「スポーツ×アジア」の新時代
スポーツビジネスにアジアを取り込む動きが加速している。日本のプロサッカーチームの一部では、アジアで絶大な人気を誇るスター選手を獲得し、アジアからの観光客の誘致にもつなげた。クラブの運営のみならず、地域振興にもプラスとなる好循環を生み出している。こうしたスター選手を商品のPRキャラクターに起用することで、アジアで拡販を狙う企業もある。背景にあるのはアジア市場の成長だ。「スポーツ×アジア」が育む新しいビジネスの現場を訪ねた。
スポーツビジネスにアジアを取り込む動きが加速している。日本のプロサッカーチームの一部では、アジアで絶大な人気を誇るスター選手を獲得し、アジアからの観光客の誘致にもつなげた。クラブの運営のみならず、地域振興にもプラスとなる好循環を生み出している。こうしたスター選手を商品のPRキャラクターに起用することで、アジアで拡販を狙う企業もある。背景にあるのはアジア市場の成長だ。「スポーツ×アジア」が育む新しいビジネスの現場を訪ねた。
北海道コンサドーレ札幌
突き抜けるような北国の青空が広がった2018年11月4日午後、観客2万4,000人が詰めかけた札幌ドームに、サッカーJ1リーグ・北海道コンサドーレ札幌の応援歌が響き渡った。チームカラーである赤に黒の縦縞模様のシャツを着たサポーターたちが観客席で一斉に飛び跳ねる。この日はベガルタ仙台との試合。アウェーとなったゴールドのシャツを着た仙台のサポーターたちの応援は、ドームの片隅にかき消えてしまうかのよう。
「北海道を元気にするクラブ」とアジア
──三上GMインタビュー
北海道コンサドーレ札幌はこれまでにアジアからスター選手を数多く獲得するなど、サッカーを通じて北海道とアジアをつなげる取り組みを先進的に行ってきたことで知られる。これらの「アジア戦略」を10年ほど前から提唱し、具現化してきたキーパーソンが、株式会社コンサドーレの取締役ゼネラルマネージャー(GM)の三上大勝氏(47)だ。その狙いを聞いた。
チャナティップ選手 インタビュー
テレビ朝日系列で生放送されているスポーツ番組『やべっちF.C. 〜日本サッカー応援宣言〜』に出演し、その元気でおちゃめなキャラクターを全国の視聴者に披露したこともあるチャナティップ選手は、札幌のサポーターからも人気が高い。
2018年のシーズンを2位で終えたサンフレッチェ広島。惜しくも優勝は逃したものの、J1残留チーム中最下位だった前シーズンから大きく躍進した。その立役者の一人となったのが、18年から新たに加入したタイ人フォワードのティーラシン選手だ。同選手の活躍を見ようと、広島を訪れるタイ人も増えた。「タイの英雄」がピッチ内外でチームと地域にもたらしたものは大きい。
北海道コンサドーレ札幌のチャナティップ選手やサンフレッチェ広島のティーラシン選手を含め、Jリーグでは現在5人のタイ人選手がプレーする。その背景には、2012年からのJリーグの「アジア戦略」がある。アジアの優秀な選手にJリーグでの活躍の場を提供することで、アジアの注目をJリーグに集め、Jリーグとアジアサッカーの市場拡大、ひいては新たなビジネスや日本経済の発展に寄与することを目標に掲げているのだ。
鈴木大地スポーツ庁長官に聞く
2020年の東京五輪・パラリンピックの開幕が約1年半後に迫った。五輪・パラリンピックをひとつのきっかけに、日本のスポーツ関連産業を海外に展開させる動きが活発化している。政府は、スポーツ産業の市場規模を25年までに15兆円に拡大する目標を掲げており、重要市場と位置付けるアジアと日本のスポーツ産業の関わりなどを、スポーツ庁の鈴木大地長官に聞いた。
徳島県三好市の挑戦
スポーツの国際大会の開催を通じて、地域の活性化に取り組む自治体が増えている。徳島県の三好市もその一つだ。過疎の進む地域を元気づけようと、自治体や民間ボランティアを巻き込んで、2017年にラフティングの国際大会の招致に成功。地域に活気と自信をもたらした取り組みは、新たな外国人旅行者を呼び込んだ成功例といえる。
ルネサンスのベトナム事業が活況
日本で培ったノウハウを活用し、アジアでスポーツ・ビジネスを展開する動きが加速している。ルネサンス(東京都墨田区)がベトナムの首都ハノイと南部ビンズオン省で手掛けるスポーツクラブでは、日本のクオリティーにこだわった運営が好評だ。子供向けスイミングスクールでは、水泳技術以外に「心配り」や「整理整頓」「用具を大事に扱う」といった行儀やマナーも学べるとの評判を呼んでいる。
ラグビーのワールドカップが今秋、日本で開催されるほか、東京五輪・パラリンピックがいよいよ来年夏に迫る中、製造業向けの情報システムなどを手掛ける東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)と、スポーツデータ事業などを行う共同通信デジタルのスポーツデータ事業部が異例のタッグを組んだ。関心の高まるスポーツ界で、ITやセンサーを使って選手の動作や姿勢の変化をデジタルデータ化し、効率的な練習やけがの未然防止などに生かす新しいソリューションの開発に挑戦し始めたのだ。両社のキーパーソン同士が対談し、「スポーツ×IoT」の未来像を探った。
ASEAN一覧 工業団地&インフラMAP
ASEAN
東南アジアの国々ではそれぞれサッカーが国民的なスポーツであり、その人気は熱狂的ですらある。各国のプロサッカーリーグの歴史は古いものの、近年になってようやくビジネスとして立ち上がってきた。日本のJリーグは、タイやベトナムなどのプロサッカーリーグとそれぞれパートナーシップ協定を結んでいる。日本を含めたアジア全体でのサッカーが盛り上がっていけば、さまざまなビジネスチャンスも拡大するだろう。各国のプロリーグの概要をまとめた。
【アジア取材ノート】
ミャンマー
経済成長に伴い国民の所得が拡大するミャンマーで、小売・卸売分野での外資企業の動きが活発化している。ショッピングモール開業に向けた調査を行う日本のイオンのほか、タイ財閥系、ドイツ大手が本格参入を急ぐ。ミャンマー政府は2018年5月、一定額の初期投資を条件に外資系企業の全額出資会社を認めた。同年が「小売・卸売元年」となる可能性もある。(文・写真=共同通信ヤンゴン支局・齋藤真美)
【アジア業界地図】
アジアではスマートフォンやモバイル決済サービスの普及を背景に、配車アプリ市場が急拡大している。中国では滴滴出行がシェア9割を占めるが、東南アジア諸国ではマレーシア発のグラブ(Grab)(本社・シンガポール)が、米ウーバー(Uber)を駆逐して独走する。地下鉄など公共交通機関が未発達な国々では、既存のタクシーに代わる市民の足として定着しつつあるが、客を奪われることになった既存のタクシー業界にとっては大打撃だ。
【スペシャルリポート】
成都訪問記
パンダや麻婆豆腐が有名な中国・四川省だが、訪れる日本人も在留邦人数も多くはない。日本人にとっては、内陸の奥地というイメージだ。実際、上海から省都の成都へは飛行機で3時間以上かかる。しかし、沿海部から内陸部へと製造業の生産移管が進み、高速鉄道や欧州・東南アジアを結ぶ物流インフラも整備。訪れてみると、もはや「奥地」ではなかった。(文・写真=NNA東京編集部 遠藤堂太)
【プロの眼】
グローバル教育のプロ 第7回
森山正明
日本の「グローバル化」は以前から喧伝されています。2017年10月1日時点の海外在留邦人の総数は135万1,970人で、前年より約1.0%増の過去最多を更新。海外にある日系企業は7万5,531拠点で前年より約5.2%増加し、こちらも過去最多となりました。さらに日本では263万人もの外国人が長期滞在しています。
消費市場が拡大する東南アジア諸国連合(ASEAN)で、日本の小売流通業界の進出が加速している。一連の動きを伝えた最新記事を、ニュース配信サービス「NNA POWER ASIA」の中からピックアップ。
【アジアの本棚】
―アメリカの繁栄から取り残された白人たち』
われわれ日本人は映画の影響もあってか、ニューヨークやロサンゼルスといった大都市の生活を米国の象徴のように考えがちだが、実際には地方で地道に生きている労働者や農民の方が圧倒的に多い。彼らは金融やITに代表される現在の米国の繁栄から取り残され、増え続ける移民に雇用を脅かされていると感じている。