NNAカンパサール

アジア経済を視る Janurary,2019, No.48

【アジア取材ノート】

ミャンマーで外資参入が活発化
小売・卸売元年が到来か

ミャンマー

経済成長に伴い国民の所得が拡大するミャンマーで、小売・卸売分野での外資企業の動きが活発化している。ショッピングモール開業に向けた調査を行う日本のイオンのほか、タイ財閥系、ドイツ大手が本格参入を急ぐ。ミャンマー政府は2018年5月、一定額の初期投資を条件に外資系企業の全額出資会社を認めた。同年が「小売・卸売元年」となる可能性もある。(文・写真=共同通信ヤンゴン支局・齋藤真美)

イオンがバホー通りで2018年7月に開業したスーパー「イオンオレンジ」の店舗で買い物をする女性=ヤンゴン

イオンがバホー通りで2018年7月に開業したスーパー「イオンオレンジ」の店舗で買い物をする女性=ヤンゴン

これまでミャンマーの小売・卸売市場に参入する外資企業は、商業省の営業認可を取得する必要があったが、条件や基準が不明瞭で、実際に認可を取得するのは極めて難しかった。そのため、16年に地場企業との合弁会社「イオンオレンジ」で小売市場に参入した日本のイオン以降、外資大手の誘致は実現せず、地場の小売最大手シティマート・ホールディングス(CMHL)グループが市場を席巻してきた。

イオンは16年以降、「イオンオレンジ」でブランドを浸透させる一方で、モールの開業を模索。18年7月に同社がCSR(企業の社会的責任)活動の一環としてミャンマーで行っている植樹祭に参加した岡田元也社長は、「国が成長するには、製造業やインフラだけでなく、小売業などが発展しないといけない」と、規制緩和の動きを歓迎。現在、モール開発の担当者が候補地の選定に向けた動きを加速しているところだ。

ミャンマーの地場シティマートの店舗。同社グループは全国で180店舗を展開し、市場を席巻している=ヤンゴン

タイの大手財閥チャロン・ポカパン(CP)グループ傘下のサイアム・マクロは18年9月、全額出資の孫会社をヤンゴンに設立したと発表。既にミャンマー国境に近いタイ北西部ターク県メソトの店舗でミャンマー人を顧客に持つが、小売・卸売業の両方をミャンマーで本格展開する計画を明らかにした。サイアム・マクロは17年、カンボジアにも進出を果たしており、後発新興国でのビジネスに意欲的だ。

独メトロ、ベトナムに続く進出

ヤンゴン郊外のティラワ経済特区(SEZ)では、ドイツの卸売大手メトロ・グループ傘下のメトロ・ホールセール・ミャンマーが卸売拠点を稼働した。同社はさらに、ヤンゴン中心部のダウンタウン地区で、商品を陳列したショールーム機能を持つ店舗を準備する。

メトロは東南アジア諸国連合(ASEAN)ではベトナムに進出しており、ミャンマーが2カ国目。食品・非食品で計3,300品目以上の商品を国内のホテルやレストラン、小売店、オフィス向けに販売するという。

外資企業の動きを後押しするのが、ミャンマー商業省が5月に発表した規制緩和だ。小売業で300万米ドル(約3億3,800万円)、卸売業では500万米ドル以上の初期投資を条件に、外資に80%を上回る出資を認める。商業省は18年10月初旬、女性用生理用品などを現地で製造販売する日本の大手ユニ・チャームの全額出資子会社に、外資で初となる卸売業での認可を付与することを公表した。ユニ・チャームは、これまでできなかった近隣国からの輸入品の卸売りが行えるようになる見通しだ。

ティラワ経済特区で稼働しているメトロの卸売拠点=ヤンゴン近郊

外資系第1号の認可案件を手掛けた森・濱田松本法律事務所ヤンゴンオフィスの井上淳シニアアソシエイトによると、当局側が手続きや必要な書類の作成に慣れておらず、何度も進ちょくを確認する必要があったものの、最終的には申請から5カ月程度で認可が出た。「想定よりも円滑に進んだ」と振り返る。「外資進出が急速に進んだ際に内資企業から反発が出る恐れははらんでいるが、商業省には本気で市場開放を進める意向がある。今は外資進出の好機」と話した。

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