【アジアの穴場】
北埔(台湾)
台北から日帰りで体験する客家の文化
観音菩薩を祭る北埔慈天宮。この一帯が「北埔老街」として栄えている
ビーフンの産地や半導体産業の集積地として知られる、台湾の新竹。台湾高速鉄道(新幹線)の駅からさらにバスで約40分足を延ばすと、山あいの町、北埔(ベイプー)に到着する。ここでは、客家(ハッカ)という民族の文化に触れることができる。
客家は、中国大陸では主に華南の一部地域に居住して独自の客家語を話す、漢民族の一つとされる。ユダヤ人などとともに世界の四大移民集団の一つとしても知られ、中国大陸や台湾以外に住む華僑・華人の3分の1を占めるという。固有の国や自治体などは持たないが、独自の文化を大切にすることでも知られる。
台湾の全人口に占める客家の比率は約18%。台湾の民族グループで最も多い中国・福建省南部出身のホーロー人は、16世紀後半以降、台湾海峡に面する台湾西部の平野部から北部にかけて定住し、集落を作っていったが、これに遅れてやって来た客家は、山間部や南部を開拓した。このことから、北西部・新竹県の山あいや、南部の屏東県などには、客家の人口比率が高い町が点在する。北埔もそうした地域の一つで、台北から最も近い客家の里と言えるだろう。
北埔の見どころは「北埔老街」と呼ばれる一帯だ。30分も歩けば一通り回ることができる小さなエリアだが、歴史的な建造物や客家料理を出す食堂などが集まり、見どころは多い。
町並みは一見、台湾のほかの田舎の町と変わらないが、「客家菜」(客家料理)の看板を掲げた飲食店があちこちに建っている。きしめんのような平たい麺「板条」や豚の大腸の炒め物、タケノコの炒め物、豚肉と漬け菜の蒸し物など、一般的な台湾料理とは違う味を存分に楽しめる。白ゴマや黒ゴマ、カボチャの種、落花生などを鉢ですり合わせ、湯を注いで飲む「擂茶(レイチャ)」は穀物の豊かな香りが独特で、お土産としても人気が高い。
かつて北埔に行くには、新竹から複数のローカルバスを乗り継ぐ必要があったが、台湾高速鉄道の新竹駅から観光用のシャトルバスが運行してからは簡単に行けるようになった。新竹と合わせて、台北からの日帰りの旅にお勧めだ。(文・写真=大石秋太郎)
【アクセス】
- 台湾高速鉄道の新竹駅からシャトルバス「台湾好行・獅山線」の獅山行きに乗って「北埔老街」で下車。所要約40分、58台湾元(約220円)。バスは、新竹駅からの始発が8時19分で復路の最終便が17時17分。バスは往路復路ともに1日8本の運行。(バスの料金や便数は2017年10月現在)