カンパサール

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アジアユニークビジネス大賞~日本部門~

アジアで発見 日本発のユニークビジネス

アジアで展開される、日本企業または日本発祥のユニークビジネスを紹介する

【金】アクセサリーとして需要あり?:老舗仏具メーカー、香港に常設店(香港)

小堀が香港の店舗で販売する商品。各種仏壇、仏具を取りそろえる(同社提供)

仏壇仏具を製造・販売する小堀(京都市)は昨年10月、香港そごうのコーズウェーベイ店に常設店を開業した。宗派ごとに異なる宗教用具が使われる日本とは異なり、香港では厳密な使い方がなされない場合もあり、お守りやアクセサリーなどとして購入する消費者もいるという。

店舗の売り場面積は約40平方メートルで、三具足、香炉といった仏具や各種仏壇、数珠などを販売。香港でのニーズを踏まえ、日本で扱うものとは異なるカラフルな色を取り入れたほか、サイズやデザインを変えた商品もそろえた。同社の小堀進社長によると、香港や中国大陸では仏教ブームが続いており、高級な仏壇や仏具として小堀の商品が好調に売れている。顧客は中高年の富裕層が多いという。

小堀は1775年に創業した仏壇仏具の専門店で、京都工場のほか、東京や福岡などに店舗を展開する。同社の海外出店は初めて。昨年参加した催事で予想を上回る売り上げを達成、百貨店側からの要請もあって、出店を決めたという。

編集部コメント:日本国内では普通の商品でも、海外に出るとユニーク商品になることがある。中華圏では数珠をアクセサリーとして身につける人も多く、日本の伝統技術による仏具がファッションの分野でヒットする可能性もありそうだ

【銀】マレーシア機関と共同開発:蚊取り機能付き空気清浄機(マレーシア)

本体の小窓から吸い込まれた蚊は、背面側の粘着シートにくっつく仕組みだ。小窓は蚊が好む大きさに設計されている(同社提供)

シャープが、世界初となる蚊取り機能付き空気清浄機を4月に日本で発売した。空気清浄機にユニークな付加価値をつけたことで話題になったが、この製品はマレーシアの研究機関などと共同で開発された。東南アジア諸国連合(ASEAN)各国で好調な販売実績を上げている。

この蚊取り機能付き空気清浄機は、本体内に紫外線(UV)ライトと粘着シートを取りつけており、UVライトに誘われた蚊を、吸引する空気と一緒に本体内に吸い込み、粘着シートに貼り付ける。同社の研究結果によると、22時間でアカイエカの約95%、ヒトスジシマカの88%、チカイエカの98%を捕獲したという。

マレーシアではヘイズ(煙害)の発生に伴って空気清浄機の需要が高まっている。またデング熱などの蚊を媒介として発生する熱帯性伝染病が依然として深刻な問題となっている。シャープは2013年からマレーシアの政府系研究機関と共同で、蚊の色・形状の嗜好(しこう)や薬剤を用いない駆除方法について研究してきた。同製品は15年、マレーシアを皮切りに、シンガポールやインドネシアなどで順次発売された。

編集部コメント:発想そのものがユニークだが、地道な研究と強みの技術力もあってこそ。ASEANでは、当初予測の2倍近くもの売れ行きがあり、大きな反響を得ているそうだ。室外の蚊も呼びよせてしまわないかが、少し気になるところだ

【銅】日本発祥のカプセルホテル:無いので自分で開業しちゃいました(シンガポール)

ウィンク・ホステルのダブルベッド(NNA撮影)

日本で生まれたといわれるカプセルホテルが、シンガポールでも広まりつつある。2011年に国内初のカプセルホテルが開業して以来、現在は10軒超まで増加。ホステルとホテルの中間に位置する宿泊施設として、存在感が高まっている。「本場」日本をはじめ、今後海外から新規参入する動きが加速しそうだ。

中心部チャイナタウンにある「ウィンク・ホステル」は、カプセル型ベッドを備えるシンガポール初のホテルとして11年に開業した。宿泊料金はシングルベッドで1泊50Sドル(約4,300円)、ダブルベッドで90Sドル。日本のカプセルホテルのような完全な個室ではなく2段ベッドを配した造りで、外部とはカーテンで仕切っている。

ウィンク・ホステルの創業者兼経営者であるヘン・チョーンブーン氏は「開業当時のホステルの宿泊料金は1泊20~30Sドル、安いホテルは90~100Sドル程度で、この中間の価格帯である50Sドル前後の宿泊施設がなかった。これが開業のきっかけになった」と話した。

もともと日本のカプセルホテルを参考にホテル開業を思いついたが、日本では終電に乗り遅れたビジネス客の利用が多く「寝るためだけのスペース」という印象があった。ウィンク・ホステルでは、日本のカプセルホテルと欧米のホステルの長所を融合させたという。

編集部コメント:日本発祥のビジネスがアジアで展開された例として紹介した。ウィンク・ホステルの担当者によると、シンガポールでカプセルホテルはまだ少なく、商機は大きいかもしれない

選評

高い品質が裏付けされた「日本ブランド」はアジアでも訴求力が強いが、カプセルホテルなど、その国にない新鮮さが魅力となってヒットする商品も多そうだ。身の回りにある何気ないものも、ユニークな商品としてアジアで注目されるかもしれない。

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