近年の国内市場の縮小と競争激化により、日本企業の海外展開は重要な事業戦略の一つとなっている。海外展開に当たっては市場環境を正しく知ることが欠かせない。しかし、現地経済や競合の状況、法規制に至るまで必要な情報が不足している場合も多い。調査は多大な時間と人手がかかるため二の足を踏むかもしれない。リスクは最小に抑えつつ、戦略立案と意志決定を機動的に行うには、調査の委託が切り札となる。調査会社のエーレポートは、正確さ、品質、迅速さに定評があり、数々の大手企業の依頼に応える。高い評価を受ける独自の調査手法について、成川哲次代表に聞いた。
企業が海外展開する際は、現地の市場規模、競合他社やパートナー企業の状況、消費者の嗜好(しこう)や人気商品などの情報が事前に不可欠である。しかし、日本と同様のデータを得ようとインターネットで調べたとしても、内容が古かったり、間違っていたり、全く見つからないことも珍しくない。そうした状況に頭を抱える担当者は多いのではないだろうか。
例えば、ホテル業界なら進出エリアに競合が何軒あるか、宿泊費の相場はいくらかといったデータが欠かせない。対象国の公的データが存在しない場合は、手作業で施設のウェブサイトにアクセスしたり直接電話をかけたりと、しらみつぶしに当たるしかない。
しかし、こうした作業は時間や労力の負担が大きい。さらに、適切な方法で行っているか、言語の壁をクリアできるかなどハードルはたくさんあり、欲しい情報を正しく把握するのは非常に困難だろう。
エーレポートの成川哲次代表取締役(同社提供)
事業戦略を考える際に必要なのは単なる数字やデータではなく、共通点や特異性を見定めてビジネスの道しるべとなる分析だ。分析には「問いを立てる力」が求められる。時には、緻密なデータよりも俯瞰(ふかん)した視点が成果に結び付くこともある。
データから問いを立てる作業は、豊富な経験と専門性を要する。エーレポートは、アジアのほぼ全ての国と米国、欧州、中東など海外の各地域で1,000件以上の調査を実施してきた。経験と実績に裏打ちされたレポートは、数々の大手企業から高い評価を得ている。
正確なデータと分析結果を提供するには、より質のいい資料の購入や取材が欠かせない。数万円以上の資料でもためらわず購入し、レポートの品質を担保しているという。
「確かな資料なら惜しみなく購入し、有償での有識者や研究機関・大学・企業への取材、現地への出張を行います。一時的に利益率は下がりますが、本当に役立つレポートを提供することでリピートや関連商品の販売にも結び付いているため、今後も方針を変えるつもりはありません」と成川代表は話す。
同社はレポートをスピーディーに仕上げることでも知られる。良質な資料を購入することで時間を短縮しているほか、「どこまで原価をかけるか」の判断が速く、社員1名が1案件を担当することでその案件に集中して進めていることも背景にあるという。
(エーレポート提供)
同社のレポートの品質は、経験と実績に基づく調査方法が支えている。また、世界各国に現地調査員とのネットワークがあり、公的機関のデータが取得できない国や地域からもリアルな情報を入手できる。
データの所在や入手ルートを熟知する成川代表は、相談があれば「どこに行き、何を見れば、どのような情報が手に入るか」が即座に頭に浮かぶという。案件次第では「どこに行っても、その情報は手に入らない」と調査するまでもなく分かるため、顧客から「無駄な投資が未然に防げた」と感謝されることもあるほどだ。
アジアを含む多くの国では、データが公開されていたとしても数年前のものだったという話はよくある。そのような古いデータは、新型コロナ感染症の流行、ウクライナやイスラエルでの武力衝突、急速な円安などの影響を受けた最新の市況を反映していない。
同社のレポートは、断片的な情報を基にした推論ではなく、予算と人手をかけてそろえたデータで構成されており、ビジネスに役立てるための高い精度と信頼性を誇る。
過去に提供してきたレポートには「その発想はなかった。この3行だけでも100万円くらいの価値があります」と賞賛されたものもあったという。
成川代表が担当したある調査では、ベトナムで家電の製造販売を展開するクライアントが気付いていなかった現地特有の消費傾向を、取材を通じて発見した。
マーケティングリサーチ担当部門の奥野真由氏(同社提供)
「報告すると『まさかそんなはずはない!』と言われましたが、お客様が自社でもヒアリングしてみたところ、事実だと判明。先方の上層部からも相当なインパクトがあったと喜んでいただきました」(成川代表)
マーケティングリサーチ担当部門の奥野真由氏は、清掃器具の新規参入に向けた市場調査で「シェア首位の競合の商品が売れている理由を調べてほしい」という依頼を受けた。しかし、調査してみると、その競合がシェアを占めるのは一部の商品のみに限られ、他は知名度も販売数量も低かった。そこで調査を終わりにはせず、他企業について分析を続けた結果、実は「清掃頻度を減らすワックス」こそが自社のライバルであることが判明した。憶測ではなく取材で実態を突き止めた好例である。
同じ部門の村上基広係長は、日本メーカーの米国法人に対する状況調査の依頼を受け、現地へ飛んだ。
マーケティングリサーチ部門の村上基広係長(同社提供)
「そのクライアントから初の依頼ということもあり、万全の調査と分析を行った自信はありましたが、プレッシャーは大きかったです」と村上氏。現地では調査対象である米国法人の副社長にアポイントを取ることができた。出張が奏功し、事業部の売り上げのみならず製品ごとの売り上げまで記載した精度の高いレポートを提供することができたという。
「ネットには全く情報の出ていない現地のOEM(相手先ブランドによる生産)委託先を報告したところ、まさかと驚かれた経験もあります。私たちはAI(人工知能)の時代になっても、やはり実際に行動することが成功を引き寄せると考えています」と成川氏は確信を込めて話す。
(エーレポート提供)
このような実績を積み上げてきたことで海外展開する企業の信頼を勝ち取ったエーレポート社。近年では海外案件の割合も高くなっており、リピート率は90%を超えるという(初回依頼から3年以内に、前回の評価に基づく再依頼があった割合)。
根拠あるリソースとそれに基づく推察を明確に示し、クライアントとディスカッションしながら共に結論を導き出すエーレポート。同社の調査は、海外への事業展開を目指す企業にとって何よりも心強い指標となるだろう。