株式会社山小電機製作所 代表取締役社長 小湊清光
切削、穴開け、曲げ、溶接、プレス、研磨、めっき、組み立て、設計──ものづくりに関わるさまざまな技術力を持った製造業3,500社が集積する東京都大田区。現代のグローバル化したものづくり時代にあっても、その創意工夫と高い技術力で成長するアジア市場に挑む大田区企業がある。
地震や大規模水害などアジア各地でもさまざまな災害が増える中、自社開発した防災・減災のアイデア製品をアジアに売り込んでいるのが、山小電機製作所だ。通信設備向け部材の製造・施工で培った技術を生かし、10年前から防災・減災のアイデア製品を開発している。
その製品の一つが、「地震時自動解錠ボックス」だ。地震が発生した時、通常時は施錠されているボックスの鍵が自動で解錠され、屋上など避難経路の鍵やその他の災害用品を取り出すことができる優れもの。
「東日本大震災の時、扉の鍵がなくてビルの屋上に避難できなかった事例が多く発生したと知った。鍵を持った担当者がいなくても、地震が発生すれば自動に解錠するボックスは必要になると思って開発した」と小湊清光代表取締役社長。インドネシアでも地震が多発しており、アジアでもこうした防災製品の需要は今後高まってくるとみている。
未然に防ぐ必要のあるのは自然災害だけではない。鉄道や道路、空港などのインフラ事業や不動産開発が活発化しているアジア各地では、ダンプカーやトラックの荷台、クレーン車やユニック車のブーム(アーム)を上げたまま走行し、電線や橋桁、看板などに衝突する事故が相次いでいる。
ブームが20度以上の角度で上がったままの場合に警報ブザーが鳴動する
山小電機製作所は、荷台やブームに角度センサーを設置し、運転席のダッシュボードに知らせる製品「ブームキーパー」の開発にも成功した。日本国内ではこの5年間ですでに600セットを販売したが、「アジアでも役立てたい」と2016年から大田区産業振興協会の「海外展開サポート事業」を活用してタイ・バンコクやインドネシア・ジャカルタでの展示会などに出展するようになった。
「防災・減災という概念がまだ定着していないアジアだが、こうした防災・減災グッズの普及で、事前にリスクを軽減し、もしもの時のトータルコストを減らすという考え方の定着に貢献していきたい」と小湊社長は話した。