【アジアの穴場】
バシア・グラフィック・ブックス
(マレーシア)
オーナーの目利きが光る、レア本充実の書店
マレーシア
取り扱い書籍は建築関連が40%、グラフィック関連が30%、ファッション・商品デザイン・インテリア関連が30%。同店はオリジナル書籍も製作しており、これまでに50冊ほど出版
マレーシアの首都クアラルンプールのシンボルとしておなじみになった超高層ビル、ペトロナスツインタワー。そのはす向かいにある商業施設「アベニューK」は、飲食店が充実していることで人気を博す。ランチタイムともなると、周辺企業のビジネスマンや観光客で賑わいを見せるが、お腹を満たした後、ふらりと寄りたいのが書店「バシア・グラフィック・ブックス」だ。
創業は1995年のシンガポール。書店や画材店が集まる昔ながらのアーケード「ブラスバサー・コンプレックス」内に本店を構えている。建築関係やグラフィックの専門書を中心に、デザイン関連書やファッション雑誌なども充実。オーナー自らがブックフェアなどで買い付けした独自のセレクションが店の売りで、「大型書店にないレア本も見つかる」と指折りの人気店になった。
その後、マレーシア、香港、タイ、インドネシアと海外にも店舗を展開し、アベニューK店は15年1月にオープンした。店内はさほど大きくはないが、凛としたポリシーが感じられる品揃えはシンガポール本店と同様。欧米、日本、中国など世界各地から取り寄せられたインポート品を中心に、8,000タイトルを超える書籍が棚を美しく彩っている。
「建築家やインテリアデザイナー、建築を学ぶ学生などが主な客層。シンポジウムや博覧会などで情報交換する中で、口コミで知って来店するお客さんが多いですね」とは同店アシスタントのモハマド・ハジャさん。
不動産投資が好調で、建築ラッシュのマレーシア。関連書籍の売り上げも好調かと思いきや、なかなか厳しいのが現状という。店舗のほうもマレーシア国内で展開していた3カ所のうち、2カ所はすでに閉店。他国でも閉店が相次ぎ、残すはシンガポール本店とアベニューK店のみとなってしまった。
「そもそも印刷媒体が売れにくくなっている。ここ数年は原油安が影響して、マレーシアは産出国として不景気になっていますし。その流れで消費が鈍っていることも大きい」(ハジャさん)
一方、世界のトレンドとしてはリアル書店の再評価が始まっている。「バシア・グラフィック・ブックス」もこの3月に同モールの階下に移転し、面積を広げて店舗をリニューアルさせる。ハジャさんは「売り込みを強化したい」と最後に笑顔を見せてくれた。
- LRT KLCC駅直結の「アベニューK」内。156 Jalan Ampang,50450 Kuala Lumpur。営業時間10:00~22:00