラカン県を含む)における普及率は17年時点で63.0%で、13年以降、上昇と下降を繰り返している。
都市部の低・中価格帯の賃貸アパートでは、部屋に洗濯機が設置されていないこともある。7月にタイのコインランドリー市場への参入を明らかにした台湾の上洋産業は、タイでは住宅の面積が狭く、洗濯機を置く空間がないケースが多く、生活の忙しさから洗濯をする時間がない人も増えているため、コインランドリーの需要は大きいとの見方を示している。