【アジアに行くならこれを読め!】
『僕が殺した人と僕を殺した人』
三日月のような形をした赤い木片「ポエ」を投げ、神様に伺いを立てる――。台湾の廟でよく見かける光景だが、人々はどのような思いを胸に秘め、ポエを熱心に投げるのだろうか。今回紹介するこの青春ミステリー小説では、13歳の少年たちがポエによって絆を強め、とある恐ろしい計画について関帝に伺いを立てるシーンが登場する。
1984年、台北。兄を亡くしたユン、牛肉麺屋のアガン、けんかっぱやく正義感の強いジェイの13歳の少年3人は友情を育み、計画を決行しようとする。それから約30年後、国際弁護士である「わたし」は、アメリカで連続殺人事件を起こした、少年時代の友人を訪れに行く。友人はなぜ猟奇的な事件を起こしたのか。ノスタルジー豊かに、少年たちの心の機微が繊細に描かれる。
著者の東山彰良氏は台湾の出身で、本書の主な登場人物は2015年に直木賞を受賞した小説『流』と同様に外省人(第二次世界大戦後に中国大陸から台湾に移り住んできた人々)の子どもたちだ。「ポエ占い」といった台湾の風俗や、怪しい雰囲気に満ちた華西街、今は既に取り壊されている商業ビル「中華商城」など街の様子がリアルで、これらの情景描写も楽しめる。
『僕が殺した人と僕を殺した人』
東山彰良 文藝春秋
2017年5月発行 1,600円+税
龍山寺の線香の煙が西方浄土へ立ちのぼっていくのだとすれば、蛇たちの生臭さは地獄から立ちのぼってくるかのようだった。(本書より)
東山彰良(ひがしやま・あきら)
東山彰良氏は、NNA台湾版のインタビューにも登場しました
『現代中国経営者列伝』
中国の急速な経済成長とはメディアでもしょっちゅう取り上げられるテーマだ。あまりにもよく見かけるフレーズであり、特に目新しさも感じられない。そこで少し切り口を変え、中国の人物伝を通じて「成長は楽しい」ものだということを、あらためて感じさせてくれるのが本書だ。
著者によると、ここ30年の中国の経済成長は「明治維新と高度経済が一気にやってきた」状態だった。国家財産の払い下げや政府主導のプロジェクトで次々と新たな企業が登場してくる「明治維新モード」と、文化大革命の失敗による焼け野原から再生する中、ハングリー精神に富んだ民間の企業家たちが頭角を現していく「高度経済成長モード」。日本では2回に分かれていた高成長が同時に到来したのだ。本書は、そんな「お祭り騒ぎの時代」を破天荒に生き、時代の追い風に乗って企業を大きく成長させた中国の経営者8人の姿を伝える。
コンピューターの輸入代行業者を世界一のパソコンメーカーに発展させたレノボの柳伝志。英文科卒でITに関する知識はなかったが、最強のコミュニケーション能力で強敵を打ち倒し、電子商取引(EC)最大手のアリババを創業した馬雲――。この企業の経営者にこんなストーリーがあったのか。中国企業のニュースを読むのがもっと面白くなるかもしれない。
『現代中国経営者列伝』
高口康太 著 星海社
2017年4月発行 900円+税
1980年代に頭角をあらわした経営者たちは矛盾をそのまま受け入れ、ジャンプ台とすることで成長を遂げていくのである。(本書より)
目次 のぞき見- 「下海」から世界のPCメーカーへ 柳傳志(レノボ)
- ─ハイテク企業の仮面を被った販売の鬼
- 米国が恐れる異色のイノベーション企業 任正非(ファーウェイ)
- ―辺境での極貧生活
- 世界一カオスなECは“安心”から生まれた 馬雲(アリババ)
- ―勉強嫌いのガキ大将
- ―三度目の正直、三度目の起業
高口康太(たかぐち・こうた)
フリージャーナリスト、翻訳家。1976年、千葉県生まれ。千葉大学大学院人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。2度の中国留学経験を持ち、中国をフィールドの中心に『週刊東洋経済』『Wedge』などの雑誌・Webメディアに、政治・経済・社会・文化など幅広い分野で寄稿している。中国の現実から感じた自らの驚きを、そのまま読者に伝えることを目指している。