中国投資加速は不健康な状態、マハティール氏
マレーシアのマハティール元首相は13日、クアラルンプール(KL)で開催された日本人起業家による団体主催のイベントで、マレーシアで中国企業による投資が急速に増えていることに触れ、「不健康な状態であり、場合によればマレーシアの腕をねじる(損益を与える)懸念もある」と現政権の姿勢に否定的な見方を示した。
同元首相は、来場者の質問に回答する形で自身の考えを述べた。中国の経済的発展は歓迎すべきことだとしたものの、海外展開の仕方がこれまで日本など他国が行ってきた外国直接投資(FDI)とは異なり、国内の不動産を取得して建造物を設け、移民を連れてくるスタイルであることを指摘。「マレーシアの政治的問題につながることであり、歓迎しない。米国のトランプ大統領がメキシコとの国境に壁を作ると言っているが、マレーシアも(同じ背景で)壁を設けることになりかねない」と語った。その一方で、「中国の経済力は今後、世界ナンバーワンになる可能性があり、いかにうまく付き合うかを考える必要はある」とも述べた。
また、マレーシアで昨今、ビジネスビザの取得手続きの遅延や外国人労働者の受け入れ厳格化、最低賃金の引き上げなど、外資系企業を取り巻くビジネス環境にマイナスとなる政策変更がみられることについては、「今の政府はビジネスフレンドリーではない」と批判。特に最低賃金について「賃金を上げても生産性を向上しなければ、競争力が下がる。そうなれば高所得となっても先進国には必ずしもならない」と生産性を上げる政策の必要性を示した上で、「今の政府は間違った形でのやり方を進めており、このままではビジネス活動が困難になる。その前に政権を変えなければならない」と強調した。同元首相は、年末から来年に予定される次期総選挙に向け、野党新党「パーティ・プリブミ・ベルサトゥ・マレーシア(先住民のための1つのマレーシア党=ベルサトゥ、PPBM)」を設立して現政権の打倒を目指しており、発言はこれまでの方針に沿ったものとなる。
「ぬるま湯にいれば負け組に」
マハティール元首相は同日、海外の日本人起業家が集うWAOJEの東南アジア諸国連合(ASEAN)大会で基調講演を行い、ルックイースト(東方政策)への取り組みを中心に語った。日本人に対しては、ASEANの共通言語である英語を習得する必要性を指摘したほか、「(国内に閉じこもるといわれる)日本人は安心できる場所を求めがちだ。ぬるま湯にいれば世界は狭くなる。好む好まずにかかわらず、国外からの影響にさらされる時代、うまく知恵を使って対処しないと負け組になる」と警鐘を鳴らした。