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概要

NNA_kanpasar_vol.20

KANPASAR17暮らしに求める清潔感マーケット解説強力な欧米の牙城日系は得意分野で勝負を矢野経済研究所浅井潤司FSRユニットファッション&リテールグループ上席マネージャー1994年、同志社大学卒。2000年、矢野経済研究所入社。日本を含むアジアの化粧品及びトイレタリー業界の調査分析を担当。業界紙「週刊粧業」でのコラム執筆、ビジネス誌への投稿、展示会や公的機関での講演など外部実績も多数市場が伸びている国は、東アジアでは中国。ここ5~10年はGDP成長率±0.5~1%ほどで成長している。東南アジアではタイ、マレーシア、インドネシア、ベトナム、フィリピン。インドは人口は多いが、まだこれからだ。市場は加工食品と同様に1人当たりGDPで1,000ドルを超えると手洗い石けん、洗剤、生理用品といった基本的な商品が普及し、3,000ドルを超えると高付加価値品も売れてくる。有望なのはサニタリー関連。20~30代が消費の中心で、育児世帯が多いのでベビー用紙おむつの需要がある。同様に衣料用の洗剤も有望とみられる。売れ筋は、例えば喫煙率が高い中国ではタバコのヤニ用の歯磨き粉。虫の多い東南アジアでは強力な殺虫剤。ヘアケアなら日本ではアンチエイジングとかスカルプケアだが、アジアは若年層が多いのでダメージケアが中心。主要な情報チャネルは中国、タイ、マレーシア、シンガポールなど進んだ国では口コミの影響力が強い。若い人が多いのでSNSやスマートフォン向けの動画サイト、インターネット広告が有望視されている。他方、フィリピン、ベトナム、インドネシア、インドなど個人所得が低い国ではテレビCMの力が強い。欧米企業が市場を席巻マーケットをリードするのは、P&G、ユニリーバ、歯磨き類でコルゲート、台所洗剤などでSCジョンソンなどの欧米系の企業。特にASEAN、インドでは欧米系が席巻する。この分野では地場は弱い。原因は商品開発力の差。商品力、品質、マーケティング力が明らかに違う。日系企業で存在感があるのは、紙おむつのユニチャーム。現地に工場を設立して中間層向け製品を生産・販売し、アジアのどこの国でも強い。サニタリー系ではP&Gとユニチャームの一騎打ちの状況。次いで花王、ライオン。いずれも日本で売る商材の機能やボリュームを絞り、価格を20~30%ほど下げて中間層向けに展開する(表)。日本と異なるのは流通構造。アジアでは個人商店、露天商、公設市場のような伝統的小売り業態が多く、日系企業が開拓に悩むケースがよくみられる。貧困層へのアプローチも重要今後、基本的な方向性として経済成長とともに日本や欧米のような意識・習慣になっていくだろう。東アジアは代表的な日系企業企業名注力地域事業概要アース製薬タイ、中国2014年度のアジア事業売上高は前年度比112.3%の53億円。タイは1984年に進出。ブランド育成のためのテレビCMを大量投下し、液体蚊取りは高いシェアを誇る。中国では2006年に殺虫剤の販売を開始。使用機会が多い南部エリアから営業をスタートした。07年から始めたテレビCMの効果もあり、「アースレッド」は確実に売上を伸ばしている花王小林製薬フマキラーユニ・チャームライオン中国、ベトナム、インドネシア中国、ASEANインドネシア中国、タイ、インドネシア中国成熟してきたので、当面はASEAN主要5カ国が焦点になる。日用品は革新的なイノベーションが起こりづらいカテゴリで、ちょっとしたニーズをくんで改善することの積み重ね。先行者が強く、後発はニッチを攻めるなどの工夫が必要だ。日系企業としては、現地富裕層にはそのまま輸入品を持って行く、中間層には専用商品を現地生産する、貧困層にはそれをさらに小分けにという対応が基本。日本と異なり貧困層も経済成長している。未来の中間層である彼らへのアプローチも欠かせない。2014年度のアジア事業売上高は前年度比120.7%の1,405億円。中国、インドネシア、ベトナムなど人口が多く経済成長が見込まれる国に経営資源を集中投下。最も注力する中国では中間層をターゲットとした専用製品を投入している。地場大手の上海家化と提携し、400都市超での展開を目標に営業活動中1970年代に東南アジアへの輸出から海外事業を始め、現在は米国、英国、中国、シンガポール、香港の5カ国・地域に現地法人を設立。アジア各国においてエリアマーケティング戦略を採用、広告などの投資を加速することで売り上げ拡大を図っている。「熱さまシート」「アンメルツ」「ホッカイロ」を戦略ブランドとして展開高所得者向けのワンプッシュベープ、中間層向けの殺虫スプレー・蚊取り線香、BOP層向けの小分け線香など、所得階層別の販売戦略を進める。製品は全て現地専用製品。3人構成のキャンバス・バン部隊を42部隊編成し、ジャワ島内のアジア2,000以上の郡にある伝統的小売業を一つずつ丹念に攻略するローラー作戦で高シェアを獲得2014年度のアジア売上高は前年度比123.3%の3,055億7,500万円。国ごとに異なる生活スタイルや商習慣に合わせて中間層向けの専用品を開発するローカライズ化を進めている。台湾では大人用紙おむつ、中国・タイ・ベトナム・ミャンマーでは子供用紙おむつと生理用品、インドネシア・インドでは子供用紙おむつに注力2014年度のアジア事業売上高は前年度比106.4%の817億7,000万円。中間層に特化した展開で量的成長の確保を目指す。オーラルケアと洗濯用洗剤に注力し、中国ではオーラル事業拡大に向けて青島経済技術開発区に新工場を建設した。ネット通販にも取り組み、リアルとネットの融合を目指している出所:矢野経済研究所知られざるアジア防虫の世界─暖かいアジアは虫が多い?製造施設の場合、日本と比べて熱帯アジアを含む海外で必ずしも昆虫類の発生数が極端に多いわけではない。熱帯では温度と湿度、大気中の酸素濃度も高くなるため、大きな虫が生存することができる。大きい虫は目立つが、製造現場で気にするのはむしろ体長数ミリ程度の小さな虫。これらは湿度があると発生する一方、乾燥には弱い。肝心なのは水の有無だ。大量発生しやすい環境とは、水辺や人工的に常に散水されている所。特に乾燥した所に湿気が入ると、水を待っていた虫が一斉に現れる。─日本人との感覚の違いは?アジアでも衛生規則を設けて守る傾向は出てきた。例えば、タイやシンガポールも政府による飲食店などの衛生評価が行われている。実際はハエが多くいたりして「これでBランクか」と思うこともあるが、現地では法律や規格をクリアすればよいという考え方。日本人の食品衛生に対する感覚とは異なる。日本人は「虫がいてはいけな虫は必ずしも多くはない大発生は水が原因い」。実害の有無を問うなら科学的で良いが、いるか・いないかが問題で極端に定性的なのが日本人だ。インドネシアの食品工場での経験では、製品を日本、韓国、フィリピンに出荷している中で、日本だけが事故報告、つまり虫が入っていたという報告が多かった。日本の消費者が異物混入に対して敏感であることの象徴だろう。─駐在員は何を心がければいい?アジアは日本と違い、それなりに自然がある。環境整備をしても虫が出る所は出る。貴重な体験とポジティブに考え、心安らかに過ごすのがベスト。駐在員には外国の虫を忌避せず、楽しんで下さいとよく言っている。「奥さん、こんな虫は日本では見られないですよ」と。すると「そうですね。それでどうすればいいですか?」と(笑)今、日本人駐在員がいる所で致命的な伝染病を媒介するのは蚊のマラリアくらいだろう。都市部にマラリアは少ないが、蚊は注意した方がいい。日本の蚊取り線香や殺虫剤は非常に優秀だから、ぜひ活用してほしい。そこにいる!GOKIBURIゴキブリ今野禎彦「消化器系の伝染病を媒介する。自然界にいる野ゴキブリはそれほど害はない。日系駐在員の家族の方など、アジアはゴキブリが多いのではと心配だと思うが、飛んで入ってくる成虫はスリッパでひっぱたいておけばいい。それよりも問題は幼虫が大量に発生する場合。どこかに発生源がある。マンションの雨どいから登ってくるとか、何らかの進入経路があったり、その近くで繁殖しているということ。幼虫に注意することが大切」防虫・総合衛生管理コンサルタント1952年生まれ。東京農業大学で昆虫学を専攻後、害虫駆除会社で研究職・技術職として勤務。国内外の食品・医薬品・医療機具製造施設の防虫管理、総合衛生管理に関わる業務を担当。2011年に独立し、コンサルタントとして活躍中アジア身近な害虫BIG 3KA蚊「アジアで多いイメージがあるが、日本と比べて必ずしも多くはない。数だけなら日本の代々木公園の方が多いかもしれない。ゴルフ場やホテルの庭などは要注意。逆に、川沿いでも自然のバランスがよく魚が豊富にいる場所では幼虫が食べられてしまうため蚊が大量にいることもない。チャオプラヤー川沿いの水上レストランも沢山あるが、自分はあの辺りで刺されたことはない」ARIアリ「駐在員の奥さんたちに何が困りますかと尋ねると『台所にアリがたかる』という声をよく聞く。アジアでは小さいヒメアリの仲間が多い。住宅の壁のひびや家具の中など、身近な場所に巣を作る。これは雑食性で特に動物食を好むため、ツナ缶の食べ残しに入ってくるなど台所で非常に多い。祭壇のお供え物にもたかる。日本では外来種として来て定着した帰化動物。世界に分布している」番外解説・写真提供=今野禎彦YAMORIヤモリ「インパクトは抜群。気持ち悪いだけで害はない。捕食性だから害虫を食べてくれるが、奥さんたちには嫌われる」