【アジアに行くならこれを読め!】
『「コト消費」の嘘』
本書に登場する台湾の「誠品書店(エリート・ブックストア)」。創業者の「台湾に新たな文化・クリエイティブ産業が生まれ続けるようバックアップする」との信念の下に誕生し、運営会社は今では書店にとどまらず、劇場や映画館、ホテルなど多角経営を進めている。なぜこんなにも繁盛しているのか。
台北に住んでいたころ、24時間営業の誠品書店にはよく通った。眠れない真夜中には若者を中心とする客が多く、床に座り込んだり、踏み台に腰掛けたりして思い思いに本を読んでいた。そして、よく売れていた。やはり企業の信念が支持されているのだろう。
ポリシーを掲げることが重要と著者は説く。ホームページに申し訳程度に書くのではなく、店の入り口の目立つ場所に、客にはっきりと分かるように。こうすることで企業、店にある種の人格=キャラが生まれ、物語の主人公になる資格を得るという。誠品書店のキャラは「台湾の文化・クリエイティブシーンの支援者」というところか。
巷間(こうかん)言われる「体験型消費」だけをコト消費とするのではなく、コト体験することでモノを買いたくなる、さらにこのコトとモノを結び付ける物語を編む必要がある、と著者。どう編むのか。誠品書店をはじめとする多数の事例を挙げ説明されているのでぜひご一読を。
『「コト消費」の嘘』
- 川上徹也 KADOKAWA
- 2017年11月発行 800円+税
キーワードは、ズバリ、「物語(ストーリー)」です。(本書より)
目次 のぞき見- ・なぜ「コト消費」は流行語になったのか?
- ・コトとモノをつなげる台湾のデパート
- ・「お客様は常に正しい」は本当に正しいのか?
- ・「お客様はいつも正しいわけではない」は本当か?
- ・「アジアのかけ橋」という物語
川上徹也(かわかみ・てつや)
コピーライター。湘南ストーリーブランディング研究所代表。経営理念や企業スローガンなど会社の旗印になる「川上コピー」を得意とする。『こだわりバカ』(2016年)、『1行バカ売れ』(15年)、『物を売るバカ』(14年)など著書多数。
『消費大陸アジア──巨大市場を読みとく』
ホコリや排ガスにさらされ、ハエがたかっている食材や調理具。汚れたバケツのため水で洗われる食器─。アジア途上国の屋台は、日本人の目には不衛生に映ってしまうことが多い。しかし、その国の人々にとっての屋台は日本人が思う以上に合理的で、「安全安心」な存在なのである。
このような日本人とアジア(外国)人との捉え方の違いを単純に「文化の違い」と決めつけてしまうのは、あまりにも短絡的だ。国際流通論とアジア市場論を専門とする筆者によると、アジアにはアジアの市場の「文脈」がある。そして、その文脈を探る手掛かりには、気候や民族・人口、宗教、市場分布、歴史的経緯、政策、所得といったさまざまな要因が含まれる。もちろん、アジアでも中国とタイで「市場の文脈」は異なる。また同じ国や地域でも、昨年と今年でその文脈は全く違うものになるかもしれない。
著者は、ポカリスエットやキシリトールガム、吉野家など、具体的な商品や企業の興味深い事例を多数挙げながら、独自の理論に基づいた消費市場の「解読法」を展開していく。アジア市場を読むヒントを得たければ、まず本書を読もう。
『消費大陸アジア──巨大市場を読みとく』
- 川端基夫 筑摩書房
- 2017年9月発行 780円+税
しかし、このような日本的な意味づけがアジア市場の論理を見えなくしているのである。(本書より)
目次 のぞき見- ・インドネシアでポカリスエットを売る
- ・牛丼の価値を伝える適応化策
- ・グローバル化する日本発の豚骨味
- ・なぜ日本の薬を「買わねばならない」と思うのか
- ・広島焼の「安全安心」
川端基夫(かわばた・もとお)
1956年生まれ。関西学院大学商学部教授。専門は国際流通論、アジア市場論、企業立地論。大阪市立大学大学院修了。博士(経済学)。アジア・太平洋賞特別賞、日本商業学会賞優秀賞など受賞多数。著書に『アジア市場幻想論』『アジア市場のコンテキスト(東南アジア編、東アジア編)』『アジア市場を拓く』『外食国際化のダイナミズム』など。