NNAカンパサール

アジア経済を視る October,2018, No.45

【アジア取材ノート】

本田選手が実質的な代表監督
カンボジアサッカーの新時代

カンボジア

日本代表としてサッカーワールドカップ(W杯)に3大会連続出場した本田圭佑選手(32)は8月12日、カンボジア代表の実質的な監督兼ゼネラルマネジャー(GM)に就任した。契約期間は2年で、現役選手は続ける。関係を築いてきたカンボジアサッカー連盟(FFC)に打診し、実現した。カンボジア代表が目指すべき独自のサッカースタイルを構築するとともに、カンボジアの魅力を世界に発信していく。(文・写真=NNAプノンペン支局 竹内悠)

カンボジア代表の初練習後、囲み取材に応じる本田選手=9月4日、プノンペン(NNA撮影)

カンボジア代表の初練習後、囲み取材に応じる本田選手=9月4日、プノンペン(NNA撮影)

「いまこのプロジェクトにすごくわくわくしている。カンボジア代表のサッカーが変わったな、見ていて楽しいなと感じてもらえるように取り組んでいく」。カンボジアの首都プノンペンでFFCが8月12日開いた記者会見で、本田選手は力強く語った。

カンボジア代表チームでの肩書きは「ヘッド・オブ・デレゲーション」で、チームの構成や指揮など全権を任せられ、実質的な監督の役割も担う。登録上の監督には本田選手のパーソナル・アシスタントを務めるフェリックス・アウグスティン・ゴンザレス・ダルマス氏(アルゼンチン最高位の指導者ライセンスを保持)が就任する。

本田選手は、オーストラリアのメルボルン・ビクトリーの現役選手としてプレーしながら、カンボジア代表の国際Aマッチにベンチ入りする。カンボジア代表の実質的な監督としての初戦となったのが、9月10日にカンボジアで開催されたマレーシア代表戦。結果は1-3の逆転負け。試合後の記者会見で本田選手は「結果が出せなかったことに関しては自分に責任がある。最初の30分はよかったが、残る時間に改善の余地があった」と振り返った。

カンボジア代表の実質的な監督就任会見で、カンボジアサッカー連盟のサオ・ソカ会長(右)と握手を交わす本田圭佑選手=8月12日、プノンペン(NNA撮影)

マレーシア代表との試合後、選手たちをねぎらった=9月10日、プノンペン(NNA撮影)

カンボジアは国際サッカー連盟(FIFA)ランキングで166位と低く、戦術や技術に課題が多い。新体制ではFFC、各チーム、育成年代の全てが同じサッカースタイルを構築することを目指す。同じ目標を全関係者が認識し、一緒になって進んでいくことをミッションとして掲げる。

目標や現地の状況を把握できる環境もつくる。週に1〜2回、FFC側とテレビ会議の場を設け、リーグ戦などの結果や選手の状況などを共有する。メルボルン・ビクトリーも理解を示しているという。

サッカー以外のカンボジアの魅力も世界に発信していく。文化や世界遺産、農業などを世界にアピールしていく方針だ。

FFCのサオ・ソカ会長は「世界のサッカー界で知名度の高い本田選手の熱意に感謝する。カンボジア・サッカー界の底上げに大きく貢献するだろう」と説明。「本田選手はカンボジア人選手にとって大きなモチベーションとなり、目指すべき鏡になる」と話した。

「今までにない形で関わる」

カンボジアのフン・セン首相(右)は、本田選手のGM就任について「自主的に引き受けてくれたことに感謝する」と自身のフェイスブックに投稿(フン・セン首相のフェイスブックより)

本田選手がカンボジアに関心を持ったのは、2015年11月のW杯アジア2次予選。カンボジアのサッカー熱や自身の知名度の高さを感じると同時に、貧困問題などにも目を向けるきっかけとなった。

16年11月、本田選手がプロデュースする「ソルティーロファミリアサッカースクール」のカンボジア校を開校。現在はプノンペンで2校を運営し、約50人の子どもたちが通っている。同年12月には、カンボジアの2部リーグだった「シエムレアプ・アンコールFC」の経営に参入。「ソルティーロ・アンコールFC」に改称し、1年目で1部昇格を果たした。

本田選手はW杯ロシア大会を終え、次のW杯は目指さないことを公言していた。今までにない形で世界のサッカーに関わることを模索する中、関係を築いてきたFFCに実質的な監督になることを提案。アジアサッカー連盟など関係各所にルール上問題がないかなどを確認し、実質的な監督就任が実現した。

新国立競技場の建設進む
中国が資金援助、20年末完成

カンボジア代表のホームスタジアムでもある「オリンピックスタジアム」は老朽化が進んでいる=プノンペン(NNA撮影)

地元の報道によると、新国立競技場は首都中心部から北15キロメートルに立地し、敷地面積は16.22ヘクタールと巨大だ。競技場自体の面積は85ヘクタール、高さは35メートル。クメール文化を踏襲した建築様式を採用し、競技場のデザインは中国の伝統的な船を想起させる形にした。

建設を請け負っている中国建築工程(CSCEC)の幹部は「品質を最優先にして作業に当たっている」と強調する。17年の着工以来、工事も順調に進んでいるという。首都中心部にある既存の大型競技場(国立競技場に相当)「オリンピックスタジアム」は1960年代に建てられた。主にサッカー大会に活用されているが、老朽化が進んでいるほか、試合がある日はスタジアム周辺の交通渋滞が慢性化するなどの問題が発生している。

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