一帯一路の現場から
エチオピア・スリランカで実像に迫る
中国が提唱する巨大経済圏構想「一帯一路」。アジアから欧州、アフリカを網羅する現代版シルクロードは、見る者の立場によって、大きなビジネスチャンスとも、安全保障上の脅威とも映る。その実像に迫るべく、一帯一路の要衝であるエチオピアとスリランカで現場取材した。
中国が提唱する巨大経済圏構想「一帯一路」。アジアから欧州、アフリカを網羅する現代版シルクロードは、見る者の立場によって、大きなビジネスチャンスとも、安全保障上の脅威とも映る。その実像に迫るべく、一帯一路の要衝であるエチオピアとスリランカで現場取材した。
エチオピアで存在感増す中国
エチオピアで初めての工業団地として、2008年に開所した中国資本の東方工業園。当初は入居企業の誘致に苦労したが、過去数年で進出企業が一気に増え、第1期分は入居率100%を達成した。現在は第2期の開発に向けて、エチオピア政府に土地取得を申請中だ。
エチオピアで存在感増す中国
エチオピアに進出する唯一の完成車メーカーである力帆実業(集団)。人口1億人の同市場で、将来の潜在需要を見込んで、2009年に現地生産を開始した。しかし、10年間で累計販売台数は5,000~6,000台にとどまり、苦戦を強いられている。最大の課題は慢性的な外貨不足によって部品の輸入がしばしば滞ることだ。加えて、不透明な税制や工場労働に不慣れな現地人材の扱い方など、先行企業としての課題に直面している。
人を育てる日本の技術
エチオピアの首都アディスアベバ近郊では、さまざまなインフラ整備や企業活動などで中国の存在感が目立つが、日本に対する支持もまだまだ高い。「人を育てることが経済発展につながる」ことを知る日本人が、それを実践することで「メード・イン・ジャパン」に対する国際的な信頼を得てきたことへの共感があるからだ。エチオピアで日本式の「人づくり」の現場を取材した。
人を育てる日本の技術
カイゼン(改善)は、生産現場における品質や生産性の向上のための活動として、日本以外でも展開されている。エチオピア政府は2011年、「エチオピア・カイゼン機構(EKI)」を設立し、取り組みを加速。アフリカにおけるカイゼン導入の代表例になりつつある。
エチオピア街角スナップ
エチオピアはコーヒー発祥の地とされる。フルーティーな香りと酸味が強いのがエチオピア・コーヒーの特徴だ。家では気が合う者同士が、おしゃべりしながらゆっくり飲むのがエチオピア流。豆をいるところから始めて、いり終わったら豆を回して、まずみんなで香りを楽しむ。それから陶器のポットで20分ぐらい煮て、3回飲む。1煎目を「Abol(アボル)」、2煎目を「Tona(トナ)」、3煎目を「Baraka(バラカ)」と呼ぶ。会話が盛り上がれば、コーヒータイムが2~3時間続くこともある。
インド企業に聞くアフリカ市場の魅力
アフリカと地理的に近く経済的なつながりも深いインド。進出企業も多く、エチオピアだけでこれまでに600社近くが投資しており、総投資額は40億米ドル(約4,472億円)以上に達している。アフリカ進出で、一日の長があるインド企業との連携を模索する日系企業もある。実際にアフリカに生産拠点を置くインド企業は、アフリカをどう見ているのか。大手アパレルメーカーに話を聞いた。
エチオピアの自動車事情
エチオピアでは日本車の存在感が際立っている。大半は輸入中古車だが、日本からの中古車は程度が良いことからトヨタ車やいすゞ車を中心に人気が高い。一方、二輪車ではバジャジ・オートやヒーロー・モトコープ、TVSモーターのインド勢が目立った。
スリランカの「一帯一路」
約13億米ドル(約1,430億円)を投じて2010年11月に開業したスリランカ南部のハンバントータ港。巨額債務を払えず中国企業に権益を売り渡した「債務のわな」の代表例として国際社会が注視している。しかし、「中国の港」という先入観にとらわれない方が良さそうだ。アジアと欧州を結ぶ大型コンテナ船やタンカーが同港沖合10海里(約18.5キロ)先を1日約200隻往来する、インド洋の海上交通路(シーレーン)の要衝の開発は、日本企業にとってもいろいろな青写真が描けるからだ。
東南アジアで加速する九電工
電気設備工事大手の九電工(本社・福岡市)が、発展著しい東南アジアで事業展開を加速している。統括拠点を置くシンガポールをはじめ、東南アジア各国に拠点を持ち、全拠点の総従業員数は約600人。日本水準の技術で、日系企業の工場やビル建物の電気、空調、配管などの設計から施工、メンテナンスを手掛ける。東南アジア各国で多岐にわたるプロジェクトそれぞれの原価など、採算性を把握しにくいのが課題だったが、その数字を「見える化」したのが東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)が提供するグローバル経営管理ソリューション「mcframe GA」だ。
ASEAN一覧 工業団地&インフラMAP
ASEAN
東南アジア諸国連合(ASEAN)各地では、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に関連する各種プロジェクトが進んでいる。その中から主要道路や鉄道、港湾、国家級工業団地などを地図にまとめた。
【アジアインタビュー】
『中国嫁日記』の井上氏、初の経済マンガ
中国など海外工場に送金するお金が、円の為替相場が安くなったせいで高くつく。手持ちの日本円が目減りすることになるが、「減った分のワタシたちのお金、誰が取りましたか?」──。そんな中国人妻の素朴な疑問に答えることから始まるストーリーは、お金とは何か、経済成長とは何かなどの経済の本質を問い直すことにつながっていく。
【アジアエクスプレス】
日本の大学で、増える外国人留学生らのさまざまなアイデアを生かす取り組みが広がっている。世界89カ国・地域、約3,000人の留学生が在籍する立命館アジア太平洋大学(APU・大分県別府市)の学生らが民間企業と共同開発したハラル(イスラム教の戒律で許されたもの)認証を取得した食品「ハラールはちみつ醤油」が1月に発売された。APUは従来から「実践を通じての学び」に力を入れているが、実際に商品完成にこぎ着けたのは初めて。
【アジア業界地図】
経済成長に伴う中間所得層の増加を背景に、航空利用者が飛躍的に伸びているアジア。一方で、格安航空(LCC)の路線拡大によって、フルサービスキャリア(FSC)との利用者争奪戦も激しくなっている。アジア7カ国・地域の主な航空キャリアの搭乗客数と市場の最新動向をまとめた。
【アジア取材ノート】
フィリピンで2月、鉄道の大型プロジェクトが相次いで着工された。27日にはマニラ首都圏の地下鉄敷設事業の起工式を開催した。同事業は、ドゥテルテ政権のインフラ整備計画「ビルド・ビルド・ビルド」のフラッグシップ事業75件の中で事業費が最大(約3,570億ペソ=約7,530億円)の案件で、同国初の地下鉄となる。これに先立つ15日には、マニラ市と南北近郊を結ぶ南北通勤鉄道の建設工事も開始され、両事業の完成によって首都圏の交通事情の大幅な改善が期待されている。
【プロの眼】
渡航メンタルヘルスのプロ
第3回 勝田吉彰
海外勤務では一人何役で走り回り、本社から矢継ぎ早に入ってくる連絡に叩き起こされる、という多忙な状況がある一方で、やる事がない暇な時間もやって来ます。多忙なオフィスアワーが終わり帰宅してみると、娯楽がない、行くところがない。これまで日本の生活でなじんでいた遊び場もない、映画館に行っても早口英語や現地語ばかりで理解できない、ましてやパチンコ屋なんてあろうはずもない……というところで、「独り酒のワナ」が口を開けて待っています。
農水産物・食品をアピール
アジアで日本の食材や食品の存在感をさらに高めようと、日本政府、自治体、企業が一丸となって、食材や食品のアピールを強化している。東京電力福島第一原子力発電所の事故から8年が経過、日本の食品に対する一層の信頼回復に努めている。最新の関連記事を、ニュース配信サービス「NNA POWER ASIA」からセレクト。
【アジアの本棚】
―衰退の先に見えるもの』
私は1994年に日本銀行の担当記者だった。株や不動産のバブル崩壊はすでに始まっていたが、大手証券や長期信用銀行の破綻といった大ショックはまだ数年先の話で、今思えば「嵐の前の静けさ」のような時期ではあった。個人的には翌年に香港への赴任を控えており、「国際金融センターを目指す東京の将来に陰りが出てきた」というトーンの記事も書いたが、銀行関係者から「アジアの大手行でも時価総額は日本の都銀と比べると下の方です」と聞かされたのを覚えている。まだまだ「日本は大したもの」だった。