国際事業部 国際事業統括部長 安藤隆浩氏
日本国内で約57万戸と業界トップクラスの賃貸管理戸数を誇るレオパレス21。2013年に本格化させた国際事業では、これまでにアジアでサービスアパートメント(SA)とサービスオフィス(SO)を各3施設ずつ運営している。今後は日本で培ったノウハウを最大限に活用し、分譲や物件管理を含めた不動産の総合ソリューションをさらに深化させる方針だ。国際事業の現在と今後の展望について、国際事業部の安藤隆浩統括部長に聞いた。
現在までにアジア10カ国・地域、16都市に拠点を展開しています。開発案件も着実に増え、手応えを感じています。
東アジアは、留学などのために来日するお客さま向けのインバウンド事業が中心です。北京やソウルなどの海外拠点では、来日する前に日本国内にあるレオパレスの物件契約が可能です。このため、日本での部屋探しの手間や費用を大幅に抑えられます。
東南アジアでは、進出日系企業向けのアウトバウンド事業が中心です。当初、住宅やオフィス、工場などの仲介をメインとしていましたが、現在はSAやSOをはじめ、不動産に関する総合ソリューションを提供しています。
グランフェルテ・プノンペンの外観(同社提供)
タイ、ベトナム、カンボジアでそれぞれ1施設ずつ運営しています。研究を兼ねて、運営方式は3施設とも異なります。タイでは既存の中古物件を買い上げて、所有物件として運営しています。ハノイは、物件を借り上げるマスターリース方式。プノンペンでは、自前でアパートを建設し、運営しています。
SAは、ホテルとアパートの中間のような住居で、家具・家電付の部屋に、清掃や洗濯、ベッドメーク、朝食などの定期的なサービスが付いています。責任者は日本人が務め、日本語ができる現地スタッフと共に、日本人が安心して暮らせる住環境を提供しています。
物件管理の良さも特長です。アジアの建物は経年劣化が激しく、古い物件に見えても、実際には築3~4年だったりします。弊社のSAは、不具合が出る前に修繕などを行う「予防管理」を採用しています。ベトナムでは当初、予防管理の考え方がオーナーに理解してもらえませんでした。マスターリース方式ですので、修繕費用はオーナーの負担となるのですが、「壊れてもいない設備をなぜ交換する必要があるのか」というわけです。最終的には「建物の不具合に関する入居者からの苦情がなくなった」と納得してくれました。
ソウルのSOラウンジはカジュアルミーティングスペースも充実(同社提供)
SOは、インターネット回線をはじめ、業務に必要な設備や通信環境、共有施設などを備え、事業者は初期費用を抑えて、すぐに事業を開始することができます。
4~5人規模の利用が最も多く、最大でも20人ぐらい。1年単位で借りられるのが一般的ですが、特定のプロジェクトのため、3~4カ月間の限定で入居されるケースもあります。
現在、フィリピン、ミャンマー、韓国で1施設ずつ運営しています。オフィス需要が旺盛なフィリピンでは、年明けをめどに2施設目を開業予定です。
韓国では、今年5月に開業しました。同国では独立志向が強く、40〜50歳代で会社を退職し、個人で事業を始める人が多く、そうしたスタートアップ企業を主なターゲットにしています。
今後は分譲や、得意分野である物件管理、賃貸事業などを手掛ける計画です。例えば、分譲物件の引き渡し後、日本で培ったノウハウを活用して管理できれば、より良い住まい環境を提供できるようになります。分譲事業については、ベトナムやインドネシアを有望視しています。
火災などによる損害補償や賠償責任補償に対応した保険付帯サービスに注力します。アジアでは、住まいに関するトラブルが多い一方、トラブルに関する法制度や損保が未発達で、進出日系企業は知らないうちにリスクにさらされています。ベトナムのSAではオプションですが、タイでは入居と同時に損保が付いてきます。今後はカンボジアの物件にも採用する予定です。
事業拡大には、現地パートナーとの協力体制の強化が必要と考えています。カンボジアのSAは全て独自で建設・運営を行っていますが、単独で海外事業を展開するのはやはりハードルが高く、レオパレスのノウハウと現地パートナーが持つネットワークの融合が必要です。
国際事業は、日本の法人営業で得た顧客基盤がベースです。現在は全てアジアが舞台ですが、既存事業とのシナジー(相乗効果)が得られれば、アフリカなど新たな国・地域への進出もあり得ます。