三菱電機ベトナムは2019年7月にホーチミン市のサイゴン・ハイテクパーク(SHTP)内に「三菱電機・EDMトレーニングセンター」を開設した。ファクトリーオートメーション(FA)機器のデモ機を操作してもらうなど放電加工機に興味を持ってもらう場所としてだけでなく、お客様向けにセミナーを定期的に開催し、お客様企業とともに加工のスキルを高める「人づくりの場」として利用してもらうのが狙いだ。
サイゴン・ハイテクパーク(SHTP)内に開設された三菱電機・EDMトレーニングセンター
トレーニングセンターには金型の製作や難加工材の切断に使われるワイヤ放電加工機(MVシリーズ)と、射出成形の樹脂金型など金型の凹形状を加工する形彫放電加工機(SV-Pシリーズ)の2台を設置している。いずれも新型制御装置「D-CUBES」を搭載しており、機能・性能・操作性を実際に見て確認することができる。
三菱電機の放電加工機などFAソリューションに興味あるお客様に来場していただき、営業時間内なら事前の連絡でいつでも見学できるほか、経験のあるベトナム人技術講師2人が在籍しており、操作方法など細かい説明も受けられる。
ワイヤ放電加工機MVシリーズ(写真左)、形彫放電加工機SV-Pシリーズ(写真右)の実機操作が体験できる
セミナーは3カ月に1回のペースで定期開催している。ワイヤ放電加工機と形彫放電加工機それぞれ別で「基本操作とメンテナンス」「加工技術」を初級・中級のレベル別に学習項目をそろえており、複雑な形状の金型の試作や操作方法のほか、加工機のメンテナンス方法などを1~3日間のスケジュールで習得できる。お客様からの要望を受けて工場へお伺いし、現場の機械を使ってトレーニングすることも可能だという。「実機を操作しながら学ぶことができるので、放電加工機への理解が進んだ」とセミナーに参加した技術者からも好評を得ているという。
加工を終えた金型を高精度測定顕微鏡で検査し、1,000分の1ミリの精度で設定どおりに加工できているかを確認するなどして、その精度の高さを実感することもできる。
МVシリーズで実現した高精度加工の金型や部品
三菱電機ベトナム(MEVN)放電加工機の
専門技術者・伊藤公一マネジャー
自動車部品やコピー機、スマートフォン、各種家電などものづくりの裾野が広がってくるのに合わせ、加工技術の高度化につながる三菱電機の放電加工機への需要が高まっている。
2020年12月に三菱電機ベトナムにFA部門EDMマネジャーとして着任した伊藤公一氏は、現地に展開する日系製造業もさまざまな課題を抱えており、日本と同じ生産性を実現するにはまだ環境・条件などで大きな差があるのが現実という。
「機械というものは、オイル交換やタイヤの空気圧の調整などのメンテナンスをしないと乗り心地が悪くなってくる自家用車と同じ。メンテナンスをしないと、パフォーマンスは落ちてしまう」と指摘する。
「故障してから修理するのではなく、定期的にメンテナンスをして高い水準で使ってもらった方がトータルでの生産性が上がり、コスト面でもメリットが大きくなる。こうしたものづくりの全体をみた提案を専門スタッフ一同でお客様にしていきたい」と伊藤氏。放電加工機の導入をひとつの契機にして「ベトナムの環境・条件に合ったものづくりを実現してもらいたい」とも話す。
三菱電機は2016年から放電加工機の専門技術者を配属しており、伊藤氏で2代目だ。
伊藤氏は三菱電機のFA機器のサービスを担う会社に入社以降、日本国内で15年間にわたり放電加工機の据え付けやメンテナンスなどを担当してきたベテラン。自動車や家電、医療機器、はたまた航空機や宇宙産業など放電加工機を必要とするあらゆる製造業の現場をくまなく見てきた。「世の中にある最先端商品の多くは放電加工機がなかったら、作れていないものばかり」。
お客様の課題や悩み、やりたいことなどはさまざま。放電加工機でどうやって解決するかを一緒に考え、提案してきた。お客様の最も近くで現場のものづくりをサポートしてきたという自負がある。
伊藤氏は「EDMトレーニングセンターを通じてベトナムの日系企業が抱える課題に真摯に向き合い、環境・条件などにマッチしたものづくりを提案していきたい」。それがお客様のためになるだけでなく、いずれはベトナム全体の生産力の底上げにつながっていくと信じているからだ。「まずは気軽にセンターに見学にお越しください」と呼びかけた。