主要デベロッパーのアジア戦略
三菱地所 バンコクの供給戸数が1万戸突破
三菱地所レジデンスは、タイのバンコクを中心に海外事業を展開している。三菱地所グループがバンコクで事業参画する分譲マンションの累計戸数は1万戸を超える。同社がターゲットとしている中で、タイにおいて特徴的なのはバンコクで働く20~40歳代の実需。平日はバンコクで働き、週末は実家のある郊外で過ごす人が多いこともあり、比較的小さな住戸を中心とした物件にも需要があるとのこと。東南アジアで、タイに続いて有望視しているのは、経済成長が著しく、不動産需要も旺盛なベトナムとインドネシア。執行役員の唐澤眞二氏は「優良な現地パートナーと手を組み、市場参画したい」と話す。
野村不動産 ホーチミン市の販売好調
野村不動産は、3年前からアジアの住宅事業を始めた。これまでに中国、ベトナム、フィリピン、タイで展開している。ベトナムでは大和ハウス工業、住友林業、台湾資本の大手デベロッパーと組み、ホーチミン市7区サイゴンサウス地区(フーミーフン新都市区)で住宅開発を進めている。担当者によると「日本でのマンション販売に比べて、ベトナムの需要は信じられないぐらい旺盛」。フーミーフン新都市区で既に住宅を保有しているベトナム人が、優良な立地や将来的に価格が上昇することを見込んで、自分の子どものために購入するケースなどが目立つという。
三井不動産 タイで1.6万戸を供給
三井不動産は、タイの住宅開発大手アナンダ・デベロップメントとの合弁を通じ、首都バンコクで分譲マンション事業を展開。三井不動産が手掛けるバンコクのコンドミニアム開発は合計20件、総戸数は約1万6,000戸となっている。昨年2月に設立したタイ現地法人を通じて、住宅事業だけでなく商業施設やオフィス事業の展開も見据える。
フィリピンでは地場不動産会社ロックウェル・ランドと提携し、マニラ首都圏ケソン市で高層コンドミニアムの開発を進めている。住宅市場の中長期的な拡大を見込み、東南アジアでさらなる事業機会を模索している。
東京建物 ジャカルタなどに初進出
東京建物は、タイの不動産開発会社レイモンランドと首都バンコクで住宅開発を進めている。年内に2軒の高級コンドミニアムを起工する計画だ。事業規模は91億バーツ(約310億円)で、東京建物が49%出資する。東京建物がタイに進出するのは初めて。長期的にタイの住宅事業に投資していく方針という。
一方、インドネシアでは、首都ジャカルタの2地域で、総事業費は約490億円を投じて、マンションなどからなる高層ビル合計3棟の開発計画を進めている。東京建物がインドネシアで事業を手掛けるのは初めて。
東京急行電鉄 多摩田園都市のノウハウ活用
東京急行電鉄は、ベトナムとタイに的を絞る形で不動産事業を展開している。これまでにベトナムで3物件・計1,545戸、タイで3物件・計1,221戸の分譲マンションを供給。
ベトナムのビンズオン省では、単に住宅を供給するだけではなく、100年の事業経験を持つ日本の多摩田園都市のノウハウを生かし、安全安心で暮らしやすい街づくりを進めている。商業施設や路線バス事業も展開することで、公共交通一体型の街づくりを行っている。
東急不動産 インドネシアで「BRANZ」ブランド展開
東急不動産は、インドネシアのバンテン州タンゲランで、「BRANZ(ブランズ) BSD藍」の建設工事を進めている。3期に分けて建設を進め、合計3,000戸を供給する。2015年に着工した第1期工事の3棟(計1,256戸)は、年内に引き渡し予定。
BRANZは、同社が日本全国で展開するマンションのブランド。日系デベロッパーが国内ブランドを海外で展開する初めての取り組みだ。ジャカルタ南部のシマトゥパン地区では16年から「BRANZ シマトゥパン」(2棟・計381戸)の建設を進めており、年内に完工を予定。
インドネシアでは40年以上にわたって事業を展開しており、長年の経験とネットワークを生かし、デベロッパーとして単独で用地買収から開発・販売を行い、竣工後の建物管理もグループ内で行えることを強みとする。