【アジアの穴場】
沙面(中国・広東省広州市)
午後の日差しにきらめく洋館
異国情緒漂う小さな島
日本から初めて広東省の広州市を訪れた人がよく口にするのは「思ったより都会でびっくりした」。広州の人口は1,400万を超え東京よりも多い。中心部には高層ビルが立ち並び、目抜き通りの天河路は毎日多くの人たちでごった返している。だが、ほんの30分ほど車で西に向かうと、中心部の喧騒(けんそう)がうそのような、静かで異国情緒が漂う島の「沙面」を訪れることができる。
沙面は珠江の川沿いにある小さな島だ。大きさは東西900メートル、南北300メートルほどで、30分も歩けば島を一周できる。20世紀の前半まで外国人の居住区だったため多くの洋館が立ち並ぶ。旧ソ連の領事館といった歴史的な建築物・建造物が当時の姿のまま残っており、まるで100年前の世界にタイムスリップしたかのような感覚になる。緑も多い。大きなガジュマルに午後の陽光が優しく降り注ぐ。その中に身を置けば自然と心が和んでいく。広東省珠海市出身のOL、林さん(32)も沙面が大好きで、「広州に来たら必ずここに立ち寄る」と笑顔で話す。
異国情緒を満喫できる沙面は広州随一のブライダル写真の撮影スポットなのだ。メインストリートの沙面大街を歩くと、ここにも一組、あそこにも一組と、結婚前のカップルの撮影現場に必ずと言っていいほど出くわす。若い男性が緊張した面持ちで蝶ネクタイを締めている横で、純白のウエディングドレスに身を包んだ女性が幸せそうな様子ではにかんでいる。そんな2人がレンガ造りの歴史ある洋館をバックに記念撮影する姿を見ていると、こちらまで幸せな気分になってくる。沙面を訪れた際は洋館を背にポーズを決めて記念撮影をしてみてはいかが。ここでの撮影は何もカップルだけの特権というわけではないのだから。
水産市場でグルメを堪能
沙面のすぐ隣には「広州の築地」とでも言うべき水産市場があり、その日水揚げされた魚や貝などが水槽に入ったままの状態で売られている。買った海鮮類は持ち帰ることもできるが、すぐそばにある飲食店に持ち込み、その場で料理してもらうのがお勧めだ。店には調理代だけを払えばいい。調理代は料理によって異なるが、やや高めの店でも材料500グラム当たり15元(約260円)ほど。友だちと連れだって行けば、材料代込みで1人3,000円ほどで新鮮なシャコやハタ、カニなどを堪能できる。地元民の一推しはマテ貝で、ピーマンと一緒に炒める。食感はイカに似ているだろうか。新鮮な海の幸をぜひ一度お試しあれ。(文・写真 川杉宏行)
【アクセス】
- 広州の中心部にある広州東駅から地下鉄1号線に乗ると、20分ほどで黄沙駅に到着。F出口を出たところにある歩道橋を渡れば、目の前に小さな橋が現われる。それを渡ると沙面に到着だ。