【アジアの穴場】
コックスバザール(バングラデシュ)
「バングラの熱海」
自慢は世界最長ビーチ
バングラデシュ
世界一の長さを誇るコックスバザールのビーチ
「混沌の国」を巡る、旅人に会わない旅――。『地球の歩き方バングラデシュ編』(ダイヤモンド社)の表紙に記されたサブタイトルだ。著名な観光ガイドブックにして、何とも冒険的なタイトルだが、「貧困」「難民」「洪水」「テロ事件」などのネガティブなイメージが先行し、旅人を引き付ける観光名所といってもなかなか思い浮かばないのも事実ではある。
全長125キロの天然ビーチ
そうした中、多くのバングラデシュ人が国内観光地の筆頭に挙げるのが南部のビーチリゾート地、コックスバザールだ。全長125キロメートルにおよぶ天然の砂浜の海岸線は「世界最長のビーチ」と言われている。
ヒマラヤ山脈を源流とするパドマ川(ガンジス川)やジョムナ川(ブラフマプトラ川)が長い旅を終えて、ベンガル湾に注ぎ込む地帯に広がるバングラデシュ。大河から流れ込んだ水によって海の色が茶色くにごり、東南アジアのような美しいサンゴ礁が広がるビーチリゾートは望むべくもないが、南部に位置するコックスバザールは比較的海の色も澄んでいる。新婚旅行で同地を訪れるバングラデシュ人のカップルも多く、名古屋工業大学に留学経験があるという30歳代のバングラデシュ人男性は、「コックスバザールはバングラデシュの熱海。多くの日本人もきっと気に入るはずだ」と力説した。
同地を訪れたのはバングラデシュの休日に当たる金曜日と土曜日だったが、「世界一長いビーチ」であるせいか、遊ぶ人々の数はまばら。肌の露出を避けるイスラム教徒が国民の9割を占める同国では、海水浴客もみな服を着たまま泳いでいた。
新婚旅行のメッカだけあって、果てしなく広がるビーチでのんびりと眺めるベンガル湾の夕日は美しく、一見の価値ありだ。
貧困層が目立つ街並みや交通インフラの整備の遅れなど、まだまだリゾート地としては未成熟な印象がぬぐえない。だが、縫製品の輸出が世界第2位に浮上するなどバングラデシュは好調な経済成長が続いており、コックスバザールもやがて国際的なリゾート地として名をはせる日がくるのかもしれない。
ロヒンギャ問題の最前線
コックスバザールのあるチッタゴン管区はミャンマーと国境を接している。ミャンマーを追われて同地に流入したイスラム教徒、ロヒンギャ難民の問題が国際的な関心を集めている。
バングラデシュ政府によると、コックスバザール近郊には30カ所の難民キャンプがある。その広さは東京ドーム173個分にもおよび、難民の数は100万人に達していると言われる。バングラデシュ国内でももともと裕福とは言いがたい同地域にとって、膨大な数の難民は犯罪の増加や物価上昇などを招くなど大きな社会問題となっている。
【アクセス】
- 空路は首都ダッカのハズラット・シャージャラル国際空港(HSIA)から約1時間。コックスバザール空港から筆者が宿泊したビーチ沿いの5つ星ホテルまでは自動車で1時間余りだったが、交通渋滞が激しいとさらに時間がかかる。