カンパサール

ヤードム（タイ）

鼻詰まりから眠気覚ましまで効く万能薬

鼻詰まりから眠気覚ましまで効く万能薬

タイにいると、人々が小さい棒状のものを鼻に差し込んでいる光景を目にする。彼らが持っているのが、ヤードム（嗅ぎ薬）だ。「ヤー」は薬、「ドム」は嗅ぐという意味で、その名の通りスティックの先端を鼻に付け、嗅いで使用する。

主要成分はメンソール、カンフル（しょう脳、クスノキから採れる芳香のある結晶）、ユーカリ油で、主な効能に鼻詰まり、目まいの解消が挙げられる。タイ人の必携アイテムだ。

■あらゆるシーンで活躍

平均的な使用頻度は１日２～３回。人混みの中など風通しが悪く、空気がよどんでむっとする場所にいる時、長時間パソコン前で作業して疲れた時などにひと嗅ぎすれば、気分爽快になれる。

運転中の眠気覚まし、風邪などで呼吸器系のトラブルがある時にも効果てきめんだ。中にはヤードムにはまり、10分に１回吸うという超が付く愛好家もいるという。

以前は働き盛りの中高年からお年寄りの間で人気の製品だったが、次第に若い層にも普及し、最近は10代の若者まで使うようになった。

■圧倒的シェアの「ポイシアン」

日常的にポイシアンの嗅ぎ薬を使用するというタイ人女性の消費者は、｢ポイシアンは独特の優雅なアロマがある。その香りは刺激的ではなく、他のブランドよりも柔らかく優しい｣と絶賛する

日常的にポイシアンの嗅ぎ薬を使用するというタイ人女性の消費者は、｢ポイシアンは独特の優雅なアロマがある。その香りは刺激的ではなく、他のブランドよりも柔らかく優しい｣と絶賛する

現在、タイのヤードムの市場規模は10億バーツ（約34億円）ほどとされ、「ポイシアン」がそのトップブランドとして知られている。

ポイシアンは、バンコク東部のバンナー地区に本社があるゴールド･ミンツ･プロダクツが1936年から製造販売し、約80年の間タイの人々に愛されてきた名品。タイのスーパーや薬局、コンビニなどで手軽に購入できる。ポイシアンとは中国語の八仙から作られた言葉で、８人の神という意味を持つ。

同社は他にも、仏手柑（ぶしゅかんインド原産のかんきつ類の一種。果実の先が指のように分かれる）を使用したヤードムや、広範囲の患部に使う軟こうなども手がける。

近年は国外でも、卸売りから小売りまでさまざまな物流ルートから手に入れることができるようになってきた。

■ベストセラーは２in１

ポイシアンの中でも一番人気の製品はポイシアンマークⅡモデルだ。「一本で塗って嗅いで」という宣伝文句の通り、このヤードムは上下両側が使える２in１が特長。上側は嗅いで、下側からは中の薬液を出して直接塗ることができる。

タイ人の健康意識の高まりを背景に、嗅ぎ薬市場は著しい成長を遂げている。手頃な価格で優れた効果をもつヤードムは、タイ人のなくてはならない健康アイテムとして、これからも根強い支持を獲得していくだろう。（文・シンチャイ・プラサーンスックラープ）