ブックタイトルNNA_kanpasar_vol.26
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NNA_kanpasar_vol.26
KANPASAR 7前時代の秘境か、次世代の市場か本来、遊牧民であるモンゴル民族は農耕を行わなかった。このため、現在のモンゴル料理のうち小麦粉を使ったものには、ボーズ(ギョーザ)やホーショール(揚げまんじゅう)、マントウ(蒸しまんじゅう)など、中国文化の影響を受けたものが多い。しかし、清朝による支配や、社会主義時代の対立などの歴史的経緯から、モンゴル人の対中感情は複雑だ。このため、輸出額の9割を中国向けが占めるなど経済面での依存度は大きいものの、中国ブランドの訴求力はあまり強くないようだ。名称進出年概要KDDI 1995年通信最大手のモビコムに設立時から出資。2016年には子会社化したヤマハ発動機99年当初はODA事業。2007 年からは自動二輪車などの輸出・販売資生堂2010年化粧品の販売ロート製薬12年現地代理店を通じた一般用目薬などの販売キャンドゥ15年百円ショップ。北部のダルハンなど首都以外にも出店NNA調べ展開する主な日系企業ウランバートルの街は至るところに韓国料理店があり、韓流アイドルの写真を掲げた美容室も多い。スーパーのインスタント麺売り場に並ぶのはほぼ全てが韓国メーカー品だ。このように、韓国のモノや文化はモンゴル人にとって、とても身近な存在となっている。社会主義国だったモンゴルが初めて外交を結んだ東アジアの資本主義国家が韓国で、官民ともに交流が活発なためだ。モンゴルの各家庭には、韓国で生活したり働いたりしたことがある親族が必ずいるとまで言われる。生活レベルで韓流スーパーで売られていた韓国メーカーのインスタント麺。モンゴル語と同じキリル文字が書かれているが、実はロシア語で、ロシアからの輸入品。モンゴルは社会主義時代にソ連から支援を受けていた背景から、一定の年齢以上のモンゴル人にはロシア語を理解する人も多い。ロシアのモノもあちこちにヤマハ発動機んで自動二輪車を販売するようになった。ヤマハ発動機によると、モンゴルの自動二輪車の総需要は4万5,000 ~ 5万台。ほとんどが草原に囲まれた郊外での需要だ。市場シェアはヤマハ発動機が数%ほどで、多くは中国メーカー製のバイクが占めている。ヤマハのバイクは、テレビCMの放送や公用車への採用が奏功し、ブランドの知名度が高まっている。中国メーカー製に比べて頑丈なため、品質への評価も良い。ただ、値段が高く、多くの消費者はなかなか手が出ないという。ヤマハ発動機・海外市場開拓事業部の山田利治さんは、「景気が良くなれば、良い物を買いたくなる傾向は必ずある。日本のバイクが売れるようになる時期に備え、きちんと市場をケアしていきたい」と話す。現在、ヤマハ発動機はウランバートルのほか、モンゴル国内4カ所のディーラーでバイクを販売している。冬はほとんど誰もバイクに乗らず、販売店も営業を止めてしまうが、オフシーズンでもパーツのメンテナンスなどを行い、いかに仕事を回していくかが課題という。日系企業①125cc以下のバイクはいずれも中国やインドの工場で生産したものを輸入している。価格は10万円前後日本国外向けでレース用の「YZF│R1」。モンゴルで実際に販売する予定はないが、ブランドイメージを示すために売り場で展示しているウランバートル市内で自動二輪車はほとんど見かけない。冬には気温が零下20 ~ 30度まで下がり、中古車を主とした自動車が主要な移動手段となっているためだ。そんなモンゴルで、バイクを販売するヤマハ発動機の旗艦店を訪ねた。店はウランバートル市内のバイク販売店が立ち並ぶ大通りに面している。取り扱っているのは主に、排気量が125cc以下や200ccのバイク、四輪バギー(ATV)などのオフロード用製品。最も多く売れているのは125cc以下のバイクで、主に遊牧民が郊外で乗るという。ATVは購入者のほとんどが企業の社長など富裕層だ。ヤマハ発動機は2007年から現地の特約店と組市場は草原にありているようだった。キャンドゥは16年12月時点でモンゴル国内に6店を出している。日本の商品は高品質というイメージはモンゴルにもある。モンゴルと日本の外交関係は良好で、相撲を通じた民間の交流も多いため、日本の商品を受け入れる基盤がありそうだ。北部の都市ダルハンの商業施設内に入居するキャンドゥの店舗キャンドゥ日系企業③日本の日用品の販売で存在感を示していたのが、2015年12月にウランバートルで海外1号店をオープンした百円ショップのキャンドゥだ。店舗は明るくきれいで、日本の店舗と同じものがずらりと販売されている。値段は3,499ツグリク(約160円)均一。卵のゆで具合を色で測れる「エッグタイマー」などアイデア商品も多く扱われていた。また、来客時に「いらっしゃいませ」と店員が元気よくあいさつするほか、店内BGMに日本のポップを流すなど、日本的なサービスを売りにし日本テイスト前面に複雑な対中感情「隣人」の存在感ロート製薬日系企業②日本国内の一般向け目薬でトップシェアを誇るロート製薬は、初のアジア拠点設立が1991年の中国と、早い時期から積極的に海外展開を進めている。モンゴルでは、2012年に代理店を通じて目薬の販売を開始した。それまでもロートの製品が並行輸入品として日本の2 ~ 3倍の価格で売られていたことから、商機があると踏んだ。経営企画本部でモンゴル事業を担当する西原瑠美さんによると、欧州メーカーの製品も出回っていたが、本格的に広告を打っている企業はなかったため、ロートはテレビCMや路線バスでのラッピング、交流サイト(SNS)などでの広告に力を入れた。モンゴルに限らず海外では目薬は目に疾患がある時に使うイメージが強いが、ロートは疲れ目の時にさすという使い方をPR。これによって、目薬を使う習慣がほぼ無かったモンゴル市場を着実に開拓していった。現在はモンゴル国内の全ての薬局で主力の「Vロート」を販売しているほか、子供向け成長促進飲料の「セノビック」やニキビケア製品「アクネス」なども扱っている。ほぼゼロから市場開拓主力の「Vロート」は1万ツグリク(約500円)。製品はベトナム製で、英語のパッケージにモンゴル語の広告を付けたものが売られている韓国料理店のメニュー。具材を載せただけのインスタントラーメンなど手頃な価格のものもあり、学生でも気軽に利用できる「日本のナンバーワンブランド」「目の疲れやかゆみ、赤み、乾きに」などとモンゴル語で書かれている司馬遼太郎が1973年と90年に訪れたモンゴルについて書いたエッセー集。大学時代にモンゴル語を専攻していた歴史小説家の目に、モンゴルはどう映ったのか。司馬氏と一緒に高原を空想し、世界地図か地球儀を眺めながら読むことをお勧めする。司馬遼太郎(しば・りょうたろう):1923年大阪市生まれ。大阪外語学校蒙古語科卒。60年に『梟の城』で直木賞受賞。66年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞を受賞したのをはじめ、数々の賞を受賞。「司馬史観」とよばれる自在で明晰な歴史の見方が絶大な信頼を集めた。96年逝去。司馬遼太郎 著 新潮社1995年7月発行 400円+税『草原の記』【著者】NEXTアジア書評モンゴルモンゴルの進出魅力度政府開発援助(ODA)による支援や相撲などを通じ、モンゴル人の日本に対する印象は良さそうだ。その一方で日用の消費財の分野では日本製品を目にすることがまだ少なく、市場の開拓の余地は大きい。日本の製品を代理店として販売したい現地企業も多いという。市場は小さいが、ライバルが少ない今はチャンスかもしれない。現在の経済状況は厳しいものの、資源開発による今後の発展で消費者の購買力に伸びしろもある。(NNA カンパサール編集部 大石秋太郎) B理由評価