ブックタイトルNNA_kanpasar_vol.24
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NNA_kanpasar_vol.24
4 KANPASARunique business北インドの連邦直轄地チャンディガルを拠点とする、オートリキシャ(三輪タクシー)配車アプリ「Jugnoo(ジュグヌー)」が好調だ。2014年11月のサービス開始からわずか1年で配車数は100万件を超え、さらに5年後には1,000万件の配車を目指している。オートリキシャは一般的なタクシーよりも料金が安く、「オート」の通称で庶民に親しまれている。ジュグヌーの共同創業者、サマル・シングラ最高経営責任者(CEO)によると、もともとタクシーの配車アプリはインドにあったが、オートリキシャを対象としたサービスは少なく、ニッチな分野だった。ただ、多くのインド人が都市での交通手段として最初に使おうと思うのがタクシーではなくオートリキシャであることから、ジュグヌーは商機があると踏んだ。現在は、インド約30都市にサービスを広げている。利用者が望むのは、帰宅や通勤の際にオートリインドの首都デリー近郊、ハリヤナ州グルガオン。鉄道の駅から10分ほど歩くと、ひげ面の男性を描いた大きな看板が見えてくる。看板の男性は日用品・食品大手、パタンジャリ・アーユルベードの創業者、ババ・ラムデブ師。ここはパタンジャリの店舗で、化学品を一切使わない「ナチュラル」や「オーガニック」を売りにしたシャンプーや石けん、清涼飲料、栄養補助食品など幅広い商品が並ぶ。現在50歳近いラムデブ師は、古語サンスクリットの学校で歴史やヨガを学び、1990年代に伝統医学アーユルベーダの学者と共に、アーユルベーダに基づく医薬品の製造を開始。97年に主に医薬品を販売するためパタンジャリを設立した。2003年に放送された朝のヨガ番組でラムデブ師本人が全国に知られるようになってからは、口コミで商品の認知度が高まってきた。アーユルベーダに基づいたパタンジャリの商品コンセプトは化学品が入った商品を好まないインド人の志向にマッチし、幅広く受け入れられている。また、知名度が高いラムデブ師を前面に押し出すことで、広告費やマーケティング費を削減し、販売価格を抑えているのも特徴だ。ラムデブ師は銀行口座を開いておらず、パタンジャリの株式も一切保有していない。ブランドの顔でありながら商業主義一辺倒ではないことも消費者の信頼を勝ち取る一因になっているようだ。ヨガのカリスマという強力なブランド力とアーユルベーダに基づく商品を武器に、ラムデブ師は次の成長戦略を描こうとしている。インドでは、ラムデブ師の成功を追うように、伝道師による同様のビジネスの創業が相次いでいる。03年に日用品販売のシュリ・シュリ・アーユルベーダ・トラスト(SSA)を創業したシュリ・シュリ・ラビ・シャンカール師はヨガや瞑想(めいそう)の指導者で、世界に支持者が3億人以上いるという。ローカル感たっぷりのオートリキシャ。ITと結びついたことで、より便利な庶民の足となった編集部コメント有名人とはいえ、創業者本人を前面に打ち出しているところが新鮮だ。明確な商品コンセプトを掲げ、インドの消費者の信頼を確実につかんでいるところに創業者のカリスマ性を感じる編集部コメント銅銅呼ぶのはオートリキシャアジアならではの配車アプリ[インド]ブランドは創業者本人カリスマ導師が率いる日用品大手[インド]選評台湾の就職仲介サイト「1111人力銀行」が実施した調査によると、当特集のグランプリに輝いたアリ専門店「??蟻帝国」がある台湾では、1980 ~ 90年代生まれの若者の85%が起業願望を抱いているという。実際、台湾ではEC店舗やカフェの開業が花盛りだ。ただ、他人が思いつかないような分野を見つけない限り成功は難しく、起業した人全体に占める成功者の割合は半数程度にとどまっているという。当特集アイデア部門では、ユニークさが光るビジネスを紹介したが、事業年数が短いものがほとんど。今後の展開に目が離せない。インドの庶民の足、オートリキシャ。タクシーに比べ料金が安く、市場や小道にも入っていける便利さもある(NNA撮影)看板に導師の写真を大きく掲げたパタンジャリの店舗。一見怪しいが、インドでは知らない人はいないというほどの有名店になった(NNA撮影)キシャに待たずに乗れること。アプリを使えば、スマホを操作して予約するだけで解決でき、いつまでもやってこないオートリキシャを道端で待つ必要がなくなる。またジュグヌーのデータによると、オートリキシャの運転手は8割の時間を、客を探す「流し」に充てているが、これでは時間とカネの無駄となる。アプリを使うことで、自宅近辺でも乗客を見つけられるかもしれず、効率的だ。ジュグヌーの事業開始でインドならではの新しい市場が生まれた形だが、現在はタクシー配車大手のOLA(オラ)などもオートリキシャの配車サービスに参入。早速競争は激化している。① アイデア部門ラムデブ師の後追いも。SSAの創業者、シュリ・シュリ・ラビ・シャンカール師(左、同社提供)と、今年1月に同業に参入したグルミート・シン・ラム・ラヒム師(NNA撮影)