【アジアの穴場】
ウダイプール(インド)
マハラジャの豪奢な生活が垣間見られる湖の街
インド
ウダイプールのファテサガール湖から眺める夕日
インド北部に「ゴールデン・トライアングル(黄金の三角地帯)」と呼ばれる3つの世界的な観光都市がある。首都デリー、世界遺産「タージマハル」で有名なアグラ、街並みの色から「ピンクシティー」の異名を持つジャイプールだ。
だが、一度は訪れてみたいインド北部の魅力的な街は、これら3都市に限らない。その一つがラジャスタン州のウダイプールだ。ウダイプールは、デリーの南西約650キロメートルに位置し、ヒンズー教を信奉していたメーワール王国のウダイ・シン2世によって16世紀に築かれた。「レイクシティー(湖の街)」とも呼ばれる。川をせき止めて作ったピチョーラ湖とファテサガール湖に沿うように街が築かれ、湖にはかつての離宮が浮かぶように建っている。
夏季の最高気温が摂氏50度に達するラジャスタン州にあって、比較的しのぎやすく、古都らしい落ち着きのある街だ。
美しい湖と旧市街を一望
最大の見どころは、ピチョーラ湖のほとりに建つ宮殿シティーパレス。テラスからは湖と旧市街を一望できる。訪れたのは1月下旬だったが、湖畔から渡ってくるさわやかな風が心地良かった。
白亜の宮殿内には、金で装飾された「黄金の間」や、かつてのマハラジャ(国王)が使用していた輿(こし)、装飾品などが展示され、王国の権勢をしのばせる。一般公開されているのは宮殿の一部で、現在も王族の居宅として使用されている。
シティーパレスのメインゲート前の通りは、歩行者天国となっており、土産物店やカフェなどが軒を並べる。広大なシティーパレスを見学した後は、通りに面したカフェで道行くさまざまな国籍の人を眺めながらのんびりと時を過ごすのもいいだろう。
悲運の歴史に彩られたチットールガル砦
ウダイプールを訪れたら足を延ばしてみたいのが、車で2時間ほどの距離にある「チットールガル砦」だ。広さは約2.8平方キロメートルにおよびアジア最大の巨城とされる。
チットールガルは、9世紀にメーワール王国の首都に定められたが、イスラム勢力からたびたび攻撃を受けた。14世紀には同国の絶世の美女パドミニ王妃をめぐって、ハルジー朝のアラウディン王から激しい攻撃を受けたとされる。16世紀半ばにムガル帝国のアクバル帝によって攻められ、砦は廃墟と化した。陥落が決定的となった時、宮廷の女性の多くが、敵の凌辱から逃れるため、焼身自殺した。女性たちは貞淑の鏡として今もヒンズー教徒に神聖視されている。
山上にある砦には、かつての宮殿跡や豊富な水をたたえた貯水施設などが残り、当時の繁栄ぶりを思わせる。一方で、無残に破壊されたヒンズー寺院が戦いの激しさを伝えている。
砦を案内してくれたインド人ドライバーは、敬虔(けいけん)なイスラム教徒だったが、チットールガル砦を襲った悲劇には同情的だった。
【アクセス】
- 空路はデリー空港から1時間25分、ムンバイから1時間30分。ウダイプールに最も近いマハラナ・プラタップ空港から市街地までは車で30分程度かかる。