ブックタイトルNNA_kanpasar_vol.26
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NNA_kanpasar_vol.26
KANPASAR 9前時代の秘境か、次世代の市場か国境越えた分業の受け皿に過去5年ほど、タイやベトナムが担っていた生産をラオスが補完する「プラスワン」として製造業の進出が目立った。ラオスはタイなどと比べ賃金が大幅に安く、穏やかで真面目な気質や、伝統織物に代表される手先の器用さが高く評価されている。南北に長い国土は、国境を越えた分業に向いている。製造業の受け皿となる経済特区として、首都郊外の「ビタ・パーク」、中部サワンナケートの「サワン・セノ」、南部パクセの「パクセー・ジャパン中小企業専用経済特区」の開発が進む。日系大手が周辺国から生産工程の一部を移管するケースでは、ニコンが2013年9月に先陣を切った。タイで行っていたデジタル一眼レフカメラ製造の一部工程をサワン・セノ経済特区の工場に移管。ラオスで労働集約的な工程を行った後、再びタイに戻して最終製品化する。ラオス工場の運営もタイで育てた人材を使う例が少なくない。サワンナケートでは翌14年、トヨタ紡織も自動車用シートカバーの生産を開始。12年からラオスでウイッグ(かつら)を委託生産していたアデランスは、15年に同地の自社工場で生産を始めた。ビエンチャンやサワンナケートに大手の生産分業が進む一方、南部パクセでは西松建設などが日系の中小企業をターゲットとした経済特区の開発を進めている。ラオスは安い賃金を生かした労働集約型産業の進出が進むが、人口の規模や密度から数千人規模の大工場は難しい。もし大手が進出すれば待遇面で劣りがちな中小企業は安心して操業できなくなるという事情もあり、中小企業の誘致に力を入れようとしている。ビエンチャン市内の他の店では見られない商品、品ぞろえ。ディスプレーも美しいラオス随一の近代的スーパー 駐在員や富裕層に人気名称:リンピン・スーパーマーケット概要アクセス方法タイ北部チェンマイを本拠とする食品スーパーチェーン。2015年12月、首都ビエンチャン市郊外のショッピングモール「ビューモール」の主要テナントとして開業。モールは今も開発中でテナント導入も道半ばだが、「リンピン」はラオスでは従来取り扱う店のなかった日本食材や高級な輸入食材、タイやラオス産のオーガニック青果物を幅広くそろえ、ディスプレーも洗練されている。外国人駐在員やラオスの富裕層に人気のスポットになった。ビエンチャン市中心部から車で北東へ約30分ポイントこれまでメコン川を渡ってタイ北東部の町に買い出しに行くラオス人が多かったが、リンピンはビエンチャンになかった高級感と随一の品ぞろえで、従来の流れを変えるきっかけとなる可能性を秘めている。ここを見るべし!視察ポイント名称進出年事業東京コイルエンジニアリング1999年タイ北部ランプーン県の工場の傘下にビエンチャン工場を設け、1999年稼働。カメラのストロボやスイッチ電源用のトランス、パワーインダクターを生産。タイ・プラスワンの草分けツムラ2010年ラオ・ツムラの自社農場で、原料生薬栽培と生薬調製加工。ラオス政府の「2プラス3」政策に沿ったもの(ラオスが土地と労働力を、外資が資本、技術、市場を提供する)日新12年サワンナケートに合弁会社ラオ日新SMTを設立。ラオス籍トラックを使いベトナム、タイを含む3国間輸送を提供。積み替えなしでベトナム~ラオス~タイを結ぶニコン13年タイで行っていたデジタル一眼レフカメラ製造の一部工程を、中部サワンナケートのサワン・セノ経済特区にある工場に移管アデランス14年2012年からビエンチャンの提携先工場で生産。14年5月にアデランス・ラオスを設立。同年9月から賃借施設で、15年7月にはサワンナケートの自社工場で生産を開始したNNA調べ日系企業の進出状況市場の取り込み、お手本は「タイ流」ラオスでは日系サービス業の進出はまだ少ないが、2015年に卸売り・小売りへの外資参入が認められたこともあり、外資の進出は増えている。ビエンチャン市内では外国料理の飲食店、外資系スーパーなど小売業の進出も相次ぐ。和食チェーン「富士レストラン」(タイ企業)、「カフェ・アマゾン」「トゥルー・コーヒー」といった隣国タイからの進出が先行しており、今後、日系企業の参考になりそうだ。ラオスは単独で見ると小さいが、タイやベトナムでの事業が一定の成功を収め、メコン地域全体に事業を広げようという中では欠かせない市場になる。タイ企業にとってラオス進出は自然な展開といえる。日系ではタイやベトナムでクレジットカード事業を手掛けるJCBが同じ考えに基づき、14年からラオスでもカード発行を始めた。自動車や家電などの販売が伸びる中、金融のような周辺サービスの需要も高まる。小国ながらメコン半島の中心という地の利を生かそうという視点は、物流分野にも共通する。内陸国のため港はないが、タイやベトナムを結ぶ「東西経済回廊」の要衝であり、結節点にもなる。タイにもベトナムにもラオス籍のトラックで乗り入れられる制度を生かし、国際物流を手掛ける日系企業もある。植林を行う王子ホールディングスや、生薬のツムラのように、農業国としてのラオスに期待する企業もある。南部パクセに近いボロベン高原はコーヒーや茶葉、野菜の栽培地としても注目される。多様性もラオスの魅力だ。ビエンチャンのショッピングセンター内に出店した中国資本の雑貨チェーン「メイソウ(名創優品)」も、価格はやや高いものの、これまでなかったおしゃれな品を扱う店として賑わっている永谷園系列の麦の穂のシュークリームチェーン「ビアードパパ」。1号店は現地のラオワールドがフランチャイズ運営する攻略の観点ラオスにおける公用語の成り立ちを考察したリポート。ラオスの公用語ラオス語は、隣国のタイ語によく似ている。しかし本書を読めば、タイ文字そっくりの形をしたラオス文字から、国家の独立自尊を求めたラオスの人びとのドラマが浮かび上がってくる。矢野順子(やの・じゅんこ):1974年生まれ。2009年、一橋大学大学院言語社会研究科博士課程修了。愛知県立大学外国語学部国際関係学科准教授。主な論文に『ラオスの正書法改革に見る文字ナショナリズム─王国政府とパテト・ラオの二つの体制下における知識人の議論から』などがある。矢野順子 著 風響社2008年11月発行 800円+税『国民語が「つくられる」ときラオスの言語ナショナリズムとタイ語』【著者】NEXTアジア書評ラオスラオスの進出魅力度ビエンチャンの街は急速に変化しているが、まだまだ昔の面影を残し、人々の雰囲気も大きくは変わっていない。小売り、卸売りが外資に開放されて外資系の店や自動車が急速に増えてきてはいるが、周辺のタイなどと比べるとまだまだ遅れており、需要を開拓できる分野が数多く眠っている。(共同通信ヤンゴン支局 八木悠佑) A理由評価