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【祝】「The Daily NNA シンガポール版」2000号特集
《インタビュー》シンガポール住友商事会社 取締役社長 松岡嘉幸さん
Look EastとLook West/シンガポールの地政学的優位性
シンガポールはアセアンの先頭を切ってFTA締結を積極的に進めている。21世紀のアセアンは果たして中国と対比できる存在になりうるのか。シンガポールは、その主導的な役割を果たすのだろうか。商社から見たシンガポールの魅力を語ってもらった。
――松岡さんはアセアンとのつながりはシンガポールが最初ですか。
そうです。シンガポールとの付き合いは25年程前に出張で来てから始まりました。それから今日までの発展は目覚しいものがありますね。
長年本社で石油化学を担当していましたから、アセアン全体との関わりも随分長くなったように思います。
――シンガポールは今後どのような役割をすると思いますか。
今回の新型肺炎SARS問題を契機に製造業を中心に中国一辺倒的動きが修正され、アセアンの投資対象としての価値が再認識されるでしょう。
アセアンとしてのマーケットの一体化も、アセアン自由貿易協定(AFTA)を中心に少し時間はかかるでしょうが促進されていく事を考え合わせるとその市場価値、潜在的魅力は大きいですね。
その中でシンガポールの質の高い人的資源とインフラ、アクセスの良さ、治安の良さなどからこの地域におけるハブ機能、ゲートウェイ機能は再び高まることはあっても、当面低下することはないとみています。
当社もアセアンにおける中核店舗として営業部門強化だけではなく、管理協力部門の機能拡充にも力をいれていますが、ある意味で他店舗から頼れる存在になれればとの思いもあります。
――地政学的にも立地条件がいいということですね。
不思議なほどここから東西が等距離的に見渡せます。ルックイーストとルックウエストが同時にできる。これは魅力的です。当社でも商品分野によってはここから西は中東、東は中国までカバーしています。アメリカ、欧州も日本にいる以上に身近に感じられる事もありますからここにいることは重要な意味を持ちます。
――シンガポールはアセアンで主導的な立場を確保していけますか。
アセアンの新事務局長はシンガポールから出ています。またシンガポール単独で非常に積極的に各国とFTAを結んでいるのを見れば分かるように、AFTA推進の機関車役もシンガポールがとの気持ちは当然大きいでしょう。
かつてインドネシアがスカルノ、スハルト時代にアセアンの盟主だったが、それと同質の盟主役をシンガポールが務められるとは思いません。これからマレーシアのマハティール首相の引退後、タイとシンガポールがどのように協力体制を組んで前に進めていくのかを注目しています。
【インタビュー・小森孝光】