成長するアジア各国で日本企業の事業は活発化しているものの、現地法人の中核となる優秀なローカル人材が不足している。特に会計・経理や財務部門を統括するマネージャー層の流出は、事業の不安定化をもたらしかねない─。人材不足という課題が立ちはだかる中、現地の日系会計事務所と連携しながら記帳などを効率化し、駐在員らが営業マーケティングや生産管理などそれぞれの“本業”に専念する仕組みを提供してくれるのが、東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)が提供しているクラウド型国際会計アウトソーシングサービス「GLASIAOUS(グラシアス)」だ。タイで活躍する日系の税務・会計事務所の3事務所がバンコクで集まり、人材不足に直面するアジアビジネスの課題と解決策を討論した。
CaN International Groupパートナー、タイ現地法人取締役 小田英毅 氏
「会計・経理や財務が分かり、英語や日本語など外国語ができて、さらに組織の管理までできる高度なローカル人材をタイで探すのは非常に難しくなっている。こうした現地の状況は、遠く離れた日本本社には理解されていないことも多い」。M&Aや国際税務など幅広い分野に精通したプロフェッショナルたちがそろう新興の会計事務所、CaN International Group (本社:東京都中央区)パートナーで、タイ現地法人の取締役を務める、公認会計士の小田英毅氏はこう指摘する。
一方、現地法人に派遣される日本人駐在員も、営業や技術系出身者が比較的多く、専門的な知識が要求される会計・税務実務はフォローしきれない。
辻・本郷税理士法人タイ現地法人マネージングディレクター 佐藤洋史 氏
優秀なローカル人材が不足する影響は、社内コミュニケーションの失敗にも現れることがある。「ローカルのマネージャーはミスを起こした時に現地法人の日本人社長に正しく報告しないことが多い。お互いの話がこじれ、私たちがその間に入ってコミュニケーションを取ることもある」と話すのは、辻・本郷税理士法人(東京都新宿区)のタイ現地法人のマネージングディレクター(MD)で税理士の佐藤洋史氏だ。
「日本との税務・会計処理の違いもあるが、日本人スタッフが『大変だ』と私たちのところに駆け込んできた案件も、ローカルマネージャーに問いただすと大した問題ではなかったということも」。言葉や税務・会計に関する知識不足という大きな壁が社内コミュニケーションをより難しくしていると分析する。
東京コンサルティングファームタイ現地法人ディレクター 高橋周平 氏
グループ全体で世界27カ国に展開する東京コンサルティングファーム(東京都新宿区)のタイ現地法人の高橋周平ディレクターは「日系企業の現地法人の社長は日本本社では課長クラスの方が多く、意識して組織のマネジメントをした経験が少ないことも社内コミュニケーション不足の原因のひとつ。3~4年したら日本に帰国するため、ローカルスタッフとの深いコミュニケーションを避け、なるべく波風が立たないようにしているケースもある」という。
高橋氏は「苦手な分野は組織全体でカバーしていく仕組みが必要」。言葉や専門知識という大きなコミュニケーションの壁を乗り越える解決策の一つとして、現地法人の会計・財務処理をアウトソーシングできるB-EN-Gのクラウド型国際会計サービス「GLASIAOUS」の有効性を強調する。
日系企業の現地法人は、「GLASIAOUS」と提携する会計事務所に原票を提出すれば、アウトソーシングで記帳などの会計処理が済ませられる。クラウドサービスのため、現地からも、日本の本社からも同じデータを確認できるようになり、“見える化”が実現する。現地法人の財務諸表から仕訳の明細確認までを、ボタン一つで感覚的に表示させることも可能だ。日本語と英語だけでなく、タイ語、ベトナム語も使用可能なため、ローカルスタッフとのコミュニケーションも進みやすい。また、会計事務所と共同で展開するサービスのため、ローカル社員の突然の退職により発生する“業務の穴”を一時的に記帳代行サポートに移管する事が可能となり、継続的な事業活動に安心感を与える。
小田氏は「ある日系企業は毎月の膨大なトランザクションに係る仕訳をスタッフ数人が数日間かけて入力していたが、弊社が業務フローを整理するサポートを行い、GLASIAOUSを導入することによって、今では数時間でできるようになった」という。「日本側からリアルタイムで現地法人の会計・財務を管理したいという要望にもGLASIAOUSは応えられる」と佐藤氏は追加する。
東洋ビジネスエンジニアリング株式会社シニアコンサルタント 松本かほり氏(左)春山雄一郎氏(右)
GLASIAOUS のユーザー数はタイだけで50社近くに達し、全世界では約300社で利用されている。B-EN-Gの春山雄一郎シニアコンサルタントは「現地法人の経理面のサポートをGLASIAOUSが行うことで、現地法人の日本人が営業や販売サービス、生産管理などそれぞれの“本業”に専念できるようになる。日本本社側からも海外法人の管理やサポートができる。クラウドでつながっているサービスだからこその強みだ」と紹介する。今後は原票をスマートフォンで撮影したデータをGLASIAOUSにアップロードできる機能が追加され、将来的には自動仕訳につながる機能を実装予定で、クロスボーダービジネスにおける利用がますます加速していきそうだ。
GLASIAOUSの活用イメージ