カンパサール
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アジアユニークビジネス大賞~自動販売機部門~
それ売っちゃう? 珍品とび出す自販機ワールド
【金】Tシャツにジーンズも サイズ合わせは大丈夫か(タイ)
米「リー」ブランドのジーンズをタイで販売する流通大手セントラル・マーケティング・グループ(CMG)は、昨年12月からバンコク市内にリーのTシャツを販売する自動販売機を設置した。
セントラル・ワールド、ロビンソン百貨店ラマ9世通り店、ビッグCスーパーセンター・ラチャダムリ店といった、主にバンコク中心部にあるショッピングモールや百貨店など大型商業施設に計4台がお目見えした。
限定モデルのTシャツを価格1,000バーツ(約3,400円)で販売。さらに今年中にジーンズの取り扱いも開始する予定だ。中国人観光客と若者層を主なターゲットとし、向こう3年間で計200カ所に自販機を設置する計画だという。
1カ所当たりの売上高は月20万~30万バーツに伸びており、観光地を中心に設置して売り上げ増を図る。今年4月時点で8カ所だった設置場所を年内に20カ所にまで増やす方針。
編集部コメント:そもそも多数のアパレル店が営業するショッピングモール内で衣料品の自販機を置く必要性があるのか、200カ所もの需要があるのか、ジーンズのサイズ合わせや裾上げは大丈夫なのかなど疑問は尽きないが、そう感じた時点ですでに業者の術中にはまっている可能性もある。もの珍しいのは間違いなく、はやりもの好きのタイ人に話題性はありそうだ
【銀】新鮮サラダを届けたい 日本式に懸ける男の夢(シンガポール)
飲食業界の会計・販売の自動化サービスを提供するシンガポールの新興企業コンビニは昨年、シンガポール初となる新鮮なサラダの自動販売機を東部チャンギ・ビジネス・パークなど国内4カ所に設置。パイロットテストを実施した。
創業者のジン・クエック氏は、日本を訪れるたびに目にするラーメン店や牛丼店の食券販売機や食品自販機に感銘を受け、昨年同社を設立した。シンガポールは人件費が高いにもかかわらず、自販機事業を展開する企業が少ないことに商機を見いだしたという。
食品を自販機で購入する習慣がない消費者への利用の促し方などテストで学んだことは多く、食の安全性を気に掛けるシンガポール人に対しては自販機の商品をいつ取り替えたか表示する機能が有効だったという。
ただ、料理店経営のシンガポール人男性は「シンガポールではテーブルに座って会話と料理を楽しむ文化が根付いている」と自販機に懐疑的だ。
クエック氏は「そのような文化があるのは事実だが、設置場所を選べば需要はある」と説明。ホテルの深夜のルームサービスや、建設作業員への夜食の提供などに活用できるとした。
編集部コメント:今年4月時点でまだ納入実績はないが、シンガポール中心部にあるオーチャード・ホテルのキッチンに専用調理場を確保したり、3人のシェフを雇ったりするなどいつでも展開できるよう即応体制を整えているという。本気度は高い
選評
ほかにもユニークな自販機の目撃談は少なくない。
「オフィス近くのビルに新鮮な生のオレンジを絞ってジュースにしてくれる自販機があった。中華系の麺料理「ホーファン(河粉)」などの温かい食事やカットした果物などが出てくる食品系は比較的多い」(NNAシンガポール版記者)。
「2009年、本の自販機が登場したことがある。苗栗県と雑誌社が協力し、日本から飲料用自販機を輸入して改装。ベストセラーや新刊書籍を定価よりも割安で販売していた」(同台湾版記者)。
なお、中国・アジア地域向けに自販機を販売する富士電機によれば、アジアでの普及台数は14年8月時点で推定10万台以下。日本の260万台強(飲料・食品自販機のみ)に比べて市場が小さいが需要は拡大傾向にあり、工場やオフィスビル、病院などを中心に夜間の「無人店舗」として注目が集まっているという。