【アジアインタビュー】UDS代表取締役会長 梶原文生
「MUJI HOTEL BEIJINGを文化発信の場に」
中国
――梶原会長は1992年にUDSの前身である都市デザインシステムを設立。コーポラティブハウス事業をいち早く手掛けたほか、ホテル運営にも参入するなど事業拡大を続けていらっしゃいます。2013年に北京で現地法人の誉都思を立ち上げた経緯は?
もともと人口推移のデータを見るのが好きで、データ分析して経営戦略を練るということを昔からやっていました。弊社はホテル運営と企画設計の両方を手掛けていますが、設計業の立場として、日本の総人口1億2,660万人に対応する建築物はすでにもうでき上がっているのに、人口減少するこの先、新しい建築物が本当に必要なのかと疑問視していたんです。新築が減って行くというビジネス的な観点と、環境保全という意味で、古い建物を残して使っていくべきと考え、早い段階でリノベーション事業を始めました。今回、話に出ました「CLASKA」も古いホテルのリノベーションで、「ホテル カンラ 京都」は教育施設の校舎のコンバージョンです。
ただ、日本の人口減少の中での組織成長を考えると、やはり海外進出もしなければならないと考えました。私は需要と供給のバランスを常に意識しているのですが、日本は建築家の供給がとても多い国。建築の需要が減っていくのに、今も大学の建築学科が増えていて、需給バランスが崩れてきている。需要がたくさんあるのに建築家が少ない国はどこかと見てみたところ、挙がったのが中国やベトナムなどでした。06年くらいから事業を始め、手ごたえを感じたので、11年に家族で北京に移住し、13年に現地法人を設立しました。
中国は、3,000年、4,000年の中で常に経済的、文化的にトップを走り続けた国であり、文化性を重んじるDNAがあると感じます。ただ、文化大革命の影響などで文化の教育が一時寸断された時代があるので、建築の教育された人が足りておらず、大きなマーケットとの間に需給のミスマッチが起きていました。そういった意味でチャンスが多い反面、やはり手ごわい国ですので、単身赴任ではなく、腰をすえてやろうと家族を引き連れて移住をしました。最初は北京で2年間暮らし、現地法人を立ち上げ、次は上海に5年ほど滞在し、そこでもチームを作りました。現在、北京、上海合わせて設計チームのスタッフは40人ほど。ある程度、現地の経営者に任せられるようになったので、今春に日本に戻りました。
13億人もいればいろんな方がいらっしゃるし、中国でのビジネスは手ごわい面があるのは事実。けれども、とてもいい国ですし、まだまだ伸びる。私たちの現地法人もまだまだ伸びると思います。
――中国の好きなところは?
中国の方は「こういうことを将来やりたいんだ」と大きな絵(ビジョン)を描く方が多いんです。それに対し、「だったら手伝おう」という人たちも多い。大企業でも、政府でもそう。日本だと「派手なことはできないから、このくらいでうまく調整して」という感じなのとは対照的ですね。クリエイターとして楽しいしやりがいがあります。
――中国進出を考える同業他社にアドバイスをするなら?
中国は世界最大の成長マーケットで、ビジネスチャンスの宝庫というのが世界の見方。それに対し、日本人の中には歴史的な背景などで中国に対してうがった見方をする方がいたり、一部新聞は「中国の経済失速」と報じたりしていますが、日本の経済成長率が1%なのに、6.5%の国を失速とは言えないと思います。
ただ、競争が厳しく手ごわいのは事実で、生半可な気持ちで行ってもうまくいかないでしょう。私たちが今のところ順調なのは、時間をかけて現地のスタッフを育て、彼ら・彼女らが中心となって経営できる環境を作っているからだと思います。言語の問題があるので、原則は日本に留学していた中国人になるのですが、新卒者を採用して、一緒に肩を組んで行くぞ、という意識でスタッフを育てています。実際、中国にいた7年間、私は経営者というより、後継者となる経営者を育てることに注力しました。「私はこう思うが、判断は自分たちでしなさい」というスタンスで、横から見守っていました。
駐在員の赴任期間が3年程度という日系企業は少なくないですが、スタッフを育てるのが難しいでしょう。成功する日系企業は、責任者が現地に長くいらっしゃる企業が多いと思います。中国人は優秀な人が多く、勤勉で上昇志向が強いので育てがいがありました。私自身も経営を教えていて楽しかったです。
――UDSの今後の海外展開は?
韓国でも複数プロジェクトが進んでおりますし、米国やスリランカなどでも新しいプロジェクトができないかと取り組んでいます。
――改めて、マロニエゲート銀座2(旧プランタン銀座)向かいの読売新聞東京本社所有跡地に19年春に開業予定のMUJI HOTELについて
店舗が地下1階から6階の一部まで入り、6階の一部から10階までがホテルです。店舗とホテルの融合を課題にしていて、MUJI HOTEL BEIJINGで実現できたことを、より一層進めていく形になると思います。本拠地東京の、しかも銀座の真ん中ということでより気合も入り、いろいろなアイデアが出てきていて、今までにない面白いホテルになると思います。
- DATA
- MUJI HOTEL BEIJING
- 中国北京市西城区煤市街 廊房头条21号院2号楼
- 公式サイト https://hotel.muji.com/ja/
- 地上4階建で、2階と3階が客室フロア。全6タイプ42室。宿泊料金は1泊550~3,000元(約9,000~5万円)。予約は公式サイトのみで可能