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概要

NNA_kanpasar_vol.23

6 KANPASAR日本ブランドから企業ブランドへ「安心の日本ブランド」は今も健在だが、果たしてアジアではそれだけで良いのか。地場企業は力を付け、機能面では遜色ない製品も増えてきたようだ。消費にこだわりを持つ「新中間層」が増えている東南アジア諸国連合(ASEAN)で、消費者をどう取り込むのか。野村総合研究所(NRI)の小針清孝グループマネージャーが解説する。「日本ブランド」には高品質や安心・安全などの機能面で優れているイメージが基本的にはある。しかし、ASEANをはじめとするアジアにおいて、それだけではもう支持されないのではないか。所得が増えて、物理的な欲求がある程度満たされると、ブランドに対してプラスアルファの価値を求めるようになる。それは恐らく、日本ブランドがこれまで訴求してきた機能面ではなく、個性的、2015 年12 月に上海でオープンした無印良品の世界旗艦店。店外にまで長い列ができた=中国・上海市シャープが発売したアジア向けの蚊取り機能付き空気清浄機=2015年10月、タイ・バンコク(NNA撮影)クール、高級感、あるいは健康にいい……。そんな要素を併せ持つブランドが求められているのではないか。この仮説の下、NRIはASEANの消費者のブランド意識調査を行い、「新中間層」と呼ばれる消費者の姿を浮き彫りにした。年間可処分所得が5,000米ドル(約57万円)~ 3万5,000米ドルで、「消費に対してお金を支払う意志があり」「こだわった消費をしている」人たちで、彼らイノベーターとしての特性インフルエンサーとしての特性新商品・新サービスを気にしたり、実際に購入・利用することが多い新商品・サービスを周りの人よりも早く購入・利用する気に入った商品や店舗に関する情報をよく人に教える方である新中間層66 % 43 % 74 %従来型中間層22 % 12 % 40 %出所:野村総合研究所ASEAN調査(2014年11月)新中間層と従来型中間層の特性新中間層のボリューム中間層世帯新中間層世帯全世帯の46% インドネシア全世帯の45% フィリピン全世帯の52% タイ全世帯の14% ベトナム全世帯の46% マレーシア全世帯の9% シンガポール全世帯3,663万世帯2,909万57% 79% 世帯6,394万世帯※ジャカルタ1,383万世帯1,015万62% 73% 世帯2,234万世帯※マニラ1,416万世帯1,142万64% 81% 世帯2,214万世帯※バンコク849万世帯365万33% 43% 世帯2,592万世帯※ホーチミン461万世帯321万66% 70% 世帯701万世帯※クアラルンプール162万世帯36万世帯15万22% 42% 世帯(合計約7,808万世帯) (合計約5,767万世帯)※比率は、各都市での新中間層比率を使用※全世帯数、中間層世帯数は、Euromonitorの世帯数(2014年)出所:野村総合研究所ASEAN調査(2014年11月)こばり・きよたか1975年生まれ。2001年NRI入社、現在は消費サービス・ヘルスケアコンサルティング部グループマネージャー。コンシューマーインダストリーの経営戦略、事業戦略、業務改革が専門。Profileはまさにプラスアルファの価値を必要としている。新中間層はASEAN6カ国で約5,800万世帯に及ぶ。メッセージは何か衣料品や生活雑貨などの製販大手は、アジア各国・地域でシンプルとかクールなどと評価されている。トマトを中心とする飲料・食品大手はタイ人消費者の健康意識や美白意識に訴えて、トマトジュースの市場を作り出した。電機大手はアジア向けに、蚊取り機能を持つ空気清浄機を発売した。ある化粧品メーカーはインドネシアで、美容意識が高い女性を狙ってハラル認証を取得した化粧品を投入している。日本企業である以上、ブランドの基礎となるのは品質だ。ここを変えてはいけないが、それ以外に何を打ち出すのか。企業のメッセージやポリシーをいかに明確にできるかが鍵になるだろう。「こだわり消費」惜しまない「次に当たる商材」についても調査・予測を行った。それによると、従来の定義の中間層がすでに持っている物としてはスマホやパソコン、冷蔵庫、洗濯機が挙がった。一方、これからヒットして新中間層に広がっていく物としては、空気清浄機やデジタル一眼カメラ、コーヒーメーカーなどが出てきた。コーヒーメーカーの場合、普及率はASEAN全体で2割程度とみられるが、自分好みのコーヒー豆を買って自分なりのひき方、入れ方で飲む。そういう「こだわり消費」を惜しまない新中間層に日本企業=はどういうメッセージを送るのか。米コーヒーチェーン大手はコーヒーだけでなく、「場」というプラスアルファの「空間価値」を提供した。アジアの水準からすると価格設定は高めだが、店にはいつも多くの客がいる。繰り返しになるが、もう「日本ブランド」だけで大成功するのは難しく、これからはブランド=企業として消費者に伝えたい価値を前面に出していかなければならない。先に見たように(1)具体的な利用シーンや機会を提示し、(2)企業や商品・サービスのポリシーを明確にした上で、(3)SNSや実店舗での消費者とのコミュニケーションを密にして、メッセージを浸透させる─ことが不可欠だろう。