【Aのある風景】
留学生が築いてきた日本とモンゴルの架け橋
モンゴル
4月上旬の週末、渋谷区の閑静な住宅地の中にある駐日モンゴル国大使館の一室で、3時間以上にわたる会議が開かれていた。集まったのは、在日モンゴル人留学生や彼らをサポートする日本人たちで40人ほど。年に1回開かれ、日本における最大級のモンゴル関連イベント「ハワリンバヤル」の準備のためだった。
ハワリンバヤルはモンゴル語で「春祭り」の意味。モンゴル人留学生の主催でほぼ毎年、ゴールデンウイークの期間に練馬区の光が丘公園(当初は中野区の複合施設内)で開かれている。17回目となる今年の開催日は5月3~4日の2日間だ。
モンゴルの伝統的な歌や踊り、衣装などを披露する舞台でのイベントが催されるほか、モンゴル料理や工芸品などを販売するブースが出店する。特に、民族衣装を着用できたり、日本人の名前をモンゴル文字で書いてもらえたりするブースが人気という。今年のハワリンバヤルのテーマは「遊牧文化に学ぶ自然との共生、明るい未来」で、これに合わせてモンゴルの遊牧文化が描かれる映画も放映する予定だ。
今年の出店数は、非営利団体の展示ブースなども合わせると60~70店。2002年に光が丘公園での開催が始まった当初に比べて規模は3倍ほどに拡大した。例年、モンゴル出身の大相撲力士も招待され、話題を呼んでいる。
今年のハワリンバヤルの実行委員は約50人。日本で学ぶ全てのモンゴル人学生が会員となる在日モンゴル留学生会から19人と、サポーターとしての日本人約30人が委員会を構成している。
今年は、国費留学で来日した一橋大学の4年生の女性、バトトルガ・ホンゴルズルさんが委員長を務める。笑顔が明るく柔和な雰囲気の彼女はハワリンバヤルについて「モンゴルの文化を日本に伝えるための催しですが、最近はモンゴルと日本が出会う架け橋になっています」と表現する。
昨年のハワリンバヤルのテーマは「モンゴル発展のカギ、子ども・教育・志」だった。これに合わせ、モンゴル相撲「ブフ」などで競い合う「ナーダム」(伝統競技が行われるモンゴルの祭典)が子ども向けに開催された。好評だったため今年も行われる予定だ。(写真は全てハワリンバヤル2017実行委員会提供)
日本人のサポーターによると、毎年の準備で最も大変なのは、公園を借りるための手続きなどを含めた行政への対応だ。昨年の実行委員で委員長を務めた留学生の男性、ゾリゴト・スガルさんは「実行委員になると、普通の留学生より学ぶことが多いです。特に人間関係ですね」と話す。ハワリンバヤルが開かれるのは年間で2日間だけだが、年間を通じた準備期間でモンゴル人留学生たちは学業やアルバイトの合間に、日本人のサポーターや行政、出店者たちともさまざまな調整を行っていくことになる。
ハワリンバヤルへの来場者の数は、3年ほど前まで3万~4万人だったが、昨年は約5万人(2日間)と認知度も高まってきた。今年は日本とモンゴルの国交樹立45周年で、在日モンゴル人留学生会の結成からも丸20年が経つ。「今年のハワリンバヤルは記念すべき年に当たります。先輩たちが築き上げたモンゴルと日本の友好関係を大事にして、私たちはもっとその関係を深化させようと努力をしています」(ホンゴルズルさん)