自動車編[1~3位]
3年ぶりのプラス、315万台に
2016年ASEAN新車販売NNA POWER ASIA 1月30日付
ASEAN
NNAが東南アジア諸国連合(ASEAN)主要6カ国の新車販売台数(速報値)をまとめたところ、2016年は前年比3.2%増の315万1,787台と、3年ぶりのプラスとなったことが分かった。今年もプラス成長が見込まれるものの、日本並みの500万台に到達するのはまだ先となりそうだ。
各国別の伸び率ではフィリピンが24.6%、ベトナムが30.3%、シンガポールが40.5%増と急成長を維持した。新車販売台数が首位のインドネシアは年後半から持ち直し、4.5%増の106万1,015台とプラスに転じた。ただ2位のタイと3位マレーシアのマイナスが響き、6カ国全体としては微増にとどまった。
タイは、12年に始まった「ファーストカー優遇政策(初めて新車を購入する人に対する減税策)」の需要先食いや14年のクーデターなどによる景気低迷に加え、16年10月の国王死去による自粛ムードが響き、4年連続のマイナスとなった。「16年が底」と複数の業界関係者からの声もあるが、V字回復は厳しそうだ。
ASEAN最大の下落率となったマレーシア。13.0%減の58万124台となり、同国が目指す20年の100万台販売の見通しは立たなくなった。マレーシア自動車協会(MAA)のアイシャ・アーマド会長は、今年は前年比1.7%増の59万台との見方を示す。保護主義の台頭による国際的な経済の不安定化に加え、世帯債務の増加を背景とした金融機関のローン引き締めが影を落とす。
500万台超え、ライドシェアが鍵
日本の販売は16年、3.8%減の497万258台と5年ぶりに500万台を割り込んだ。ASEANの販売が350万台を超えた13年、業界関係者の間では、日本並みの500万台となるのは数年後と言われ、各社も投資を拡大したが、その後ASEAN市場は冷え込んだ。
米系リサーチ・コンサルティング企業フロスト&サリバン(F&S)ジャパンによると2022年の日本の販売は429万2,421台まで落ち込む一方、ASEANは465万2,500台と急伸し逆転するという。
浜銀総合研究所の深尾三四郎主任研究員は「中国経済の鈍化が(ASEANの新車販売市場へ)マイナスに影響する。1年前の段階で500万台は2020年以降と予測していたが、その肌感覚は今も変わらない」と厳しい見通し。
一方で、ライドシェアと呼ばれる配車アプリの「ウーバー」「グラブ」の市場参入が拡大すれば、500万台規模への到達を早めることが考えられると話す。
深尾氏は、モータリゼーションの決定要因にスマートフォン普及率が加わるとみる。「1人当たり国内総生産(GDP)が低くても、格安で購入できるスマホさえ持てば、本来二輪車しか購入できない層でも、ライドシェアを収入源として自家用車を持つことができる。その流れがすでに起こりつつあるのではないか」と語る。ライドシェアはASEANにおいては、クルマが走る機会・領域が増え、稼働率も上がるので、むしろ自動車のニーズが高まるという。
ホンダ、四輪生産の体制再編
新シティなど3車種は第2工場でNNA POWER ASIA 1月16日付
タイ
ホンダがタイの自動車の生産効率化に動き出す。これまでは2工場の計3生産ラインを各1直で稼働させていたが、中部アユタヤ県の第1工場で1ラインを休止。東部プラチンブリ県の第2工場では、12日に披露した小型乗用車「シティ」の新モデルなどボリュームが大きい3車種を生産する。2工場2ラインを2直体制で操業していく。
タイ法人のホンダオートモービル(タイランド)=HATC=のピタック最高執行責任者(COO)は1月12日、アユタヤ工場の第1ラインを3月末までに休止させ、タイの年産能力(2直ベース)を計42万台から27万台にすると明らかにした。これまでは2工場3ラインを1直で操業し、実質的な生産能力は計21万台だったが、2ライン2直とすることで計27万台相当を生産できるよう変更する。
ピタック氏は「減産するわけではない」と強調。生産台数は2016年が20万台だったが、今年は22万台を計画する。タイ工場は部品も多く世界各国に出荷しており、コンテナベースでは日本を上回る輸出量を誇ると指摘した。
ホンダのタイ工場の負荷率は単純計算で5割だったが、「8割ほどに上昇する」(ホンダの担当者)。アユタヤ工場の第1ラインは一部を残しつつ、小型車「ブリオ」「ブリオアメイズ」の生産などを第2ラインに移管。タイの従業員数は5,000人(アユタヤ3,000人、プラチンブリ2,000人)で据え置く。
タイは全体で約300万台の年産能力があるが、昨年の生産台数は3分の2の約200万台だったもよう。同国の新車市場は、インラック政権が実施した初めて新車を購入する人に対する減税「ファーストカー減税」策により、12年に一気に約144万台に拡大したが、反動や内需低迷でその後は4年連続で縮小。内需の回復の遅れで、自動車各メーカーが過剰な生産能力を持て余す状況となっている。
商用車に販売機会逸失の懸念
排ガス基準強化、制限前倒しでNNA POWER ASIA 2月13日付
インド
インドで今年4月1日から実施される排ガス基準の強化が、商用車の販売機会逸失につながる恐れが出てきた。当局は現行基準モデルについて、3月31日までに生産すれば4月1日以降の販売と登録を認めていたが、別の機関が3月31日までを期限とする方針を決定。これが決まった場合、メーカーは4月以降、現行基準モデルの販売機会を失い、在庫を抱える可能性がある。業界団体は反発しており、各メーカーの意見を集約し、中央政府に最終判断を求める考えだ。
発端は中央政府が設置する環境汚染防止規制局(EPCA)が2月1日に公表した報告書だ。首都デリーでは、大気汚染が悪化しており、増え続ける自動車がその一因であると指摘。環境対策強化の一環として、今年4月1月から全ての自動車に対して、排ガス基準「バーラト4(BS4)」対応モデルのみ販売と登録を認めると説明した。
EPCAのブフレ・ラル(Bhure Lal)局長はNNAの取材に対して、「BS3対応モデルの販売と登録は4月1日以降できない」と強調。「BS4対応の燃料は国内で購入できる体勢が整っている。各州の関係者にBS3対応モデルの登録をしないよう伝えた」と話した。半年前に自動車業界と協議し、販売期限について方針を伝えたとも述べた。
EPCAの方針に反発しているのが、インド自動車工業会(SIAM)と各メーカーだ。SIAMは、道路交通・高速道路省が先に出した通達で、4月1日以降はBS3対応モデルの生産を停止することだけが明記されていると強調。販売や登録の期限については、文言がないと指摘した。
SIAMの幹部の1人は「メーカーは在庫を一掃するまでBS3対応モデルの販売と登録を続けることができる」と主張。「中央政府は4月1日以降も同モデルの販売と登録を認める通達を正式に出してくれると信じている」と話す。メーカー関係者によると、SIAMは現在、各メーカーの意見を集約し、中央政府に提出する意向という。
インドでは来年4月1日から全ての自動車の排ガス基準がBS4に引き上げられる予定。乗用車メーカーは既にBS4対応モデルに切り替えており、二輪車は全モデル、商用車は全国で義務化が始まる。
排ガス基準は、2005年にBS2、10年にBS3と段階的に引き上げられてきた。メーカーはこれまで基準引き上げ前のモデルに関しては、いずれも在庫を一掃するまで販売と登録が認められていた。