NNAカンパサール

アジア経済を視る July, 2017, No.30

【メキシコに行くならこれを読め!】

『交渉のすごい国 カナダ・メキシコ・NZに学ぶ』

今回のメキシコでの取材では、いろいろな人に北米自由貿易協定(NAFTA)のことを聞いた。某州政府関係者は「メキシコはこれまで米国と幾度となく、さまざまな交渉を重ねてきた経験がある。交渉のプロ、グッドネゴシエーターぞろいだ。たくさんの国と自由貿易協定(FTA)を結んでいるが、全て交渉を経ての結果」。と話す。

本書はカナダ、メキシコ、ニュージーランドが米国との交渉をいかに行ってきたかを紹介している。メキシコの紙幅は多くはないものの、例えばNAFTAに関して、経済立て直しの必要に迫られた当時のサリナス大統領(1988~94年在任)が「外資誘致と避難資本還流」のために交渉を行ったと説明する。米国、カナダを含めた3カ国の交渉ではメキシコが最も譲歩したとされるが、それでも自動車産業や農業、エネルギー、「紛争審査・解決メカニズム」の分野では勝利したという。「そもそも『交渉が妥結できたこと自体』が、メキシコ大統領にとって『望むべき勝利』だった」。

さて、8月から始まる見込みのNAFTA再交渉。未来の書籍にはどのように書かれているだろうか。


『対米交渉のすごい国 カナダ・メキシコ・NZに学ぶ』

櫻田大造 光文社(楽天kobo電子書籍版)
2014年3月発行(底本は2009年) 778円(税込み)

NAFTAはメキシコの政治的主権を侵害しないだろうという「読み」も、メキシコ側政策決定者は抱いていた。(本書より)

<目次 のぞき見>
  • ・なぜ、カナダ、メキシコ、NZなのか?
  • ・ジレンマの中のメキシコ
  • ・サリナス・ギャンブル
  • ・妥協を重ねるメキシコ
  • ・メキシコも「対米操縦」に成功?

櫻田大造(さくらだ・だいぞう)

1961年長野県生まれ。トロント大学修士号取得後、日本長期信用銀行、徳島大学助教授、トロント大客員教授などを経て関西学院大学教授。国際関係論、比較外交政策が専門。他に『誰も知らなかった賢い国カナダ』(講談社)、『大学教員 採用・人事のカラクリ』(中央公論新社)など。

『メキシコ便利帳 創刊号』

メキシコに住む日本人の数は企業の進出に伴い増え続け、2016年には前年比増加率が20%に上った。メキシコ生活の「先輩」は多いとはいえ、太平洋を越えたはるか遠くの国でこれから実際に暮らすとなると不安はたくさん出てくるはずだ。現地を走っているタクシーの種類は? 家探しは? 日本語が通じる医者は?─。パソコンで検索を始めると、メキシコに行く準備をしているのかネットの海をさまよっているのか分からなくなってしまう。

そこでお薦めなのが本書で、北米に暮らす日本人のために生活のノウハウを伝える「便利帳シリーズ」から昨年創刊されたばかり。メキシコ料理や電話などの契約、現地で購入できるベビー用品といった生活情報からビジネス関連まで、現地生活に必要な幅広いノウハウが詰まっている。第1章ではメキシコ全体の生活・一般情報が、第2章以降ではメキシコ市、グアナフアト、ケレタロ、アグアスカリエンテス、グアダラハラと日本人の多い各都市の情報が体系的にまとめられている。

メキシコの在レオン日本国総領事館の鈴木康久総領事も、「かなり細かいところまで充実している」と太鼓判を押す。本書を読めばメキシコがより近くに感じること請け合いだ。


『メキシコ便利帳 創刊号』

Y’s Publishing
2016年10月発行 3,240円(税込み)

<目次 のぞき見>
  • ・基本的な食料品・調理器具の名前
  • ・インターネット・ケーブルテレビに加入する
  • ・企業の保険
  • ・メキシコで起業する
  • ・メキシコで生まれた子どもの各種手続き
  • ・ベビー用品・子ども用市販薬
  • (第1章 生活・一般情報より)

Y’s Publishing

本社は米ニューヨーク。駐在や留学で北米に住む日本人のために必要な情報を紹介する「便利帳」シリーズなどを発行。このほか、無料の新聞やオンライン学習塾、広告代理店などの事業を手掛ける。発行書籍に『ニューヨーク便利帳』『シカゴ・デトロイト便利帳』、帰国子女の教育を題材にしたフリーマガジン『帰国便利帳』など。

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