タブレットの活用とベトナム語対応で
新工場の早期立ち上げを実現
海外拠点における適正かつ効率的な生産・販売、会計管理をサポートしている東洋ビジネスエンジニアリング(以下B-EN-G)。同社が開発した生産管理システム「mcframe」は、日本と海外、特に東南アジアを中心に500社2,000サイト以上の導入実績を誇る。システムをベトナムで稼働させている日系企業に業務への効果を聞いた。
高収益化はmcframeで
金型部品大手のパンチ工業は中期経営計画「バリュークリエーション(VC)2020」の中で重点経営課題として、高収益事業の推進や販売5極体制の確立などを進めている。売り上げの中心となるのはピンやパンチと呼ばれる金型部品。全社の売り上げ、収益は順調に伸びてシェアは拡大中だ。
VC2020 で掲げた「高収益化」はベトナムのグループ工場、パンチ・インダストリー・マニュファクチャリング・ベトナム(以下、PIMV)の立ち上げと、同時にmcframe を導入したことに深く関わっている。同社は日本や中国、マレーシアに工場を持っている。中国にある6工場のうち、日本で使う半製品「ブランク材」をメインに製造している工場があり、この製造原価を下げるためベトナムで作って日本に出荷することで、高収益化につなげるのが狙いだ。
4つの目的
PIMVは2016年10月に立ち上げた。稼働当初からmcframeを導入したのは(1)工場での手配業務の簡便化と製造実績をリアルタイムで把握する(2)原価管理機能を使い、月次で製造原価を把握する(3)タブレット端末(iPad)を利用して電子図面を確認する(4)着完(材料加工から製造完了までの全工程)をiPadでリアルタイムに、簡単に入力できるようにする─というのが目的だ。
システム導入のプロジェクトが始まったのが16年2月、正式稼働が同10月と短期間だが、カスタマイズを施しても期限と予算は十分に対応できると判断した。
桂敏昭情報システム室担当課長によると、特に「原価計算機能は非常に秀逸でぜひ使いたかった。社内で強く推した」という。直観的に操作でき、「恐らくどの日本のメーカーも膝を打つであろう、原価計算の英知の集大成」と評価する。
ベトナム語や独自仕様に対応
システムはできるだけカスタマイズせず、標準の機能を使う方針だったが、一つだけ大きく変えた点がある。ベトナム語対応だ。もともとパッケージには用意されていなかったが、B-EN-Gが対応した。現地スタッフは英語が得意ではないので、「ベトナム語に対応できなかったらシステム導入は難しかったかもしれない」と桂担当課長。
また、ベトナムでは製品出荷の度にインボイスやパッキングリスト、売買契約書などを決まったフォームで提出する必要があり、フォームに載せなければならない項目は厳格に定められている。こういうベトナム独自仕様にも対応し出力できるようにした。
タブレットのメリット
mcframeのシステム稼働から約7カ月。iPadで図面を確認することはすでに通常の業務になっている。簡単に図面を見ることができ、パソコンを用意する必要もない。これのメリットは大きい。iPadは触っているだけで楽しいし、iPadを使ったトレーニングを従業員は積極的に取り組んだ。端末を通じて業務に興味を持ってもらえたことは重要だ。
端末は35台あり、1人1台で使っている。今は3直なので24時間フル稼働だ。iPadがなければ代わりにPCを用意しなければならず、インフラ上の負荷は小さくない。iPadを導入できたメリットは大きい。
クラウド型のMDM(モバイル端末管理)システムを導入し、日本にいても端末の状態が分かる。今のところ端末を紛失したり破損したりすることもない。
スムーズな中間品管理
今では受注の取り込みから出荷までの流れはだいぶこなれてきた。特に中間品管理はスムーズになった(菊地弘将情報システム室主任)。製品の材料は長さで管理したり、重量で管理したり、いろいろな管理方法があるが、今回導入したmcframeのシステムでは、購入する時は重量で発注し、現場では長さで管理する、ということが容易にできるので、棚卸しは日本と比べてもスムーズという
菊地主任によると、製品がたくさんあるので、システム導入後のマスターメンテナンスは大変だったようだ。当初は数千あるアイテムを、ベトナムの製造の現場に合うようにいかに登録するかがポイントとなった。
また、現場の作業者はシステムに関するノウハウがないところからスタートする。mcframeの経験がない人でも操作できるようにすることを心掛けた。現地スタッフのカ・グエンさんはこれまでインフラ中心の業務に携わってきて、日本語はできない。ベトナム語と英語でmcframeのトレーニングに参加し、導入成功に貢献している。
これまでは「フェーズ1」。来年から新しい製造にチャレンジする「フェーズ2」へ移行する。mcframeを使ったシステムも新しい段階に合わせて調整していく。- 会社名
- :パンチ工業株式会社
- 本社所在地
- :東京都品川区
- 設立
- :1975年3月
- 従業員数
- :連結3,959名(2017年3月末現在)
- URL
- :https://www.punch.co.jp/
- 事業内容
- :金型用部品の製造・販売
現地コンサルタントが語る導入のポイント
「業務と実務を理解する部隊」
NRIシンガポール(野村総合研究所グループ)
ステラ・ティエン氏
赴任予定者と要件詰める
今回の導入成功のポイントはパンチ工業様側に業務と実務を理解している部隊がいたことですね。システムを導入する工場はベトナムですが、要件定義は日本で行いました。まだ工場がベトナムにできていない段階で、パンチ工業情報システム室様や赴任予定者と要件を詰めながら、必要になる事柄を予想してシステムを作っていきました。当初、このやり方には不安もあったのですが、桂課長や菊地主任など、それまで工場から要件を吸い上げて既存のプログラムを使わずに、いちからで生産システムを作り上げてきた人たちが一緒だったので成功しました。
私はシンガポールに駐在していて、これまでフィリピンやインドネシア、中国などいろいろな国でシステムの導入実績があります。その経験を踏まえて言うと、mcframeはやはり「日本の製品」だと思います。日本の企業や工場が必要とする細かい部分がとても考えられている。海外のベンダーの製品ならこうはいかないと思います。海外の著名ベンダーの製品と比較してもコストパフォーマンスはとても高いですね。
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