NNAカンパサール

アジア経済を視る September, 2019, No.56

アジアを走れ、次世代モビリティー

モータリゼーションめぐる課題解決に向けて
交通事故、渋滞、大気汚染、温室効果ガス

中間層が厚みを増し、念願のマイカーを手に入れる人々が増えているアジア。急速な自動車の普及(モータリゼーション)は同時に、慢性的な交通渋滞や排ガスを原因とする大気汚染、交通事故などの社会問題を引き起こしている。「Connected(コネクテッド)」「Autonomous(自動運転)」「Shared/Service(シェア・サービス)」「Electric(電動化)」のいわゆるCASEは、アジアのこうした課題の軽減に新たな波をもたらそうとしている。

出所:世界保健機関(WHO)

出所:世界保健機関(WHO)

交通事故

世界保健機関(WHO)によると、2016年の交通事故死者数は世界全体で135万人だった。人口10万人当たりの死者数は世界全体で18.2人。これに対し、東南アジアでは20.7人と世界全体を上回り、地域別でアフリカに次ぐ多さだった。国別ではタイが32.7人で最も多く、次いでベトナムが26.4人、マレーシアが23.6人で続いた。








※一定の距離を自動車で移動する際に渋滞していない時に比べて要する超過時間の比率 出所:TomTom

出一定の距離を自動車で移動する際に渋滞していない時に比べて要する超過時間の比率 出所:TomTom

交通渋滞

アジアの主要都市で共通の課題となっている交通渋滞。オランダのデジタル地図サービス大手「TomTom(トムトム)」がまとめた報告書によると、最も渋滞がひどいのはムンバイとニューデリーのインドの2都市。順位は、渋滞していない場合と比べて、移動時間がどの程度長くかかるかを基準に決められる。ムンバイの2018年の「混雑レベル」は65%。渋滞のない場合と比べ、ムンバイでは通勤などの移動に1.65倍の時間を費やしていることになる。ワースト10位中半分は中国の都市が占めた。



大気汚染悪化でマスクを着用するバンコク市民(ネーション提供)

大気汚染悪化でマスクを着用するバンコク市民(ネーション提供)

大気汚染

大気汚染の指標となる微粒子状物質(PM2.5)濃度。アジアではワースト1位のネパールと2位のインドが1立方メートル当たり90マイクログラム(μg)を超えた。続いてバングラデシュ(60.6μg)、パキスタン(60.3μg)が続き、南アジア諸国の大気汚染の深刻さが浮き彫りになっている。中国は53.5μgで、世界全体の44.2μgを上回っている。

出所:経済協力開発機構(OECD)

出所:経済協力開発機構(OECD)


出所:国際エネルギー機関(IEA)

出所:国際エネルギー機関(IEA)

二酸化炭素排出

地球温暖化の一因とされる二酸化炭素(CO2)。2016年の世界のエネルギー起源のCO2排出量は323億トンで、中国が最大の91億トンと全体の28.2%を占めた。中国、インド、日本、韓国、インドネシアのアジア5カ国を合わせたCO2排出量は133億7,000万トンに達し、世界全体の41.4%に上った。自動車からのCO2排出抑制に向けては、車両の燃費向上とともに、交通渋滞の改善が不可欠だ。



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