【アジア取材ノート】
ロボット、ロボット、ロボット
台湾勢に動き
台湾
鉄腕アトムが作中で誕生したのは2003年。それから十数年たった今も作品で描かれるようなロボット世界は実現していないが、未来を感じさせるロボットは登場し始めている。台湾企業を中心に動きを追った。
子どもの相手をするロボット「萌ボーボー」
メモリーモジュール大手、台湾のエーデータ(威剛科技)はAI(人工知能)を搭載した家庭用ロボットを8月から出荷する。ブランド名「AROBOT」の旗艦機種「萌ボーボー(ボー=口へんに波)」は高さ54センチメートル、重量5キログラムで、円筒形の液晶ディスプレーを搭載した二頭身のデザインだ。3つの車輪を持ち◇スマートフォンを通じた遠隔操作◇幼児の遊び補助◇絵本の読み聞かせやダンスなどのプログラム収録◇撮影・録画◇目標地点までの自走◇クラウドへのデータ蓄積◇センサーによる環境感知◇音声認識──などの特徴がある。内蔵電池は5,200ミリアンペア(mAh)で、約4時間のフル充電で8時間の連続駆動が可能だ。
6月から購入予約を受け付けた。価格は9,000台湾元(約3万3,500円)、同社は「スマホの値段でロボットが買える時代の幕開け」とうたう。
もう一つの機種「萌ブーブー(ブー=口へんに布)」は8月から予約を受け付け、9〜10月に出荷する予定だ。高さ25.5センチ、重量1.2キロで、萌ボーボーを一回り小さくした。◇遠隔操作◇撮影・録画◇モバイルバッテリー◇音声認識──などの機能を備え、幼児の異変をスマホ経由で保護者に伝える「見守り」で役立つという。電池は1万400mAhでフル充電時間は約3時間。
エーデータの陳立白董事長(会長)は「これからのIT産業はロボットが成長エンジンの一つとなり、電気自動車(EV)やドローン、LEDスマート照明などと融合した大規模な産業になる」と説明。2020年までにより進化した家庭用ロボットを投入していく考えを示した。
他企業も続々投入
パソコン(PC)世界大手のASUS(華碩電脳)はAIを搭載する家庭向けロボット「Zenbo(ゼンボ)」を9月にも中国市場に投入する予定だ。来年には米国でも発売する。施崇棠董事長は当面の販売目標は1万台とした。AIを使う音声認識システム技術では、中国のインターネットサービス大手のテンセント(騰訊)と協業する。
スタートアップのロベルフ(麗暘科技)は自社で開発した「Robelf(ロベルフ)」を年明けに米国で発売する計画だ。価格は400〜500米ドル(約4万5,000~5万6,000円)の予定。16年に購入型クラウドファンディングサイト世界大手の米インディゴーゴーで約14万7,000米ドルの資金調達に成功し、製品化を実現していた。
顔認識による人物識別機能やスマホと連動した各種コミュニケーションプログラムは既存の家庭用ロボットにもあるが、電池容量が20%以下になると充電器へ自走して充電する機能や、前面と背面の2カ所に搭載されたカメラによる高視認性が売りだ。
IT機器・家電大手のBenQ(明基電通)は配膳ロボット「DiBot(ディーボット)」と医療機関内の薬剤や検体を自律搬送するロボット「MiBot(ミーボット)」を開発した。ディーボットは飲食店内のディスプレーやタブレット端末、ビッグデータとクラウド、店員が装着するウエアラブル端末などと連動し、注文内容を共有したり、店員に代わって料理を配膳したりできる。2〜3人分の料理を一度に配送でき、フロアスタッフの現行比2〜5割減に貢献できるという。
レストランだけでなく、介護士が不足している高齢者施設などでの需要を見込む。まずは台湾、中国、タイ、マレーシアに投入する。
また、台湾・彰化県の病院に2基が導入されたミーボットは、最大積載量150キログラム。BenQは「消毒済み手術器具を安全に搬送するだけでなく、使用済みの器具の回収における二次感染を防止できる。既存のロボットは回収効率の悪さのためになかなか普及しないが、ミーボットはAIによる顔認識機能で搬送品を送る側、受ける側の誤認をなくし、効率化が図れる」と説明している。