【アジアで発見 ロングセラー】
味王の「王子麺」
台湾版“ベビースター”
台湾
台湾人の誰もが親しみを感じる、野球帽姿の少年をあしらったレトロなデザイン。ゆでずにそのまま食べられる即席麺として台湾に初登場した「王子麺」は、40年以上の長きにわたって台湾人の生活に密着している。
おやつとして浸透
王子麺は1970年、調味料や即席麺を手掛ける台湾食品製造大手の味王(VE WONG、ヴィオン)が明星食品の技術協力を得て開発。フライ麺に粉末調味料の小袋が別添されており、麺を砕いて調味料をまぶし、スナック菓子のように食べるのが一般的だ。王子麺が登場するまでの即席麺は麺にあらかじめ味が付いており、バリエーションが乏しく、必ずゆでるか湯に浸して戻す必要があった。開封してそのまま食べられるだけでなく好みで味付け具合を変えられる王子麺は、その手軽さから大ヒット。多くの模倣商品を生んだ。
70年代当時の台湾は急激な人口増を受けて日用品が慢性的に不足しており、特に子供向け加工食品のバリエーションは極端に少なかった。王子麺は1袋2.5台湾元(当時)の値ごろ感と手軽さから、おやつとして広く受け入れられたこともヒットの一因だ。
製品名は、「味王が手塩にかけて育てた子供」の意味を込めて命名された。味王は73年から、当時5歳の子役スターだった王懐麟さんをCMキャラクターに据えて宣伝を強化し、知名度の向上を図る。ちなみに王懐麟さんは、教職にある母親の希望で数年後に芸能界から引退。最近になって北部・新竹市の医療機関に産婦人科医として勤務していることが報じられ、話題になった。
ライバル出現
王子麺の独壇場だった台湾の「そのまま食べられる即席麺」市場に78年、ライバルが登場。食品大手の統一企業(ユニプレジデント)が「科学麺」と「統一脆麺」を投入し、瞬く間に王子麺をしのぐ人気となった。統一企業はグループ会社がコンビニエンスストア台湾最大手の「セブン―イレブン」を展開しており、強力な販売チャンネルが武器だ。
科学麺の商品名は、77〜78年に台湾で放映され大ブームとなった日本のSFアニメーション「科学忍者隊ガッチャマン」に由来する。台湾電子商取引(EC)サイト台湾最大手「PCホームオンライン」が2016年に販売した即席麺の売上高1位は科学麺だった。
巻き返しを図る王子麺は02年、小袋に小分けした味付け麺「小王子麺」を発売。「キムチ」「サルサ」「海苔(のり)」「ココア」など多様な味を展開し、兄貴分の王子麺と両輪で再び若者の胃袋をつかんでいる。
煮込み料理やおでんのお供に
王子麺や科学麺は鍋料理のシメとして投入されることも多い。また昼食どきには、サラリーマンやOLが「滷味(ルーウェイ)」の屋台に並び、野菜とともに王子麺をオーダーする姿が多く見られる。滷味は店頭で好みの野菜や肉を選び、店員がしょうゆベースのタレで煮込む台湾式煮込み料理。煮込んだ具を王子麺で和えた汁なし麺はヘルシーで、女性の人気が高い。
コンビニの店内でおでんを注文し、スープに王子麺を割り入れるスタイルも好まれる食べ方。統一企業は、湯で戻しやすい専用の科学麺を開発し、おでんとセットで販売している。(文・写真=田中 淳)
【製品DATA】
- 名称 :王子麺
- 製造企業:味王股份有限公司
- ブランド:王子麺系列(王子麺シリーズ)
- 展開国 :「王子麺」台湾、中国 「小王子麺」台湾、中国、米国
- 店頭価格:10台湾元(約37円、80グラム入り)