ブックタイトルNNA_kanpasar_vol.24
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14 KANPASARアジアに行くならB ookR 長すぎてもいけない。定住と居候は違うフーテンの寅さんのように、家族の厄介者くらいの立場がいい (本書より)中山茂大 (なかやま・しげお)阪口 克 (さかぐち・かつみ)ライターの中山は1969 年、北海道生まれ。大学時代は探検部に所属し、南米6,000キロを踏破。カメラマンの阪口は72年、奈良県生まれ。大学・写真学校を卒業後、スタジオ勤務を経てフリー。両者はユニット「人力社」を結成。本書は、「居候から世界が見える」をモットーに、パプアニューギニアの山岳部族、カンボジアの水上集落など『世界ふしぎ発見!』に登場しそうな秘境の一般家庭での居候体験記だ。期間は1 週間。「1 泊ではお客さん、2 泊では子供が人見知りする、3 泊目から空気のような存在になり、本音が見えてくる」ためだという。居候に慣れ、冷遇され始める頃からが勝負。家族と親戚の家系図、家屋と町内の見取り図をまとめ、朝昼晩の献立とレシピと栄養成分まで聞き取る。ゲルを組み立て、生きたブタを丸焼きにする。記録の克明さは学術資料と呼ぶにふさわしいほど。同じく取材を生業(なりわい)にする者として、嫉妬を覚えるほど相手の懐に飛び込み、居候先を丸裸にする。紙面から立ち上るかのような生活臭、そのパンチは強烈だ。『世界のどこかで居いそうろう候』中山茂大 著 阪口 克 写真リトルモア 2010年2 月発行1,900円+税世界各地で居候取材を行う桜井啓子(さくらい・けいこ)1959 年、東京生まれ。上智大学外国語学研究科国際関係論専攻・博士課程修了。専門は比較社会学、地域研究(イラン)。早稲田大学国際学術院教授(本書発行時)アジアに駐在するとイスラム教との距離が近くなる。行きつけの料理店が断食月に休業していたり、ハラル製品の展示会に参加したり。国によって濃淡はあれど、日本では意識しないイスラム文化との付き合いが日常となる。本書にはイスラム圏での就業経験を持つ13 人の日本人が登場。商社マン、製麺会社の営業、ヤクルトレディの管理担当者などさまざまな仕事経験が語られる。「ヤクルトレディの夫に教育担当者が男性だと話した途端、就業に反対される」と、いかにもなエピソードが満載だ。アラブ諸国など、アジア以外の地域も多く取り上げており、アジアの駐在経験者にとってもイスラムへの理解を進める助けになる。新書のため適度な文量で軽快に読み進められる。「あるある」とうなずきながら気楽に目を通すのには良いだろう。『イスラーム圏で働く─暮らしとビジネスのヒント』桜井啓子 編 岩波書店2015年9月発行 780円+税機内では、ほぼ一分に一回、「イン・シャー・アッラー」が飛び交います (本書より)繁みから体長五メートルを超えるヘビがこちらを睨んでいた。アミメニシキヘビだ。 (本書より)宮城公博(みやぎ・きみひろ)1983 年、愛知県生まれ。印刷会社、福祉施設を経て現在はライター、登山ガイド、NPO富士山測候所職員。20 歳頃から山に親しみ、国内外で数々の初登攀(とうはん)記録を持つ。2012 年、那智の滝の無許可登攀により逮捕される和歌山県が誇る世界遺産に那智の滝がある。日本三名瀑の一つに数えられ、高さ133 メートルからの落差と水量は日本一。神々しい姿は古代から信仰の対象であり、日本最初の天皇だとされる神武天皇が滝を神として祭ったと伝えられる。著者とその登山仲間は2012 年、あろうことか那智の滝にクライミングを挑み、和歌山県警に軽犯罪法違反で逮捕されてしまう。著者は登山の中でも沢登りを中心に行う通称「沢ヤ」。まだ誰も登ったことのない渓谷や岸壁を登りたいという衝動に任せ、無数の滝や渓谷に挑む。実は那智の滝の事件でさえ彼の冒険談の入り口に過ぎない。その後の国内外でのチャレンジが破天荒に描かれる。ハイライトはタイだ。タイ西部の密林奥に深く切れ込んだクウェーヤイ川の渓谷に踏み込み、46 日間かけて苦闘する。岩や水だけではない、トラ、大蛇、野生の象、テロリストなどの危険も潜む。世間の常識や節度を一切顧みない著者の思考は非常識の極みだが、動機は純粋で曇りがなく、ストレートな言動が非常に痛快だ。日本人にはなじみのないアジアの山奥の様子が克明に描かれているのも興味深い。『外道クライマー』宮城公博 著 集英社インターナショナル2016年3 月発行 1,600円+税ひとはみんな、自分の利益を最大にしようと思って生きている。俺も、お前も、紫帆もそうだ(本書より)経済小説の旗手、橘玲氏の国際金融ミステリー。タックスヘイヴンとは所得税などの税率を低く抑えた租税回避地のことで、最近はパナマ文書流出のニュースで話題になった。本書は2014 年に発行した同名小説の文庫版だが、ある意味、文庫化に絶好の機会となった。ある日本人ファンドマネジャーのシンガポールでの事故死から物語は始まる。シンガポールはアジア最大のタックスヘイヴンであり、マネジャーの死の背後には巨額の地下マネーが存在していた。主人公の古波蔵はその存在に気付いた韓国、タイ、マレーシア、ミャンマーなどアジアを自在に移動する巨大な地下マネーのうねりを追いかける。作品の魅力のひとつは秘密口座の振替記録を読み解く手法など、金融通の筆者が描き込むディテールだ。フィクションではあるが、小難しい解説書よりも、よほど腑(ふ)に落ちる。「パナマ文書のニュースにピンと来なかった」というような金融オンチにはぜひ勧めたい。橘玲(たちばな・あきら)『タックスヘイヴン』橘玲 著 幻冬舎文庫2016年4月発行 770円+税作家。1959 年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。2002年、小説『マネーロンダリング』でデビュー。06年、小説『永遠の旅行者』が第19 回山本周五郎賞の候補作となる。国内外の経済をテーマとした小説、ノンフィクションの著書多数この夏アジアの日系書店最大手、紀伊國屋書店。東南アジアの中へそ心、シンガポールでどのような本が読まれているのか、同国のトレンドを紹介してもらった 右の写真は全て同社提供がおすすめシンガポールの漫画家、Charlie Chan HockChye。独立前から50年以上にわたって世相を写し取ってきた。その作品がシンガポール在住の漫画家、SonnyLiew により年代ごとにまとめられ、シンガポール史を一望できるものとなった e Art of Charlie Chan Hock Chye著者:Sonny Liew発行:Epigram Books価格: $34.90(約2,800 円、レートは6 月1 日時点、以下同)Sherlock Sam and the Missing Heirloom in Katong著者:A.J. Low発行:Epigram Books価格:$9.90(約797 円)アメリカ人とシンガポール人の夫妻デュオによる、児童向け探偵物語。シンガポールの子供たちの生活が生き生きと描かれている。有名スポットを舞台に物語が進むため、ガイドブックにもなる。9巻は東京が描かれており興味深いシンガポールに行くならこれを読め!